11月11日は介護の日「もっと介護を考えよう」
「他人事ではない、通称「迷子老人」の実態」
通称「迷子老人」とは?
認知症などにより自分の居場所や帰る場所がわからなくなり、外出先で行方不明になる高齢者のことを指します。「迷子老人」は正式な法律用語ではありませんが、行政・報道・福祉現場などで広く使われている表現です。
主な原因としては、認知症による記憶障害や見当識障害(時間・場所・人の認識が曖昧になる)ことにより、自分がいた場所に帰れなくなったり、目的地にたどり着けなくなったりして行方不明の状態になります。
通称「迷子老人」の実態と社会の取り組み
認知症高齢者の行方不明者(通称「迷子老人」)の問題は、近年、全国的に深刻化しています。警察庁の統計によれば、2023年には認知症やその疑いで行方不明となった人が1万9039人に上り、これは11年連続で最多を更新したことになります。特に80歳以上の高齢者が多く、1日あたり52件の届け出があるペースです。
行方不明者のうち、約77.5%は届け出当日に、99.4%は1週間以内に所在が確認されていますが、道に迷っているときに事故に遭ったり、急に体調の変化があったりで、2023年には553人が死亡したと報告されています。
このような状況を受け、各自治体や関係機関では、認知症高齢者の行方不明を防ぐための取り組みが進められています。例えば、三重県伊賀市では「認知症を原因とした行方不明による死亡者をゼロに」を目標に掲げ、地域全体での見守り活動や情報共有を強化しています。
また、東京都健康長寿医療センター研究所では、認知症による行方不明実態と対策について研究を行い、パンフレットなどで情報提供をしています。
さらに、警察庁がまとめた「令和6年行方不明者届受理状況」では、認知症に起因する行方不明事案が増加している実態が報告されています。特に、認知症などの高齢者の方が事故や事件に巻き込まれる危険性から、家族による届け出件数が多いとされています。
また、通称「迷子老人」の数が毎年上位に挙げられる大阪府警では、認知症高齢者の行方不明者や虐待・DVなどの人身保護の専門部署「人身安全対策室」が設置されました。その活動をご紹介いたします。
大阪府警の人身安全対策室の活動
大阪府警では、人命・安全にかかわる諸問題(ストーカー、DV、行方不明高齢者、虐待など)を扱う中核部門で人身安全に特化した「人身安全対策室」を設置し、認知症などの行方不明者のみならず、家出人の捜索などを行い、人身の安全を守る部署として日本で初めての部署です。
昨今増えている認知症などによる行方不明者を防ぐため、さまざまな取り組みを行っています。また、再発防止の対策も行っています。
認知症高齢者の行方不明者・通称「迷子老人」への主な活動内容
情報共有と連携
地域の福祉機関や医療機関と連携し、認知症患者の情報を共有することで、行方不明時の迅速な対応を可能にしています。
GPS機器の配布
認知症患者やその家族に対し、GPS機器を提供し、患者の位置をリアルタイムで把握できるようにしています。
地域住民への啓発活動
地域住民に対し、認知症についての理解を深めてもらうための講座やイベントを開催し、見守り活動の重要性を伝えています。
捜索活動の強化
行方不明者が発生した際には、警察官やボランティアと連携し、捜索活動を強化しています。
これらの取り組みにより、大阪府内での認知症高齢者の行方不明事案の発生を抑制し、早期発見につなげています。
◆警察庁が公表した「令和6年における行方不明者届受理等の状況」のPDF資料
https://www.npa.go.jp/publications/statistics/safetylife/R6_yukuefumeishakouhoushiryou2.pdf?utm_source=chatgpt.com
◆FNNプライムオンライン■「大阪府警察本部 生活安全総務課 人身安全対策室」 https://www.fnn.jp/articles/-/666094
実録・私の認知症介護~迷子老人はなかなか気づかれない
私の母が在宅から認知症グループホームに入居を決めたきっかけは、この「迷子老人」です。
母もこの迷子老人として捜索してもらいました。
母と同居を始めたときは、手帳に予定を姉が記入をして、持ち物は母が自分で用意をし、薬だけは心配なので私が確認をしていました。
当時住んでいた家はバス停までほぼ直線で徒歩2分くらいの場所。バスは終点まで乗り、電車に乗れば10分ほどで姉の待つ駅に到着します。
その状態が半年くらい出来ていたのですが、ひとつ前の駅で降りてしまったり、携帯電話を忘れてしまったりして迷子になることが出てきました。
見た目は身なりもしっかりしているし、目的もわかっている。でも何かしらが抜けてしまっている状態でした。パズルのピースが1個足りないというたとえでしょうか。
ある日、母が姉との待ち合わせ場所に向かったとき、ひとつ前の駅で降りてしまい、いつもと違うと感じた母は、姉に携帯電話で電話をしようとした時に携帯電話を忘れたことに気付きました。
慌てた母は駅員さんに助けを求めたようですがうまく伝わらず、交番に連れていかれたようです。
そして交番にいる母から電話があり駅を間違えて降りてしまったことを知りました。私はまだ母に会えない姉に連絡し、交番まで迎えに行ってもらいました。
この後から、母が姉の家に行くときは必ずリレー式で母を引き渡すようにしました。
しかし、認知症は進行する病気です。
パズルのピースが1個ではなく、段階的に2個、3個と足りなくなっていくのです。
とうとう、母は迷子老人として捜索される日がやってきてしまったのです。
その日私は仕事を終え、家に帰ったところ、母の姿がありません。
カレンダーには来週、姉の家に泊まりに行く予定が書いてありました。携帯電話も手帳も置いたままでした。
「姉の家に行く予定が変わったのかな?」と姉に連絡をすると
「えっ?さっき連絡があって、来週だよねって確認したばかりよ」と言われました。
「しかしいつも持ち歩いているリュックと帽子と靴がありません。
・・・どこに行ったの?実家に帰ったのか?具合が悪くなったの?
