「食の楽しみ」~有機食品は美味しい?~

「食の楽しみ」~有機食品はおいしい?~

 皆さんは有機食品を見かけることはあるでしょうか?あまり気にしたことがない、ほとんど見かけない、という人もいるでしょうし、もしも見たことがあっても買ったことはないという人が多いかもしれません。

 有機農産物は生産量全体の1%未満ですし、有機食品も食品市場全体からすると、まだまだその割合は少ないので、私達の身近な存在になっているとは言えません。

 有機食品があまり身近になっていない理由はいくつもありますが、大きな理由の一つが「有機食品」についてあまりきちんと理解されていない事があります。今回は、有機食品とはどのような食品なのかをお伝えするとともに、有機食品の購入方法やちょっと知っておくと役立つ情報をお伝えしていきます。

有機食品のイメージ

 そもそも有機食品とはどんな食品なのでしょうか。「農薬を使っていない食品」、「環境に優しい食品」「体に良い」など、有機という言葉を何となくイメージで捉えている方が多いのではないでしょうか。

 有機食品の公式な定義を要約すると、「有機食品とは、農林水産省が定める『有機JAS規格』に基づき、化学肥料や化学農薬を原則使わず、遺伝子組み換え作物も避けて栽培された農産物や、それを原料とした加工食品のこと」です。

 もしかしたら、ご自分の有機食品のイメージとちょっと違っているかもしれませんね。

有機食品を選ぶ理由 ~日本は欧州型?米国型?~

 有機食品のイメージとも関連するのですが、有機食品を選ぶ理由は何でしょうか。その理由は、国や地域によって少し違います。欧州では、環境や生態系などの保全のために有機食品を選ぶ人が主です。米国は欧州と異なり自分や家族の健康を守るために有機食品を選ぶ人が多いのです。

 日本の消費者の関心は「体にやさしい」「安心・安全」が中心で、環境保全も多少は意識をしているが、欧州ほど強く意識はしていません。つまり日本は欧州型と米国型の、中間的な考え方と言われています。

有機とオーガニックは何が違うの?

 「有機」と「オーガニック」という二つの言葉の違いはご存じでしょうか?

 基本的に 「有機」と「オーガニック」は同じ意味です。ただし、微妙なニュアンスや使われ方に違いがあります。有機という言葉は、法的・規格上の正式名称ですが、オーガニックというのは英語由来の言葉で、海外では一般的に「化学肥料や農薬を抑えて自然に近い方法で育てた食品」という意味合いがあります。何となくオーガニックという言葉の方が、カジュアルで響きが良い感じがしますね。

有機JASマーク

 農林水産省の「有機JAS制度」に基づき、第三者機関による検査・認証を受けた農産物・加工食品のみが、「有機」と表示できます。 認証を受けた製品には、必ず「有機JASマーク」 が付いています。

 しかし、実際の売り場を見ると、認証をとっていない有機農産物や有機食品(加工品)もかなりあります。例えば、「オーガニック野菜」「化学肥料は使っていません」「無農薬野菜」「農薬不使用」「自然栽培」といった表現などです。

 なぜ国の認証制度があるのに、そういう微妙な表現が多いのかちょっと不思議に思うかもしれません。その理由の一つには、有機JAS認証を取得するためのコストが高いことがあります。ある程度大規模で余裕のある生産者は認証費用を捻出しやすいのですが、小規模な所は実際に有機で作っていても、認証を取る体力・資金がないケースもあります。また、消費者に直接販売するのであれば、お互い顔が見えるので信頼関係があり、公的な認証は不必要という考え方もあります。

 「有機」という言葉が消費者の安全・安心志向に添うので、キャッチコピー的に「できるだけ自然に」「農薬が少なめ」という意味で、割と安易に使われがちになってしまっている状態とも捉えられます。ではもっときちんと整備すればいいと思うかもしれませんが、農水省や都道府県の監視だけでは、すべての販売者まで監視を行き届かせるのは不可能ですし、認証がなくても充分に流通・販売ができているのが現状です。  

特別栽培農産物

 「特別栽培」という表示がある米や野菜を店頭で見る事があると思いますが、何が特別なのかわかりにくいかもしれません。

 「特別栽培農産物」は、農産物が生産された地域で普通(慣行レベル)に作られたものと比較して、農薬や化学肥料の使用を5割以下に減らして栽培された農産物のことを言います。ただし、地域によって農薬や化学肥料の使用量の基準が異なります。有機農産物は化学農薬や化学肥料を「使っていない」、特別栽培農産物は「減らしている」という違いです。

有機食品はおいしい?

 有機農産物や有機食品(加工品)は、普通(慣行栽培)に作られたものよりもおいしいのでしょうか?

