介護事業所の離職率は高い?

介護事業所の離職率は高い?

「介護事業所は離職率が高く、人材の流出を防げない」という言説をいまだに見聞きしますが、本当にそうなのでしょうか?

2025年7月28日、介護労働安定センターが「令和6年度介護労働実態調査」を公表しました1)。本稿では同調査(事業所調査)の結果をもとに、介護事業所の離職率の傾向について見ていきます。

*参考:介護労働安定センターウェブサイトhttp://www.kaigo-center.or.jp/report/

1.離職率は改善傾向で平均12.4%、全産業よりも低い水準に

介護事業所の離職率は近年、緩やかな低下が続いており、令和6年度調査では、「2職種計(訪問介護員、介護職員)」の離職率は12.4%(前年度13.1%)でした(図1)。

図1 2職種計の採用率と離職率
※介護労働安定センター(2025)「介護労働実態調査(事業所調査)」より転載。

介護事業所の離職率は、平成19年度(21.6%)をピークに概ね低下傾向にあり、今回もその流れを更新しました。厚生労働省「令和6年雇用動向調査」によると、全産業の離職率は14.2%(前年度15.4%)であり2)、介護職の離職率はこれを下回る水準です。

他産業に目を向けると、パートタイム労働者の比率が高い「生活関連サービス業・娯楽業」は19.0%(前年度28.1%)、「宿泊業・飲食サービス業」は25.0%(前年度26.6%)と高い水準にあり、介護分野の定着状況が相対的に安定していることがわかります(図2)。

図2 離職率(他産業との比較)

※介護労働安定センター(2025)「介護労働実態調査(事業所調査)」
および厚生労働省(2025)「雇用動向調査」をもとに筆者作成。

こうした結果から、介護業界全体で労働環境の整備が進み、一定の定着効果が表れていることがうかがえます。ただし、これはあくまで全体の平均値です。次節では、もう少し細かな視点でデータを確認していきます。

2. 採用率は14.3%、入職超過率は1.9ポイントに縮小

離職率は改善傾向にある一方で、介護の労働力不足は依然として厳しい状況です。例えば、介護関連職種の有効求人倍率は令和6年平均で4.08倍(前年4.07倍)と高止まりし、全産業の1.14倍(前年1.17倍)を大きく上回ります3)需要に対して供給が追いついていない構図が続いています。

また、介護労働安定センターの事業所調査1)では、人材不足を感じる事業所の割合は、以下のとおり依然として高い水準にあり、現場の人材不足感はむしろ強まっていることがわかります。

  • 訪問介護員:4%(前年度81.4%、+2.0ポイント)
  • 介護職員(訪問介護員以外):1%(前年度66.0%、+3.1ポイント)

あらためて図1の採用率を見ると14.3%(前年度16.9%)となっており、離職率12.4%との差(入職超過率=採用率―離職率)は1.9ポイント。差し引きでは増員(入職超過)ですが、その幅は前年度の入職超過率3.8ポイントから縮小しています。
これは、労働需給がひっ迫し補充が難しくなっていることを意味します。そのため、少人数の退職でも人員不足に直結しやすく、欠員による現場負担が増えやすい状況は続いていると考えられます。特に直近では採用率が低下に転じており、今後は人材の定着を一層推進すると同時に、採用力を強化するという両輪での対応が求められます。

3.離職率は二極化傾向:「低い事業所」が過半数、一方で「高い事業所」も4分の1

全体の平均値だけでなく、事業所別の離職率分布を見ると、10%未満が53.6%と過半数を占める一方で、20%超も24.1%と約4分の1を占めています(図3)。

図3 2職種計の離職率の分布
※介護労働安定センター(2025)「介護労働実態調査(事業所調査)」より転載

つまり、「離職率が低水準の事業所が多いが、高水準の事業所も一定数ある」という二極化傾向が確認できます。この傾向は、同調査の開始以降、長らく継続しています。ちなみに、採用率の分布(10%未満が50.4%)と比較すると、離職率のほうがより低位に集中しており、「多くの事業所が人材の定着には成功しているものの、新規採用には苦戦している」という第2節の状況を裏付けているとも言えそうです。

このように、平均値だけでは捉えきれない「事業所ごとの差」が存在します。次節では、事業所の属性によって、この差にどのような傾向が見られるのかを詳しく見ていきます。

4.新規開設事業所の離職率が高め:安定稼働までの“立ち上げ期”支援が鍵

ここでは離職率の違いを、事業所属性・職種別に確認します(表1)。

表1 事業所属性、職種別にみた離職率(%)

※介護労働安定センター(2025)「介護労働実態調査(事業所調査)」をもとに筆者作成。対象をわかりやすくするため、訪問介護員は訪問系の数値のみ、介護職員は施設系・居住系のみを記載。離職率が全体より5ポイント高いセルを網掛け。

サービス系列、法人規模、事業所規模といった属性では、大きな差は見られません。一方で、事業開始からの経過年数に着目すると、開設1~4年未満の事業所において、全体の離職率を大きく上回っていることがわかります。

