9/21は世界アルツハイマーデー
認知症にはこう見えている~認知症の心は声なき言葉を伝えたい
認知症介護の中での介護する側(介護者)からの困りごと・・・「つじつまが合わない」などでコミュニケーションが取りづらくなります。
介護する側の言っていることが理解できないなどで、介護者される側の本人に受け入れてもらえない。また、本人の感情が抑えきれず、暴言や暴力に繋がってしまうケースもあります。一つ言えることは「認知症の方の行動は心の声」であるのです。
認知症になり「記憶障害」や「見当識障害」などが起きているからこそ「不確かさ」や「不安」が心の中に生まれます。また、脳の中で起きている変化により心理状態にも影響を与えています。
その変化を見た家族や周囲の方からすると、急に不安がったり、言葉が荒くなったり、以前はしなかった行動や姿をみると、なぜだろう?と感じ「人が変わったようだ」と思われることもあるでしょう。実際、認知症になると別人のように人格が変わってしまうのでしょうか?
実録・私の認知症介護~私から見る母は七変化
父と母は二人暮らしをしていました。母の認知症が発覚し、徐々に症状が目立ってくると、父と母の口論が増えてきました。父も40年患っていた病気がありました。このまま夫婦だけで生活ができるかというと、認知症になった母が父の病気の管理は出来ません。そして、この後どのように口論が増えていくかを考えると私は心穏やかではいられず、心配な状況でした。
ある日その二人に、心配していた事件が起きたのです。
母から電話で「奥歯がなくなっちゃった」と言われ、理由を聞くと「父に殴られた」というのです。母は「殴られた」だけで、そのほかのことははっきり言いません。ですが、体の小さな母です、当たり所が悪ければ最悪の事態が起きると思い、父と母に少し距離を取らせようと、母に「すぐに私の家に住んで」と同居を提案しました。
そして母が私の家に来たその日から、母との生活が始まりました。でも数日すると「お世話になったね、また来るからね」というのです。もう、殴られたことも忘れたの?怖くないの?と思いました。
私は完全に母の話を鵜呑みにしていましたし、父が一方的に暴力を振るったのだと思い、実家になんか帰すものかと思っていました。
しかし、母と一緒にいる時間が増えていくうちに、私の想像以上に母の物忘れが進んでいると感じ、殴られた時に居合わせた私の息子に当時の様子を聞いてみました。
「怪我をさせたのはおじいちゃんかもしれないけど、でもおじいちゃんを怒らせたのは、おばあちゃんだと思う。あの時おばあちゃん、何度も同じこと言いながらおじいちゃんを怒ったんだ。我慢をしていた、おじいちゃんは近くにあるコップを投げた。」
「そうしたら、おばあちゃんが窓を開けて『誰か助けてください』って大声で叫んだんだ。僕は『迷惑だから、やめなよ』って言ってもやめなくて。『警察呼んでやる』って、おばあちゃん電話かけようとして、おじいちゃんは電話を取り上げようとして、もみ合いになって、おじいちゃんの手が当たって奥歯が折れた。
おばあちゃんはその後、本当に警察に電話してお巡りさん呼んじゃったんだ。何だかおばあちゃん違う人みたいだったよ。」
・・・「母は被害者?それとも加害者?」「父に殴られた?これって暴力なの?」
母が一方的な被害者だと信じていた私は頭の中で疑問と不安が入り交じりました。その予感が的中し、近い未来に私は父と同じ思いをするのです。
ある日、私は母に留守番を頼み、⏱一時間ほど家を空けたのです。
帰ると母が部屋の窓を開け「どこにいったの!」と私の名前を大きな声で呼んでいたのです。
その姿をみて「どうしてそんなに大きな声出すの?」と母に言うと「なんで急にいなくなるの?」というのです。
「私、出かけるって言ったよね」と少し怒った口調で言うと、母はプイっと怒った顔をして部屋に戻りました。
すると携帯電話で姉に電話をして、「(私に)いじめられた、もう、ここにいるのは嫌」と話しているのです。その言葉を聞いて、「えっ?わたしが悪者なの?」と思い、父の怒りたくなった気持ちが初めてわかりました。
しかし、しばらく時間がたつと、何もなかったように「これ美味しいね」とご飯を食べる母に戻るのです。
母はなぜ、そのような行動をとったのか?~母の行動を分析
「出かける」と言われたことをすぐに忘れてしまい、言われたことを忘れてしまったことを認めたくなかった。
寂しさを感じて探していたのに、反対に「なんでそんな大きな声出しているの」と責められている感じがした。
母は娘に責められた気がして居心地が悪いから「ここにいるのは嫌」と言った。
母は自覚のない認知症症状(短期記憶障害や見当識障害)に混乱し、母は自分が正しいと思って取った行動を娘に責められたと感じ、プライドが傷ついた。
その感情のまま姉に電話で自分の感情を主張した。時間がたつと、そのことすら忘れてフラットになった。この行動を考察すると「その時の感情」で「行動している」認知症の行動パターンの一つです。
母は父と一緒に生活していた時も同様の状態を繰り返していたのかもしれません。
ある日、母の手帳を読んでわかったこと。「認知症でも母の思いは忘れない」
ある日、母の持ち物を整理していて見つけた母の手帳を目にしたのです。
私と同居を始めた日にも記載がありました。
「今日、お父さんに殴られた。もういやだ、あの家には帰らない、私は決めた」
また、別に日にはこんな言葉が書いてありました。
「私はふつうの自分とおかしい自分がいる、出ていけ、おかしい自分」
娘たちはいつか こんな私を嫌いになってしまう 嫌いにならないで。また🍰ケーキいっしょにたべようよ」
「紙パンツはいやだ、迷惑をかけるのもいやだ。でも、娘たちには迷惑をかけたくない。私は今日から、紙パンツを履くことを決めた。」
この手帳の言葉では、母は「今までとは違う自分」がわかっていて、感情も気持ちも残っているのです。
どんな思いで母はこの文章を書いたのだろう?うまく伝えられないことや、分からなくなることが増えて、辛かっただろうと感じました。子供が書いたような文章ですが、その中には娘を思う母が残っていました。認知症は人をすべて変えるのではないのです。
不安やもどかしさの裏側あるもの ~感情と行動の関係性
認知症の方が、不安や焦燥感、感情が高ぶった時に、その時の感情をそのまま行動として表現してしまうことがあるのです。
認知症の方は相手に対して悪意を持っている訳ではなく、単に感情そのままに行動していることが多いのです。認知症になって人が変わったのではなく行動の現れ方が変わると言えばわかりやすいでしょうか?