思い当たるところに電話をしてみましたが、母はどこにもいません。近くの公園やスーパーも探しましたがどんどん、暗くなっていきます。
・・・これが徘徊・・・・母にとうとう来てしまった・・・・
私は、頭が真っ白になりながら、どの洋服がなくっているか確認をしました。そして最寄りの警察署に連絡をして、「迷子老人の捜索」を依頼しました。
所持金は2,3千円しか持っていないので遠くには行けない。でも電車を乗り過ごしたら、途中で具合が悪くなったらなど、考えれば考えるほど怖くなりました。
最寄りの警察からは近隣地域の警察署では「迷子老人の保護」はないとの連絡。
・・・もしかしたら、見つからないかもしれない・・・
私はパニックになりつつも自分の携帯電話を握りしめ近くを探し続けました。
その2時間後姉から連絡があり、最寄駅から二つ先の駅にいることがわかりました。
すぐに私は警察に連絡し、「〇〇駅に黒いフード付きのワンピースにベージュの帽子にリュックを背負っています。名前と生年月日は言えます。」と母の情報を伝えました。
20分後警察署から「着ている洋服の特徴とお名前、生年月日が一致しましたので、警察署で保護しました」との電話があり、母を迎えに警察署に向かいました。
私と姉が警察署に向かっている間、警察官の方が母に話を聞いてくれたようでした。
はじめは近くのスーパーに向かったとのことですが、バスを見た瞬間「バスに乗る=姉に会いに行く」と目的が変わってしまったようです。飛び乗ったバスは途中駅止まりのバスだったのかいつもと違う電車に乗り、「川の見える駅」で姉を待ち続けたのです。
待っても待っても来ないので公衆電話で電話をしていたようです。でもボタンの押し間違いで姉には連絡がつきません。
そして所持金が残り100円になった時にやっと姉に電話が通じたのです。
夏の暑い時期、無事で保護されたことが幸いでした。
- 母が駅の中から外に出なかったこと
- 私の勤務が早番だったこと
- 姉に電話がつながった時に母がいる駅がアナウンスでわかったこと
- 母から連絡があった後、すぐに警察に保護されたこと
これはラッキーが重なって救われた稀な出来事と思い、母の施設入居の話を切り出しました。それまで施設入居に難色をしめしていた姉も、この出来事をきっかけに入居に前向きになってくれました。
では、認知症高齢者の方が「迷子老人」にならないためにはどのような対策ができるでしょうか
認知症高齢者の行方不明を防ぐためのポイント
連絡先の記載
- 発見された際にすぐ連絡が取れるよう、ご本人が身につけるものに連絡先を記載しておきましょう。
- 持ち物は忘れたり無くしたりすることがあるため、洋服や下着に記載することをおすすめします。
- 書くのが大変な場合は、アイロンプリントや貼布などで工夫すると便利です。
一人の時間を減らす
認知症が進行してきた場合は、一人で過ごす時間をなるべく少なくすることが大切です。介護保険サービスを効率的に利用して、日常生活の見守りができるよう工夫しましょう。
万が一のときの対応
行方不明や事故などの事態が起きた場合は、速やかに社会の支援や地域の取り組みに助けを求めることが重要です。
認知症になっても、安心して暮らせる社会であるために。
家族の思い、地域の力、そして社会全体の支えがあってこそ、行方不明を防ぐことができます。“見守る力”を一人ひとりが持つことで、悲しい出来事を減らすことができるはずです。
この記事は介護福祉士に監修されています
介護福祉士
青木 いづみ
母親の認知症をきっかけに、サービス業から介護の道へ転身。サービス業で培ったコミュニケーション力と、介護職員や施設長としての知識や経験を活かし、入居相談員として家族が抱える悩みに寄り添っています。介護現場の視点、利用者目線、専門知識を基にした丁寧な相談を行っています。