新規事業所は安定稼働に至るまでに時間を要し、運用面の試行錯誤、役割分担の不明瞭さ、教育体制の未整備といった課題が、離職の生じやすさに影響している可能性が考えられます。

この点を踏まえると、新規開設事業所への立ち上げ支援を厚くすることは、離職率の改善に有効な打ち手になりえます。例えば、以下のようなことが挙げられます。

  • 業務支援:法人本部や安定稼働している他事業所からの応援配置、巡回スーパーバイズ、事例共有やFAQの整備など
  • 人材定着支援:初期の学習時間を織り込んだ人員配置、短サイクルでのフォロー面談、相談窓口の常設、管理者フォローなど

要するに、立ち上げ期を「放置しない」運営が鍵と言えるでしょう。これは、新規事業所の課題であると同時に、業界全体の離職率をさらに改善させるための重要なヒントを示唆しています。

5.若手人材の定着が最重要課題:初期のつまずきを防ぐ仕組みを

次に年齢階層別の離職率も確認しておきましょう(表2)。

表2 訪問介護員・介護職員の年齢階層別採用率と離職率

※介護労働安定センター(2025)「介護労働実態調査(事業所調査)」より転載。表の「増減率」は「採用率-離職率=入職超過」を示している。

表2を見ると、29歳以下の離職率は18.7%(2職種計)で、全体平均12.4%より約6.3ポイント高い水準です。一方で採用率は31.4%と全年代で最も高く、結果として入職超過を示す「増減率」も12.7ポイントと突出しています。

このデータは、「多くの若手が入職してくれる魅力がある一方で、残念ながら定着には至っていない」という、非常にもったいない実態を示唆しています。

在職者の高齢化が進むなか、若手人材の確保と定着は事業継続に直結する重要課題です。せっかく入職した若手を戦力化するには、初期段階の“つまずき”を減らす仕組み作りが要になります。近年の若者は、キャリアの成長実感やワーク・ライフ・バランスを重視する傾向があり、以下のような施策が有効と考えられます。

  • オンボーディングの標準化:入職~3か月・6か月・12か月を節目とした育成計画とフォロー面談で、成長を可視化する
  • メンター(相談役)配置:OJT担当とは別に、年齢の近い先輩などを相談役に任命し、精神面をサポートする
  • 資格取得支援:初任者研修/実務者研修の費用補助や学習支援などで、専門職としてのキャリア形成を後押しする
  • ワーク・ライフ・バランス支援:短時間正社員制度や柔軟なシフト調整、希望休の取りやすさ向上などで、プライベートとの両立を支援する
  • 離職予兆の早期検知:ストレスチェックや従業員サーベイなどを活用し、個々の職員が抱える課題を早期に把握し、対策を講じる

いずれにしても、若手人材の就業ニーズやキャリア観に真摯に向き合い、それを仕組みで支える運用を両輪で回すことが、離職防止に直結すると言えるでしょう。

6.持続可能な介護サービス提供のために

本稿で分析した内容をまとめると、以下のようになります。

  • 労働需給のひっ迫:有効求人倍率は高止まりし、入職超過も鈍化している
  • 現場の人手不足感の高まり:その結果、全体の離職率平均は改善していても、事業所の人材不足感はむしろ高まっている
  • 支援すべき対象:特に安定稼働前の新規事業所や、キャリア形成期の若手人材の定着が課題となっている

このように、業界全体としての離職率改善という「前進」と、採用難という「逆風」が同時に存在しています。需給がひっ迫する状況下では、「一人」が辞めることのインパクトはかなり大きくなっています。だからこそ、自法人においても、どこで離職が起きているか、なぜ辞めていくのかなど、課題の構造的な把握と迅速な打ち手が不可欠です。

持続可能な介護サービスを提供していく上で、忘れてはならないのは、「介護は人」という原点です。職員が自身のキャリアに希望を持ち、やりがいを感じられる職場こそが、利用者にとっても安心できる場所となるはずのではないでしょうか。

職員一人ひとりの声に寄り添い、働きやすい職場環境とキャリアを支援する人材投資を惜しまないこと。その積み重ねが、質の高いサービス、ひいては業界全体の健全な成長を促すことにもつながるでしょう。

(注)

1) 介護労働安定センター(2025)『令和6年介護労働実態調査(事業所調査)』.
   同調査のサンプル数は事業所9.044(回収率52.9%)、労働者21,325(回収率41.6%)

2) 厚生労働省(2025)『令和6年雇用動向調査』.

3) 厚生労働省(2025)「介護人材確保の現状について」第2回社会保障審議会福祉部会福祉人材確保専門委員会参考資料(令和7年6月9日)

この記事の執筆者

茨城キリスト教大学
経営学部准教授

菅野 雅子

茨城キリスト教大学経営学部准教授。博士(政策学)、MBA(経営管理修士)。人事労務系シンクタンク等を経て現職。公益財団法人介護労働安定センター「介護労働実態調査検討委員会」委員。
著書に『福祉サービスの組織と経営』(共著)中央法規出版(2021年)、『介護人材マネジメントの理論と実践』(単著)法政大学出版局(2020年)など。

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