「暴言」を言われるなど、その行動を受け取る介護者は、ご本人に悪意があるように受け取ってしまうこともあるでしょう。
特に認知症の方と関係性が近く、関りが多くなるほど、その行動を受けることが多くなるのです。そして近い関係であるが故、遠慮しないので当たりも強くなるのです。その為、家族の方などはその経験をすることが多くなります。
時には暴力や暴言といった行動に、時には不安という形で一日に何十回と電話がかかってくる行動になるかもしれません。
その行動の裏にある感情は「やりたいことが思い出せない」「言いたいことを忘れてしまう」などの不確かな記憶や「思っていること」を伝えられない、「不安」や「もどかしさ」、の現れであることも多いのです。
では、言葉でうまく伝えられない認知症の方は、どのような行動で心の中を伝えようとしているのでしょうか?
🍀 こんな行動していたら、心の声の合図です 🍀
- ♣ 家にいるのに「家に帰りたい」「会社に行く」と言い始め落ち着かない
「帰宅願望」とも呼ばれるものです。介護者からすると、不思議に思える行動です。この行動は、昔自分の一番楽しかった時期、充実していた時間に戻りたいと思っている行動と言えます。その為、実際住んでいた家や会社に行きたいわけではない場合がほとんどです。
⇒⇒自分が必要とされた時期に戻りたいと感じる。=自分の居場所を探している。
- ♣ 大きな声で「バカヤロウ」などとこぶしを上げたり、叩くまねをしたり、実際に物を投げたりする。
「暴言・暴力」と呼ばれます。伝えたいことがうまく伝わらない、思ったようなことが出来ないという不安や焦燥感やイライラした気持ちが行動として現れ、特に自分の気持ちをわかってほしいと思う時に起こしやすい行動です。介護拒否などにも同様のことが起きる場合があります。「嫌!」の象徴
⇒⇒言いたいことがまとまらずイライラしている状態。その裏には「わからなくなった自分」への「嫌」や「やめて」の気持ちが隠れていることがあります。
🍀 認知症の方の心の声のサインに対しての対処法 🍀
- ♣ 相手が落ち着く言葉を使う「どうしました?」「大丈夫」「ありがとう」
この3つの言葉は相手を落ち着かせる便利な言葉です。「どうしました?」と聞いてほしい、「大丈夫」と言われて安心したい、「ありがとう」と言われ、人の役に立ったと思いたい。普通の人が思うように、認知症の人もそう感じているのです。
- ♣ 「認知症」の視点を変えてみる。「忘れる」をうまく使う。
認知症は、主に「忘れる」病気です。「忘れる」に目を向けたある方が認知症であるご家族に使っていた方法で、私は「消しゴム法」と呼んでいます。ご本人の機嫌が悪い時に褒めるのです。「気持ちの良い言葉」の「消しゴム」を使うと悪い気持ちを消し、機嫌が悪いこと自体を忘れてしまうのです。また、お茶やお菓子に気持ちを向けたり、場所や人を変えてみることも、この「消しゴム」の効果があります。
- ♣ 相手はうつし鏡です。
言葉の通りですが、介護者の状態が介護を受ける側にはうつし鏡になるのです。強い口調が出れば強く反応が返ってきます。反対に笑顔で対応すれば、穏やかに返ってきます。
- ♣ 対象者と少し距離をとるなど、自分だけでなんとかしようとしない。
- 家族や周囲の方で役割分担をする。
- 病院や施設などで「レスパイト※」などし、施設をうまく利用する。
- 状況が改善しない場合は必ず医師などに相談をしてください。
介護者も辛い時、ご本人も辛いのです。少し距離を置くことでお互いの関係性に変化があります。
また人や環境が変わることでよい方に変化することもあります。また、お薬の調整をすることでご本人の症状が改善するだけでなく、ご本人の「辛さ」も軽減することが出来ます。
※レスパイト「(Respite)」とは、介護や子育てなどで ケアを担っている家族や支援者が一時的に休息をとることができる仕組み を指します。日本語では「介護者の休養」「介護の一時中断支援」といった意味で使われることが多いです。
認知症の介護はする側もされる側も「不安」を少しでも軽減することが解決の近道です。病気には「不安」がつきものですが、認知症介護も不安をうまく解消することが大切です。
この記事は介護福祉士に監修されています
介護福祉士
青木 いづみ
母親の認知症をきっかけに、サービス業から介護の道へ転身。サービス業で培ったコミュニケーション力と、介護職員や施設長としての知識や経験を活かし、入居相談員として家族が抱える悩みに寄り添っています。介護現場の視点、利用者目線、専門知識を基にした丁寧な相談を行っています。

