「食の楽しみ」~規格外品はお得で美味しい?~
最近「規格外品」という言葉をよく耳にするようになりました。しかし実際に規格外品が売られていても、買ったことがないという方もいらっしゃると思います。美味しいのかどうかよくわからないから、ちょっと手を出しにくいのかもしれません。今回は、規格外品とはどのような品なのか、見た目と美味しさの関係についてお話をしていきたいと思います。
1.規格と規格外品
「規格」とは農産物を効率よく安定的に流通させるために設けられた形・大きさ・傷の有無などの基準のことで、そこから外れた品を「規格外品」と言います。「規格」は、生産者・販売者・消費者すべてにとって農産物を扱いやすくするためにできたものです。
農産物は形や大きさや中身がそれぞれバラバラです。バラバラのものを流通させるよりもある程度同一化させた方が、効率よく出荷・販売ができます。例えば、曲がったキュウリは箱に綺麗に沢山並べられません。ですからまっすぐで綺麗なキュウリの方が規格上、良品とされてきました。
最近では糖度センサー、光センサー、AI画像診断により糖度、酸度、硬さ、ジューシーさ(水分量)などの中身も非破壊検査で判断できるようになっています。ですから、見た目だけでなくある程度食味も選別できるようになっています。
中身を見なくても、規格の表示を見ればどのような農産物かわかることがメリットですが、基準から外れてはじかれてしまうものも存在してしまうことがデメリットです。また規格と美味しさは必ずしもイコールではありませんし、安全性を担保するものではありません。
箱に規格が記載されている
桃の選果場(山梨)
2.見た目がきれいなものを好む日本人
長い間規格が重視されてきた背景の一つには、日本の消費者が「見た目がきれいなものを好む」傾向が強いことがあります。形が揃っている、傷がない、色も綺麗なものは「丁寧に作られたもの」、「病気や虫の問題がなかった」と感じ、「見た目=安全・品質の良さ」と結びつける傾向があります。そのような傾向があれば、売る側はお客様に買ってもらうために、より完璧な農産物を提供しようとします。ですから消費者もすっかり規格という仕組みに慣れてしまったのです。そしてそこからはみ出した規格外品を店頭で消費者が目にする機会はとても少なくなってしまいました。
しかし、食品ロス問題が社会課題として認識されたことにより、規格外品の存在を社会的に伝えるきっかけとなりました。更にSDGsの普及によって、より意識されるようになったのです。
3.規格外品はどこで発生するのか?
まず、畑で収穫されずに破棄されるものがありますし、出荷する際に選別して規格外にするものもあります。さらに選果場に持って行って規格外と判断されるケースもあります。また出荷しても見た目やサイズなどが微妙にずれていたり、市場での評価がとても低い場合、流通されても規格外品のように扱われて安価に販売されることもあります。小売店独自基準ではじかれ返品される場合もあります。つまり消費者の手に届くまでの各所で規格外品が発生するのです。
トマトの選果場
右のセンサーで重さや形などを測る
4.規格外品ってどのくらい存在するの?
生産量全体からみた規格外品の割合は厳格には把握できません。まず規格の基準は全国統一ではなくバラバラだからです。また、単純に畑で廃棄してしまうものもあるので、収穫量と生産量の差が規格外品とも言えません。品目や年によっても量が異なります。ですが一般的には、日本の農産物の規格外品は生産量全体の約2割から3割、場合によっては4割にも達するといわれています。
規格外品の割合が増えれば、生産者は収益の減少や廃棄コスト増で経済損失になります。また社会全体として、大量の規格外品を廃棄すれば食料自給率の低下や環境負荷にも繋がってしまいます。ですから「食べられるなら食べよう、活用しよう」という意識はとても重要なのです。
5.規格外品を減らすことは出来るの?
