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「介護あるある・お悩み編」 「高齢者のいやいや事情・サービス拒否・入浴拒否・服薬拒否」
高齢者のいやいや事情・サービス拒否・入浴拒否・服薬拒否
介護を始めるきっかけも、介護のサービスが始まってからも、介護者を悩ませるのが入浴拒否や服薬拒否です。
子育てしたときに子どもに成長過程で経験するのが子供の「イヤイヤ期」・第一次反抗期とも呼ばれるものです。子どものイヤイヤ期と高齢者の介護拒否は一見似ていて「わがまま」とも思われがちですが、全く違うものです。
子どものイヤイヤ期
自立の目覚め
自己主張が芽生える、感情が爆発する
高齢者の介護拒否
不安の表れ
やめてほしい、防衛的な反応が多い
2つの状況をよく比べてみると、全く逆の心理なのです。
高齢者の介護拒否は長い経験の中で培ってきた様々な感情や根拠から現れることがほとんどです。時が来れば解決することではありません。介護拒否は感情的なものだけではなく、身体的な変化、脳の変化なども影響しているからです。
介護拒否は、施設で受ける介護の方もいれば、入浴という行為だけの拒否の方も、家族からの介護を拒否する方もいます。
では、なぜ「拒否」という形に現れるのでしょうか?
介護拒否(全般)を起こす理由と根拠
理由
- 自尊心がある→「自分はまだできる」「助けはいらない」という思いで拒否する。
- 羞恥心・見られたくない→排泄や入浴などの身体介助に恥ずかしさ感じる
- 介護の必要性を理解できない(認知症)→なぜ介助されるのかが分からず拒否する
- 体の痛み・不快感→関節痛、神経痛、皮膚のかゆみなど身体的な不調で拒否する
介護全般で考えると、介護者との信頼関係に理由があります。信頼関係が成り立っていれば、体を見られたり、触れられたりすることへの抵抗も少なくなります。することに抵抗も少なくなります。また、信頼しているからこそ、痛みや不快感を伝えることができ、我慢せずに介護を受けられます。
意外に多い「入浴拒否」の理由と対策
理由
介護拒否の中でも特に多いのが、この入浴拒否です。理由も様々あり、入浴自体嫌いな方に、この拒否が多くなります。また、「お風呂に入ると疲れる」「滑ったり溺れたりしそうで怖い」などの不安が理由になることもあります。
また、恥ずかしさも男女問わず持たれています。人に介助をされること自体に拒否反応をされる方もおられます。介助者との相性や、なぜ不安なのかの確認も必要です。
その他、タイミングも大事です。例えば拒否をするご本人が立ち上がったり移動したりするタイミングで声をかけ、入浴へのきっかけをつくってお誘いしてみるのも対策のひとつです。
意外に多い服薬拒否の理由と対策
理由
元々、薬を飲んでいない、習慣として飲んでこなかった方は薬を飲むこと自体に抵抗を持っています。その為、「薬はいらない」と拒否をする傾向があります。
また、体調や体質により薬が合わなかった経験を持つ方や薬の形状で辛い経験をしたことがある方は拒否することが多いようです。その場合は副作用を薬剤師等に相談をして、薬の変更や副作用などが起きにくい対策を用意します。
さらに、認知症になると、薬が口に入れた感じが小石などに感じてしまうことがあり、吐き出してしまう事があり服薬自体を拒否することがあります。
実はコレが多い!高齢者の「めんどくさい」という介護拒否
言葉など表面的には「めんどくさい」という表現をしていても、実は「めんどくさい」という背景にはいろいろ深い理由があるのです。
① 体力の問題で行動が大きな負担になる
- 高齢になると、ちょっとした動作でもエネルギーを使う
- 立つ・座るだけで疲れる、着替えると息が上がる
➡ 「疲れる → やりたくない → めんどくさい」と感じ「めんどくさい」表現する。
“めんどくさい=その方には負担が大きい” という意味であることが多い。
② 手順を理解するのが難しくなる(認知機能の低下)
- 手順が覚えられない、次に何をするかわからない
- 考えること自体が疲れるため、複雑な行動は避ける
➡ “頭を使い、理解するのがつらい”ため「めんどくさい」に置き換わる。
③ 高齢者は生活パターンを変えることに強いストレスがある
- 新しいやり方に慣れられない
- 環境の変化や介護者が変わると混乱する
➡ 「めんどくさい」は 変化に適応できないかもという気持ちの表現であることが多い。その為、拒否に繋がることがある。
④ 高齢者に多い、気力・意欲の低下
- 何もしたくない、テンションが上がらない
- やる気がわかない
➡ 本人はそれを「やりたくない」を「めんどくさい」と表現すること。
また、認知症初期に見られる症状でもある。
⑤ 身体の不調が「やりたくなさ」として出る
- 高齢者は痛みや不快感を言葉で説明できず、腰痛、膝痛、皮膚のかゆみ、冷えなどの症状がきっかけとなり、「やりたくない」心情になる
- 「なんとなくしんどい」と感じる。
➡ その結果「めんどくさい」という表現にまとまってしまう。
高齢者の「めんどくさい」は、実は“理由のあるSOS”である。
