高額介護サービス費と高額医療・高額介護合算制度

高額介護サービス費と高額医療・高額介護合算制度

介護・医療費の不安を支える公的制度

年齢を重ねるにつれて、これからの暮らしや健康のことをゆっくり考える機会が増えてまいります。

その中で、「介護や医療にはどのくらいの費用がかかるのだろうか」「必要なサービスを受けながら今の生活を続けていけるだろうか」といったお気持ちを抱かれる方も多いのではないでしょうか。

このようなご不安を少しでも軽くし、安心して必要なサービスをご利用いただけるように、公的な仕組みが整えられています。その代表的なものが「高額介護サービス費」と「高額医療・高額介護合算制度」です。これらは、毎月あるいは一年間のご負担が大きくなり過ぎないよう支える大切な制度です。

月ごと・年ごとに負担を抑える仕組み

(1)1か月の自己負担に上限を設ける制度

まず「高額介護サービス費」についてご説明いたします。介護保険のサービスをご利用になると、所得に応じて1割から3割の自己負担が生じます。デイサービスや訪問介護、福祉用具のレンタルなど、必要なサービスを組み合わせていくと、ご利用の回数や内容によっては自己負担額が増えることもあります。しかし、どれだけサービスをご利用になった場合でも、1か月にお支払いいただく金額には上限が設けられています。その上限を超えた分は、後から払い戻される仕組みになっています。

この上限額は所得に応じて決められており、一般的な所得の方であれば月額44,400円程度、住民税非課税世帯の方であれば24,600円、さらに所得の低い方の場合には15,000円まで軽減されます。たとえば、1か月の介護サービスの自己負担額が一時的に高くなったとしても、この上限を超えた分は戻ってくるため、毎月のご負担が際限なく増えてしまうことはありません。これは、安心して必要なサービスを続けていただくための配慮といえます。

なお、この制度の対象となるのは介護保険サービスの自己負担分です。

施設にご入居されている場合の食費や居住費、日常生活にかかる費用などは含まれませんので、実際の生活費を考える際には、それぞれを分けて整理しておくことが大切です。ただし、これらについても所得に応じて軽減される別の制度がありますので、全体としてご負担が大きくなり過ぎないよう仕組みが整えられています。

(2) 医療と介護を1年単位で支える制度

次に「高額医療・高額介護合算制度」についてご紹介いたします。この制度は、医療と介護の両方のご利用がある場合に、1年間の自己負担額を合計して一定の上限を超えた分を支給するものです。

計算期間は毎年8月から翌年7月までの1年間となっており、その間にお支払いになった医療保険と介護保険の自己負担額を合算します。

ご高齢になりますと、介護サービスを受けながら医療機関にも通われるということは珍しくありません。施設にご入居中に入院されることや、在宅での生活を続けながら治療を受けられることもあります。そのような場合でも、医療と介護の両方を合わせた年間の自己負担額に上限が設けられていることで、長い目で見たときのご負担を抑えることができます。

この制度の特徴は、同じ医療保険に加入しているご家族の医療費も合算できる点にあります。たとえばご夫婦で生活されている場合には、世帯としてのご負担を軽減できる可能性があります。一般的な所得の方であれば、年間の自己負担の上限はおおよそ56万円程度が目安となりますが、住民税非課税世帯の方の場合はさらに低く設定されています。

このように、「高額介護サービス費」は1か月ごとのご負担を支え、「高額医療・高額介護合算制度」は1年間という長い期間でのご負担を支える仕組みになっています。短い期間でも長い期間でも、安心して必要なサービスをご利用いただけるよう、二重の支えが用意されていると考えるとわかりやすいでしょう。

まとめ

これらの制度があることで、「サービスを増やしたら費用が心配」と感じて利用を控えてしまう必要がなくなります。お身体の状態や生活のご希望に合わせて必要なサービスを選びながら、その方らしい毎日を続けていただくことができます。また、あらかじめ自己負担の上限がわかることで、これからの生活設計も立てやすくなります。

実際に支給を受ける際には、市区町村からのお知らせに基づいてお手続きを行うことになります。ご不明な点があるときには、ケアマネジャーや地域包括支援センター、市区町村の窓口などにご相談いただくことで、安心して進めることができます。周囲の専門職が連携して支えてくれる仕組みも整っています。

介護や医療の費用について考えることは、決して特別なことではなく、これからの暮らしを安心して続けていくための大切な準備のひとつです。そして、公的な制度によってご負担が大きくなり過ぎないようしっかりと守られているということを知っておくことは、大きな安心につながります。必要なサービスを利用しながら、これまでと変わらないその方らしい生活を続けていただくために、これらの制度があるということを心に留めていただければと思います。

この記事の執筆者

独立系ファイナンシャルアドバイザー( IFA)
法政大学大学院( MBA)

田中奈穂美

青山学院大学経営学部卒。IFA(独立系金融アドバイザー)、法政大学大学院MBA、宅地建物取引士、証券外務員1種、銀行融資診断士、相続診断士、投資診断士、ファイナンシャルプランニング技能士 2級。 年間100件を超える法人と個人の財務相談を受ける。 個人は年金・資産運用・ライフプランなどのマネーセミナーを、マネーキャリア、 マネーフォワードで行う。法人は、コスト削減、安定経営に役立つ処々の情報と確定拠出年金をご提供する。 社会保険料削減・節税・生命保険内部留保・投資信託・投資用マンションなど、 幅広い金融知識を持ち、士業チームとともに、クライアントの考え方に寄り添っ たコンサルティングに努める。 プライベートでは2児の母として、中学受験、大学受験を経験。両親の介護と相続、配偶者相続も経験。