贈与税とは

贈与税とは

贈与税とは

贈与税(ぞうよぜい)は、個人間で財産が移転したときに、その財産を受け取った側に課される税金です。
「贈与」とは、無償で財産を譲り渡すことを指し、お金や不動産、株式、保険など、さまざまな資産が対象になります。

この制度は、財産のやり取りを公平に行うために設けられています。

もし税の仕組みがなければ、一部の人が多くの資産を手にしても課税されず、社会的な不公平が生じかねません。
贈与税は、そうした偏りを防ぎながら、個人の努力と支援を健全に循環させるための制度といえます。 

特に近年では、家族の形や生活スタイルが多様化し、親世代から子や孫への「支援」という形での資金移動が増えています。
教育費、住宅購入、結婚・出産の準備など、人生の節目を支えるための資金をスムーズにやり取りできるよう、贈与税の仕組みは時代に合わせて整備されてきました。

贈与税の対象となる財産

贈与税の対象となるのは、単に現金や預金を受け取ったときだけではありません。
経済的な利益を無償で受け取った場合にも課税の対象になります。

主な例

  • 現金・預金
  • 土地や建物などの不動産
  • 株式・投資信託などの有価証券
  • 借金を返済しなくてよくなった場合(債務免除)
  • 生命保険契約の名義変更により利益が生じた場合
  • 会社の株式を贈与された場合

また、形式上の金銭の授受がなくても、実質的に利益を受けていると判断される場合もあります。
たとえば、他人が所有する家に無償で長期間住んでいる、会社の役員が個人で使う車を会社名義で保有している、などのケースです。
これらは「経済的利益を受けている」と見なされることがあり、税務上の贈与に含まれます。

年間110万円までの非課税枠

贈与税の基本には、「年間110万円までの非課税枠」があります。
これは、1月1日から12月31日までの1年間に受け取った贈与額の合計が110万円以下であれば、税金がかからないという仕組みです。

たとえば、ある年に家族から60万円、知人から50万円を受け取った場合、合計110万円となり課税されません。

一方、120万円を受け取った場合は、超過した10万円に対して贈与税がかかります。

この制度により、少額の支援やプレゼントで税金がかかることはなく、家庭内での助け合いを自然に行える環境が整っています。
ただし、110万円を超えた分については申告が必要になるため、贈与の記録をきちんと残すことが大切です。

税率のしくみ ― 一般贈与と特例贈与

贈与税の税率は一律ではなく、誰から財産を受け取ったかによって異なります。
税法上、「一般贈与」と「特例贈与」の2種類があり、特例贈与のほうが税率がやや低く設定されています。

● 一般贈与財産

兄弟、姉妹、友人、知人など、直系の家族以外からの贈与です。
税率はやや高めですが、110万円の基礎控除を差し引いたあとの金額に応じて段階的に設定されています。

● 特例贈与財産

父母や祖父母などから、成人した子や孫への贈与です。
家庭の中で資産を受け渡しやすくする目的で、税率が優遇されています。
す。

● 贈与税の速算表(特例贈与)

課税価格(110万円控除後)

税率

控除額

200万円以下 10% 0円
300万円以下 15% 10万円
400万円以下 20% 25万円
600万円以下 30% 65万円
1,000万円以下 40% 125万円
1,500万円以下 45% 175万円
3,000万円以下 50% 250万円
4,500万円以下 55% 400万円

例として、親から400万円の贈与を受けた場合、
400万円-110万円=290万円が課税価格となります。
税率15%・控除10万円を適用すると、
290万円×15%-10万円=33万5,000円が贈与税額となります。

段階的な税率構造になっているため、贈与額が多くなるほど税率が上がる「累進課税」の形をとっています。

非課税制度の活用方法

贈与税には、特定の目的に対して一定額まで非課税にできる制度が用意されています。
これらの制度を上手に使うことで、家族の暮らしを支えたり、次の世代を応援したりすることができます。