その「SOS」の中に介護などを拒否するきっかけが隠れているのです。そして、拒否には必ず理由があります。
施設見学で一番多いご相談「入居を拒否されたらどうしたらよいですか?」
ここで、私が経験した入居エピソードをご紹介します。
事例「どうしたら、拒否の強い母を入居させられますか?」
私が、新規オープンの認知症グループホームの施設長だった時のご相談です。
帰宅願望の強いMさん(80歳)女性 介護2の方のご家族が見学に来られました。ご主人はすでに他界されており、デイサービスを利用しながら、マンションで独居を続けていました。
しかしMさんは徘徊がはじまり、お金を持たず電車に乗ろうとするようになります。駅の職員からご家族に連絡があり駅まで迎えに行くことが頻繁になりました。
今までは、駅でお金がなくて電車に乗れなかったのが幸いでした。ご長男は、万が一のことを考えると怖くなり、施設入居を考えたそうです。
見学後、入居の申し込みをされ、ご長男は神妙な顔で話を始めます。
「この後が一番のご相談でして・・・」
「母はデイサービスでも「帰ります」が始まると、どんな声掛けをしても『ドアの前』から一歩も動かないのです。」
「今まで、独居が心配で数度、施設の申し込みをしましたが母のデイサービスの様子を見て、断られたり、いざ入居が決まったら『絶対に家から離れない』と説得に応じず結局入居を取りやめました。どんな方法を取れば、母は入居できるでしょうか?」
と、ご長男は私に訴えてきたのです。話を聞いているうちに、私も一筋縄ではいかない様子が想像できました。しかし母の介護で培った経験を活かし・・・どうにかしたい。
まず、ご本人の様子をと、Mさんのデイサービスに見に行きました。その時もご長男の話の通りに『ドアの前』から動こうとしません。そして、「ご飯を作るの、家に帰らせて!」と職員に詰め寄る様子でした。
Mさんは自分の居場所がここではなく『家』であるのだと感じ対策を講じることにしました。
ご長男に「作戦を思いつきました」と電話でお伝えすると、「本当ですか!」と明るい声になりました。
入居日が近づき、ご長男には『作戦』を説明し「お母様にはマンションの工事で水道も電気も使えない、しばらく泊まってほしい所を探したと伝えてお連れください」とお伝えし、布団などの荷物は前もって運んでおいていただき、入居の日は、荷物は最小限にしてもらいました。
入居当日、やはりMさんは落ち着かない様子です。ご長男も心配で遠くから見届けていました。開所直後の施設の為、入居されている方も帰宅願望がありました。
夕方4時頃になると入居者の一部の方は、カバンを持って出口に行き『オートロック』のドアを前に「あれ、開かないわ」と列を作ります。Mさんもその一人で、皆さん押したり引っ張ったりとドアを開けようとしています。
そこで、スタッフがドアを開けようとしている入居者に声を掛けます。
「もうご飯ができました、今日はここでご飯を食べて明日帰りましょう」そう伝えるとテーブルに戻り、食事を始めました。食事をするとすっかり「帰る」を忘れてしまう様子です。
その姿を見てMさんのご長男は「なぜ皆さん落ち着いてしまったのですか?」と質問をされました。
「帰宅願望の方は、自分の居場所に帰ろうとされるんです。多くの方はお腹が満たされたことで安心してここが私の居場所と思えるようです。」
「なのでお手伝いをお願いしたり、おやつを食べたり、日常に近い生活をして『ここは居場所』と感じてもらうようにしています」その言葉を聞いてMさんのご長男は、安心して帰られました。
Mさんの”居場所探し”は半年ほどかかりましたが、おなかが空くと「家に帰りたい」という傾向が見つかり、ご長男からはおやつの差し入れが増えていきました。
私が入居見学の対応を行っていた時に多かった相談は、入居検討したときの「拒否」と「帰宅願望」の相談でした。
例えば、
「この施設に入居を決めても、親が『入りたくない』と拒否したら説得できるかどうか心配です。」「今まで説得をしても、人の介護なんか受けないと言われます。良い説得方法を教えてください」
といった内容です。
よくご家族の口から出て来る言葉は「説得」という言葉です。
実はご本人に「説得」をしようとすると、大方、反発され、その結果拒否されます。では、ご本人にどのように伝えたらよいのでしょうか?
説得ではなく、「納得」していただくように話す内容を考えるのが成功の秘訣です。
概ね親の介護の時には「安心」=「納得」です。
また、事例のように、「時には優しいウソ」を交えて、ご本人が「わかった」「仕方がない」という状況を作り入居いただくこともあります。入居時は色々ありますが、「朱に交われば赤くなる」生活に慣れて来ると笑い話になるのです。
この記事は介護福祉士に監修されています
介護福祉士
青木 いづみ
母親の認知症をきっかけに、サービス業から介護の道へ転身。サービス業で培ったコミュニケーション力と、介護職員や施設長としての知識や経験を活かし、入居相談員として家族が抱える悩みに寄り添っています。介護現場の視点、利用者目線、専門知識を基にした丁寧な相談を行っています。

