加齢と老化の違い
加齢とは
- 時間の経過とともに誰にでも起こる
- 例:20歳→30歳→40歳と年を取ること
- 健康状態の悪化とは限らない
老化とは
- 加齢に伴う変化の一つ(生活習慣で遅くすることが可能)
- 例:筋力低下、骨密度減少、記憶力の衰えなど
- 生活習慣(運動・食事・睡眠)
「加齢」=「老化」 ではありません。
加齢は平等ですが、老化には個人差があります。
身体機能 | 加齢による身体的変化 |
---|---|
視力 | 老眼、暗順応の低下、白内障や黄斑変性症のリスク増加 |
筋肉 | 筋肉量・筋力の低下(サルコペニア)、回復力の低下 |
骨格・関節 | 骨密度の低下(骨粗鬆症)、関節軟骨の摩耗(変形性関節症) |
心肺機能 | 肺活量の低下、心拍出量の低下、動脈硬化の進行 |
脳・神経 | 認知機能の低下、反応速度の低下、睡眠障害の増加 |
皮膚・髪 | 皮膚の弾力低下、乾燥、シミやシワの増加、白髪・薄毛の進行 |
消化器系 | 消化酵素の分泌低下、胃腸の運動能力低下、便秘や嚥下障害のリスク増加 |
循環器系 | 血管の硬化、血圧上昇、心筋梗塞や脳卒中のリスク増加 |
感覚器 | 嗅覚・味覚の低下、触覚の鈍化、聴覚の低下(高音域から) |
口腔・歯 | 歯の喪失リスク増加、唾液分泌の低下(ドライマウス)、嚥下機能の低下、口臭の増加 |
ホルモンバランス | 男性のテストステロン低下、女性のエストロゲン減少による更年期症状 |
免疫系 | 免疫力低下、感染症リスクの増加、がん発症リスクの上昇 |
その他の変化として、
精神的変化(孤独感や抑うつ状態、不安感の増加(健康・精神的なストレス増加)、社会的な変化・役割の変化(退職退職や子どもの独立などにより、社会的な役割が減少し、自立心が低下)、孤独感(友人や家族の死別など)などが心身の健康に影響を与える可能性もあります。
日本の平均寿命と健康寿命とは
平均寿命
平均寿命とは、「0歳の赤ちゃんが今後何年生きられるか」という期待値を示した指標です。これは、死亡率の統計データをもとに算出されます。
日本の平均寿命(2024年現在)
- 男性:約81.5歳
- 女性:約86.9歳
日本は世界でもトップクラスの長寿国であり、高齢化が進んでいます。
健康寿命
健康寿命とは、「介護を必要とせず、自立して健康的に生活できる期間」のことです。単に生きている期間ではなく、健康で生活できる期間を示します。
健康寿命と平均寿命の差は約9〜12年となっています。
- 男性の健康寿命:約72.6歳
- 女性の健康寿命:約75.5歳
日本人は 平均で9~12年間は要介護・医療依存の期間があるということになります。
健康寿命を延ばすためには、バランスの良い食事・適度な運動(ウォーキング、筋トレ)・社会的交流(孤独を避ける)・ストレス管理(リラクゼーション、趣味) などが、重要となります。
社会的孤立や閉じこもりによる死亡リスクは約2倍になるという研究結果もあります。
また、90歳まで生存する人の割合も延伸しており、男性20.6%女性50.1%となっています。日本は長寿国ですが、「健康で長生きする」ことが今後の課題となります。

出典:厚生労働省「令和5年簡易生命表の概況」より高齢者住宅協会作成
加齢による睡眠の変化
高齢者は若年者に比べて早寝早起きになる傾向があります。
変化の特徴として、 睡眠時間の短縮(一般的に、若年成人の平均睡眠時間短縮)、睡眠の質の低下、深睡眠(徐波睡眠、SWS:Slow Wave Sleep)の減少があります。
高齢者は深い眠りが減り、浅い眠り(ステージ1・2)が多いそのため、睡眠の質が低下する傾向にあります。
また、膀胱容量の減少や前立腺肥大、過活動膀胱などによる夜間頻尿などによって、夜中に何度も目が覚めたり(中途覚醒)、 早朝覚醒やサーカディアンリズム(概日リズム)の前進、体内時計が前倒しになることにより、夕方に眠気が強くなり早い時間での入眠、朝早く目覚める傾向がでてきたり、メラトニンの分泌量が減少し、寝つきが悪くなることもあります。また、夜間の睡眠が低下するために、昼寝の時間が長くなり夜間眠れなくなることもあります。
医学的な睡眠障害のリスク増加(不眠症・睡眠時無呼吸症候群(SAS)・閉塞性睡眠時無呼吸(OSA: Obstructive Sleep Apnea)・パーキンソン病・レビー小体型認知症など)が原因となることもあります。
様々な原因はありますが、高齢者は深い眠りのノンレム睡眠の時間が減り、浅いレム睡眠の時間が増え、睡眠中の途中覚醒も多くなり、全体的に浅い眠りになるといわれています。
しかし、睡眠を取ろうとするために、早めに床に入り、入眠するまでが長くなり、かつ、浅い眠りが長くなるので、睡眠のため横になっている時間は若年層に比べて長くなる傾向があります。
「若年者と高齢者の睡眠の質の違い」と「睡眠時間の変化」
Q:80代の睡眠時間平均は何時間ですか?
A:個人差はあるものの、5〜6時間と言われています。
夜10時に寝たら、朝4時には目を覚ましてしまいます。
これは適正な睡眠時間と言えるでしょう。 ただ、訪問している患者さんの多くは「夜8時には床につかないと…。」と仰る方も多くいます。なぜか早く寝るために睡眠導入剤などを服用する方がいるのも現状です。 各人の年齢による睡眠時間を把握し、その日の疲労度などにより起床時間から逆算した入眠時間を考えることも良いかもしれませんね。
認知症とは
「認知症」とは、様々な病気により、脳の神経細胞の働きが徐々に変化し、認知機能(記憶、判断力など)が低下して、社会生活に支障を来した状態をいいます。
よく、「もの忘れ」と「認知症」は混同されがちですが、「物忘れ」は、もの事の一部を忘れることで、ヒントなどを与えると思い出せます。「認知症」はもの事自体を忘れてしまいます。また、もの忘れに対しての自覚がないことも特徴となります。
認知症の主な種類

出典:厚生労働省「都市部における認知症有病率と認知症の生活機能への障害への対応」(平成25年5月報告)から引用
それぞれの認知症の特徴

出典:メディカルジャパン国分寺「認知症予防プログラム」URL:https://medical-kokubunji.com/から引用
この記事の執筆者

合同会社Sparkle Relation
代表 小林輝信
北里大学薬学部卒業
【資格】
認定 薬剤師/介護支援専門員/iACP認定/MBA/
【所属団体】
一般社団法人全国薬剤師・在宅療養支援連絡会(J-HOP)会長
一般社団法人日本アカデミック・ディテーリング研究会 理事
日本老年薬学会所属
日本服薬支援研究会所属