「規格外品」を減らすのはそう簡単ではありません。まず根本的な問題として農産物は工業製品ではなく植物であり生き物なので、均一に作れないからです。もちろん生産者はなるべく規格外品を減らす努力はしていますが、屋外でもハウス内でも、病害や生育環境による自然なバラつき、予想外の外的なリスク等によって規格外品はどうしても発生してしまうのです。
消費者の中には、捨てたらもったいない、加工して活用すればいいのにという方もいるのですが、生産者にとって農産物は食品であると同時に商品でもあるので、廃棄する手間や費用、加工するための費用や労力を換算したら経済的に合わなくなってしまうという現実もあります。
また長年、規格という仕組みの中で農産物の流通が成立しているので、その仕組みを変えること自体も現状では難しいでしょう。ですから、規格外品を減らすことを考えるよりも、もっと消費することを考えた方が現実的です。
スーパーの袋入りの規格外きゅうり
6.美味しい規格外品の見つけ方
規格外品といっても様々です。そのまま普通に食べられるもの、加工原料に出来るもの、人間は食べられなくても家畜の餌になるもの等、状態によって使い道が異なります。私達が目にするのは普通に食べられるものです。
最近はスーパーなどでも規格外品の野菜や果物を置いているところが増えてきましたので、比較的購入しやすくなっています。しかし、美味しいのかどうかわからないと手に取りにくいかもしれません。ではどのような規格外品が美味しいのでしょうか。
見た目だけが問題の規格外品がお勧めです。形が悪い、表面に軽い傷や痛みがある、生理障害でかすれなどがあるなど外見だけがよくないものは、たいてい中身の味に影響がありませんが通常よりも価格は通常よりも安価です。
ただし時間が経過すると傷や痛みが劣化してしまう場合もありますので、鮮度が良いものを選ぶ方がよいでしょう。規格外品の中には、未熟なもの、成長しすぎてしまったもの、貯蔵が長すぎたものなどもあります。これらは、本来の食味と異なってしまうことがあるので、そのまま調理して食べる事はあまりお勧めできません。
美味しいかどうか自分で判断しにくい場合は、直売所や小売店の人に直接尋ねてみるのが一番良い方法です。また試食があれば味を確認できます。
美味しい規格外トマトの具体例を少し紹介します。左下はチャック果といって、実が肥大する時に筋状の傷が入る生理障害ですが、美味しい規格外トマトです。右の双子っぽい形のトマトは鬼花トマトといって、主に生理的な要因や環境によって奇形になったものですが、これも甘くて美味しい規格外トマトです。
これらのトマトは通常よりも割安で販売されています。
チャック果
鬼花トマト
私は都内のマルシェで規格外の野菜を販売していた経験があるのですが、お客様に丁寧に説明したり試食をすると購入して下さいました。規格外品でも美味しいと知ると、リピーターになって何度も買いに来る方もいました。この時、実際に食べてみることが重要なのだと痛感しました。
店頭に出ている規格外品は、見た目だけが悪く味はしっかりしているものが殆どだと思いますので、もし見つけたら手に取ってまず買って食べてみることをお勧めします。
7.規格外品は自然からのメッセージ
農産物は高温、豪雨、干ばつなど気候変動や病害虫の影響を大きく受けます。温暖化が進み、これまで通り「見た目もよく中身もよい完璧なもの」を作るのは難しくなってきています。そうなると、今後は「規格外品」が増えていき、規格外自体が「例外」ではなくなってくるでしょう。
規格外品は自然からのメッセージです。見た目だけで判断しない、100点満点だけでなく80点や70点の個性を楽しむことが、これからの農業や食の未来を支えていくことにもなります。売り場で形のよくないものや、傷がるものを見かけたら、少し立ち止まって手に取ってみてください。きっと新しい出会いや発見があると思います。
この記事の執筆者
有限会社コートヤード
代表取締役 新田美砂子
農産物プロデューサー・フードデザイナー
MBA(経営管理修士)、NPO法人野菜と文化のフォーラム理事
「今ある資源を活かす」「もったいないをなくす」「健康的に食べる」をモットーにして、様々な形で農と食を繋いでいる。商品・メニュー開発、地域食材・農産物のマーケティング、地域活性化などを多数手がけてきた。
日本野菜ソムリエ協会講師、城西国際大学では食の知識と体験学習を織り交ぜた「環境と食文化」の講義を5年間担当。近年は様々な現場に携わってきた経験を活かし、食や農に対する「なぜ?」をわかりやすくフラットに伝えている。

