もっと介護を考えよう 「介護あるある家族のお悩み編・親の介護は誰がする?」

もっと介護を考えよう

「介護あるある家族のお悩み編・親の介護は誰がする?」

家族内の悩みは様々あります。子育てが一段落すると徐々に近づいてくるのが「親の介護」です。ひと昔前は、「嫁姑問題」に始まり、「相続問題」で終わるなど、親子関係の悩みは今も昔も様々です。今は核家族化が進み、「親の介護」についての悩みの内容も多様化して来ました。

核家族化が進み、少ない兄弟での介護、ひとりっこの介護など少人数に負担を負う介護を行うケースが増えています。

親は子供に対して「介護は子どもの義務」と思うでしょうか?それとも「子どもには迷惑を掛けたくない」と思うでしょうか?

また、子どもの立場としてはどう「親の介護」を考えているでしょうか?

現在の超高齢社会をデーターで見る

親世代が子どもの立場の時と現在では、家庭の環境や社会の動向も変っています。実際には家族のうちの誰が主介護者となっているか、データーを見てみましょう。

【 出典 】

時代は変わり、「長男の嫁」が必ずしも介護の担い手とは限らない

1995年ごろでは、親の介護の担い手は「長男の嫁」が割合としては一番多い時代でした。現在2020年台になり、その傾向は変わりつつあります。「女性だから家を守る」から、「女性も社会の一員として働く」という世相に変わってきました。これは日本のジェンダーロールの変化によるものです。

ジェンダーロールとは、「男だから外で働くべき」「女だから家を守るべき」などの固定概念です。「長男の嫁は親の介護をするべき」これも同じジェンダーロールにあたります。

現在はこのジェンダーロールが弱まりました。また、2000年に始まった介護保険の影響もあります。介護保険の契約は実子が行うことが多くここで実子は介護に関わらなくてはならなくなるのです。

現代社会は少子化、核家族化が進み、兄弟が少ない、また、ひとりっこ世帯が増え、一人で介護をする、または少ない兄弟で介護する比重が多くなりました、ここで、介護の割合で様々「お家事情」が出てきます。

介護に見る「お家事情」・さまざまな人間模様

「子供だから絶対、親の介護をしないといけない?」

子ども側の事情も様々です。仕事の関係でどうしても親の近くにいられない。近くても仕事の勤務の関係で介護ができないなど様々です。

「家族は無理のない範囲で助け合い、必要なら裁判所が負担を調整するルール」

罪になりませんし、強制ではありません。しかし家族(親族)で出来る範囲で助け合うのが主旨です。

核家族化の介護はどんなことが起きている?

事例1・ひとりっこの親の介護

◆「自分の意見を一方的に伝えて来る父に困惑」(親子間の介護の問題)

一人っ子のAさんは父の介護がはじまりました。Aさんの収入は一般的には安定しています。その収入を知っている父は、Aさんに「介護費用が掛かるから費用を工面してくれ、収入だってしっかりあるなら、息子なんだから当たり前だろ」と伝えます。

しかし、Aさんは父に対して「少し考えさせてほしい」と伝えたところ「親不孝者、親の面倒を見ない息子に育てた覚えはない!」と怒りだしました。

少し考えさせてほしい

親不孝者、親の面倒を見ない息子に育てた覚えはない!

ここで考えたいのが、「収入が安定しているから」「息子だから当たり前」という父の言葉とAさんの「少し考えさせてほしい」という親子間の温度差です。

この会話があってから、Aさんは父と少し距離を置きました。

Aさんには考えがありました。

  • ひとりっこだから親の面倒はみる
  • 自分には家族もあり、家のローンも、子どもの教育費もかかるし、自分たち夫婦の将来の資産も考えなければいけない
  • コロナなどで収入が減った時期があった。今後安定していく訳ではない

確かに、一般的にはある程度安定している収入を得ているが、今後どうなるかは誰にもわからないのに、父親は一方的に「当たり前」という一点で「支援」を期待している。

介護費用は必要であるから自分しかいないと思うが「出すのが当たり前」になってしまうと、今後支援が出来なくなった時にどうするかと考え、安易に「OK」を出せない気持ちだった。