 有機は、農産物の栽培方法であって、おいしさの基準ではありません。有機とおいしさは比例するとはいえないのです。 農産物がおいしさに影響する要因は、土壌や気候風土、栽培技術、品種、収穫のタイミング、保存などいろいろあります。加工食品であれば、加工方法や味付けなどもおいしさに影響します。また、外から入ってくる情報などによる情報バイアスも影響することがあります。つまりおいしさに影響する要因は、有機かどうかよりも、他の様々な要因の影響が強いのです。

 ただ、私が長年関わってきて感じることは、有機農産物は化学農薬や化学肥料に依存しない分、植物がたくましく成長するために土作りをしっかりする必要があります。土作りは植物の土台ですから、それがしっかりしていると野菜本来の味がはっきりする傾向はあると思います。おいしさの感じ方は人それぞれですが、有機がおいしいと感じる人の中には、そのものらしい味、しっかりとした味わいを美味しいと感じているのかもしれません。

有機食品はなぜ高い?

 有機食品がなかなか普及しない理由の一つに「価格が高い」ことがあります。有機農産物の生産は労力や管理コストが高い、通常の栽培よりも収量が少なめになる、有機農産物全体の生産量・流通量がまだ少ないなどの理由から、価格が高くなってしまいます。また加工品も大量生産できないものが多いので、少量加工になりがちで加工賃は高くなり、販売価格も割高になってしまう傾向があります。

 現在、国(農林水産省)は環境に優しい農業を推進するために「有機農業」を積極的に支援するようになっています。また、生産技術も向上してきているので、もう少し有機農産物の生産が増えてくれば、普通(慣行栽培)のものと価格差が減少していく可能性もあります。

有機栽培柑橘畑

有機農産物・有機食品はどこで買えばいいの?

 有機農産物・有機食品を、どこで買えばいいのかわからないという方もいると思います。

 最近はスーパーの一角にオーガニックコーナーを設けているところがあります。また首都圏では、オーガニック食品を中心に取り扱う専門店が、駅ビルや大型商業施設などの中に入っていて店舗数は増えています。これらの店舗は、有機食品だけを扱っているのではなく、独自の選定基準によって商品を選んで提供しています。また、都内近郊でしたら各地で週末などにマルシェが開催されています。そこには有機農家が直接出店していることもよくあります。また、ECサイトなどでも購入しやすくなってきています。少しずつではありますが購入しやすい場が増えているのです。

手に入りやすい有機農産物

 日本は湿潤な気候ですので、有機栽培の病害虫対策が難しく、栽培にも手間がかかりますし、一定収穫量を確保するのも容易ではありません。基本的に作りにくいものを生産しても生産者は食べていけません。ですから、害虫に強い、病害虫の管理が比較的しやすい、農薬の依存度の高くないものを生産するので、そういう品目が手に入りやすくなります。

 年間を通じて割と安定供給されているのが、コマツナやミニミックスリーフなどの葉物野菜です。またニンジンや長ネギやダイコンも一年中ではありませんが、有機のものが手に入りやすい品目です。また、有機大豆や有機小麦などは海外産ならばいつも入手しやすいと思います。逆に有機栽培が難しいのが、害虫が多いキャベツやレタスなどの結球野菜、病害虫管理が難しいナスやトマト、農薬の依存度が高い果樹類などです。

 ただ少しずつ有機栽培技術が向上してきているので、これから有機農産物の品目と量が少しずつ増えていくのを期待したいものです。

 

人参と柿のラぺ(マリネ)

オーガニックコスメ

 オーガニック化粧品やシャンプーなどは厚生労働省の管轄です。薬機法による安全性や表示の規制はあるものの、農産物とは異なり「オーガニック」や「ナチュラル」といった表示の法的・公的な基準の定義はありません。

 国内外の民間の認証団体が独自の基準を策定して基準化していますが、その認証の利用率や認知度は高くないのが現状です。ですから、メーカーの自主的な表示になっていて、オーガニック成分を一部使っていれば「オーガニック化粧品」と称している例も多くあります。

有機農産物・有機食品との付き合い方

有機食品を購入するのは富裕層というイメージがあるかもしれませんが、最近は健康志向の子育て世代や、共働き家庭、20代なども購入層になってきています。農林水産省の有機食品市場の消費者アンケート調査の結果をみても、毎日は買わないけれど、時々購入するという人達の割合が増えてきています。少しずつ興味関心が高まっているのかもしれません。

 海外では、毎日オーガニックフードを食べるのはなかなか難しいと考えている人達が、週1日だけ「オーガニックデー」などを設定して、その日は有機農産物や有機食品を食べる日にしています。

 食べ物を選ぶ理由は人それぞれだと思いますが、地球環境のこと、健康のことを考えて、無理なく1品でも有機食品を取り入れてみてはいかがでしょうか。

 

この記事の執筆者

有限会社コートヤード
代表取締役
新田美砂子

農産物プロデューサー・フードデザイナー
MBA(経営管理修士)、NPO法人野菜と文化のフォーラム理事

「今ある資源を活かす」「もったいないをなくす」「健康的に食べる」をモットーにして、様々な形で農と食を繋いでいる。商品・メニュー開発、地域食材・農産物のマーケティング、地域活性化などを多数手がけてきた。
日本野菜ソムリエ協会講師、城西国際大学では食の知識と体験学習を織り交ぜた「環境と食文化」の講義を5年間担当。近年は様々な現場に携わってきた経験を活かし、食や農に対する「なぜ?」をわかりやすくフラットに伝えている。