① 夫婦間の住宅取得に関する特例

婚姻期間が20年以上の夫婦間で、自宅やその取得資金を贈与した場合、
最高2,000万円まで非課税(基礎控除と合わせて2,110万円)。

長年ともに歩んできた配偶者への住まいの支援として、多く利用されています。

② 住宅取得資金の非課税制度

子どもや孫が住宅を新築・取得する際、一定の条件を満たすと、
最大1,000万円(省エネ住宅の場合)まで非課税にできます。

適用を受けるには、契約日、床面積、耐震性能などの条件があるため、事前確認が重要です。
金融機関や税理士に相談して進めるのが安心です。

③ 教育資金の一括贈与特例

祖父母などが孫に教育資金を贈与する場合、最大1,500万円まで非課税になる制度です。
信託銀行などに専用口座を開設し、授業料や入学金、塾の費用などに使うことができます。
教育目的に限定されることで、子どもの学びを確実に支援することができます。

④ 結婚・子育て資金の一括贈与特例

結婚や出産、育児に関する費用に対し、最大1,000万円まで非課税(結婚費用は300万円まで)。
こちらも専用口座を通して管理され、領収書などで使用目的を確認する形になります。
若い世代が新たな生活を始めるときの支援策として注目されています。

相続時精算課税制度(名称そのまま)

親や祖父母などが、子や孫に財産をまとめて移す際に利用できる制度です。

最大2,500万円まで非課税で贈与ができ、その後の税計算の際にまとめて整理します。

この制度を選ぶと、以後の贈与に対して110万円の非課税枠は使えなくなります。
一度選択すると変更できないため、長期的な資金計画を立てたうえで判断することが重要です。

贈与の記録を残す重要性

贈与は、「あげる人」と「もらう人」の合意が前提です。
そのため、あとで誤解やトラブルが生じないよう、贈与の記録を残しておくことが大切です。

主な方法

  • 贈与契約書を作成し、署名・押印する
  • 銀行振込で資金を移動させ、通帳に記録を残す
  • 現金の手渡しの場合、受領書を作成する

形式を整えておくことで、税務上の確認や、家族間の信頼関係の維持にも役立ちます。

贈与税を上手に活かす考え方

贈与税は、単なる税金ではなく、「想いを正しく届けるための仕組み」です。
制度を理解し、計画的に活用することで、無理のない資金移動と、安心できる支援が両立できます。

  1. 非課税枠を毎年活用してコツコツ移転
    毎年110万円の非課税枠を使えば、長期間で大きな金額を自然に移すことができます。
  2. 制度の目的に沿った贈与を意識
    住宅・教育・子育てといった生活支援の制度を使えば、より実質的で意味のある支援になります。
  3. 記録を残して透明性を保つ
    書面や振込記録を残すことで、贈与の事実が明確になり、安心感が高まります。

まとめ ― 贈与税は「支え合いを整える制度」

贈与税は、財産を通じて人を支え合う社会を整えるための制度です。
お金を動かすことだけでなく、そこに込められた気持ちや思いやりを、きちんと形にして届けるための仕組みといえます。

制度を知ることは、暮らしをより豊かに整えること。
人生の節目や家族のサポートの場面で、贈与税を正しく理解しておくことで、より安心して「想いをつなぐ」ことができます。

温かい支援がきちんと届き、円満な関係を築いていけるように――
贈与税の知識は、家族と社会をつなぐ小さなルールであり、大きな安心のもとになる制度なのです。

この記事の執筆者

独立系ファイナンシャルアドバイザー( IFA)
法政大学大学院( MBA)

田中奈穂美

青山学院大学経営学部卒。IFA(独立系金融アドバイザー)、法政大学大学院MBA、宅地建物取引士、証券外務員1種、銀行融資診断士、相続診断士、投資診断士、ファイナンシャルプランニング技能士 2級。 年間100件を超える法人と個人の財務相談を受ける。 個人は年金・資産運用・ライフプランなどのマネーセミナーを、マネーキャリア、 マネーフォワードで行う。法人は、コスト削減、安定経営に役立つ処々の情報と確定拠出年金をご提供する。 社会保険料削減・節税・生命保険内部留保・投資信託・投資用マンションなど、 幅広い金融知識を持ち、士業チームとともに、クライアントの考え方に寄り添っ たコンサルティングに努める。 プライベートでは2児の母として、中学受験、大学受験を経験。両親の介護と相続、配偶者相続も経験。

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