父には、自分の考えも理解してから返事の答えをしたかったという、Aさんの思いがありました。

この後、時間は掛かりましたが、Aさんは自分の思いを伝えた後に「介護費用は自分の出せる範囲で支援する」と伝えました。

事例・2 兄弟姉妹間の介護負担の格差

◆「なんで、親の介護なのに負担が平等じゃないの?」兄弟姉妹間の介護事情

意見の折り合いがつかず、親の介護が原因で特に兄弟姉妹間で関係に亀裂が入ることもあります。中でも多いのが、介護負担(介護や費用面)の格差です。

  • 一部の兄弟姉妹が遠方にいる・仕事があるから、介護は出来ない。
  • 親との折り合いが悪いので関わりたくない などの問題から格差が生じています。

■次の事例は、姉妹2人で介護をしています。

子どものころから仲が良く、「双子の様な姉妹」であったが、親の介護などが始まり、徐々にお互いの意見や考え方がぶつかり始めます。

お散歩

おやつ時間

鬼ごっこ

その格差がのちのち、不満となり、亀裂が生じ問題が起きていきます。

長女

過去に大きな病気をした。現在は日常生活を行っているが体調不良が多い。夫と二人暮らしの主婦。市外に住んでいる

次女

両親と同居時期が長かった、現在は、息子と母子家庭の為、仕事に追われる。住んでいる場所も両親の家に近い。

介護が必要ないが、長年持った疾患があり、身体的に心配がある。

認知症がはじまる。元々の性格は穏やかではあるが、認知症進行とともに在宅介護では厳しくなりはじめている。

認知症が始まった母と同居の父の言い争いが頻繁になり、姉が一時期母親を引き取り、自宅で生活を始めました。しかし一ヶ月後、姉は母を実家に戻してしまいます。

妹が理由を聞くと...


どうしても帰ると聞かないから実家に帰したの。介護サービスを使わせようと思ったけれど、電話で聞いたら、住んでいる自治体が違うから受けられないって

全く出来ないのかな?介護が受けられる範囲があるって見たことあるよ...


なんであなたが知っているの?じゃぁ、あなたが手配してよ

電話で、困ったはと聞いたけど、介護受けたいって言ってなかったよね


忙しいあなたに気を使ったのよ。それに介護の世界って虐待とかあるって聞くから、お母さんをそんな目に合わせたくないでしょ...

お父さんとお母さん最近けんかするからって、連れて帰ったよね。なんで実家に戻すの?家に戻すより介護サービスの受けた方が安全じゃない?


あなたは何もしないで私を責めるの?善意で家に連れ帰ったのに!あなたの方が実家に近いんだから!あなたが何とかして

姉は、体調不良もあるのか精神的に不安定でした。以前はこんなに感情的にはならず冷静で穏やかな姉だったのに。

妹は責任を感じ、母の介護を地域包括センターに相談に行きました。そして母の介護サービスを受けはじめました。

母の認知症は進行、妹は、仕事をしながらの母の介護は大変なものでした。シフト制で夜勤もある仕事です。自分の体も限界の中、病院への通院介護は妹が全て行い、姉は病院に直行し同伴するだけでした。

ある通院日、医師から「お母様認知症が進んでいます、施設に入居を考えたてくだい」と言われました。妹もその方がよいと頷きました。

しかし姉妹での会話は

ねえお姉ちゃん、やっぱりお母さんの施設入居、考えようよ


あなた、娘でしょ、お母さんのことかわいそうと思わないの?施設に入れるなんて、私一度も考えたことないから。私だってあなたの夜勤の日に預かってるわよ、体調よくないのに。まだ大丈夫でしょ?このままで

正直、夜勤で送り迎えするのもう限界なの。子供の世話もあるし、なんで、働いている私の方が、負担が大きいの?お姉ちゃん反対の事できる?出来ないなら施設入居を考えて!


入居考えてないし、私の負担を増やす?無理よ

その日は、施設入居の話は決裂しましたが、徘徊も始まり警察にも「もうお母さんの命にもかかわりますよ」との言葉に、姉は渋々、母の入居に同意しました。

母の入居を機会に徐々に姉妹間の亀裂も消えたかと思いましたが、妹は結局、母の通院も、諸々の手続もいました。その後父が急死し相続が発生するため、妹は母に法定後見人を付けようと姉に提案しました。

その際も「あなたが有利になるため?」と姉は声を上げます。妹は後見人がいなければ認知症の母には判断能力がなく、父の財産分与が出来ないからと伝え手続きをしました。

月日は経ち、母は施設で感染症にかかりそのまま、施設で看取りとなりました。

姉は「施設で病気にならなければ、お母さんはまだ元気でいた。この施設に入れなければ.母はまだ生きていたはずだ」というのです。その言葉に妹が納得できないのか、妹は母の葬儀以来、姉に会うことを拒んでいます。

子供の時には仲が良かった姉妹に、何がこの関係を変えてしまったのでしょうか?
介護はまさに感情労働」です。また、介護だけではない感情があるから家族内の問題も複雑になるのです。

親の介護の準備は話し合いから。
相談窓口、費用負担、施設入居、相続等々を予め調べ相談しておくとよいでしょう。
誰がするではなく出来ることは自分がやっていいよとお互い言い合える話し合いがよいですね。

※感情労働とは?

介護者自身も疲れていたり、忙しかったり、心に余裕がない時があります。それでも「笑顔で接する」「落ち着いて対応する」役割を期待されます。この “感情のコントロール” が 感情労働 です。
「感情労働」は一般的に職業に使いますが介護職員と同じように自分の感情をコントロールしながら相手に合わせる行為です。親の介護では、「精神的な労力」がかかり、「家庭内介護における感情労働」と表現できるでしょう。

この記事は介護福祉士に監修されています

介護福祉士
青木 いづみ

母親の認知症をきっかけに、サービス業から介護の道へ転身。サービス業で培ったコミュニケーション力と、介護職員や施設長としての知識や経験を活かし、入居相談員として家族が抱える悩みに寄り添っています。介護現場の視点、利用者目線、専門知識を基にした丁寧な相談を行っています。