2月は「認知症予防月間」
気づくことから始まる認知症予防- MCI(軽度認知障害)を知る
「最近、同じ話を何度もするようになった」「約束を忘れることが増えた」――こうした変化に最初に気づくのは、本人よりも家族であることが多いものです。
その背景にある可能性の一つが、MCI(軽度認知障害)です。
MCI(軽度認知障害)は、「認知症の始まり」と誤解されがちですが、必ずしも認知症に進行するわけではありません。
適切な医療的評価と生活改善により、状態が改善したり、長期間維持されたりするケースも少なくありません。
MCI(軽度認知障害)とは?
MCI(軽度認知障害)とは、年齢相応を超えた記憶力や注意力、判断力などの低下がみられるものの、日常生活はほぼ自立して行えており、認知症の診断基準には該当しない状態を指します。
本人や家族が「以前より物忘れが増えた」「考えるのに時間がかかるようになった」といった変化に気づくことが多い一方で、買い物や金銭管理、身の回りのことは自分で行えるのが特徴です。
MCIは、正常な加齢と認知症の中間に位置づけられる状態で、必ずしも認知症へ進行するわけではありません。適切な医療的評価を受け、生活習慣の改善や社会参加、運動、持病の管理などを行うことで、状態が改善したり、進行を防いだりできる可能性があります。そのため、MCIは「早期に気づき、対応することが重要な段階」とされています。
一方、認知症との違いは、認知症では記憶、判断、理解、実行機能など複数の認知機能が持続的に低下し、その結果として日常生活に明らかな支障が生じている状態です。
金銭管理ができなくなる、服薬ミスが増える、予定や出来事を繰り返し忘れるなど、生活面での問題が顕在化します。また、本人の自覚は乏しくなり、家族や周囲の支援が不可欠となる点も医療的判断の重要な要素です。
医師は、認知機能検査の点数だけで診断を決めることはせず、本人および家族からの聞き取り、日常生活能力の評価、画像検査や血液検査の結果を総合して判断します。
たとえ検査で軽度の低下が認められても生活が保たれていればMCIと判断され、逆に検査結果が境界域であっても生活に支障があれば認知症と診断されることがあります。
このように、医療的判断における最大の違いは、認知機能低下が「生活障害」に至っているかどうかです。MCIは認知症の前段階として早期介入や生活改善によって改善や維持が期待できる状態であり、認知症は病気として継続的な医療と生活支援が必要な状態と位置づけられています。
正常な加齢・MCI・認知症の違い
| 項目 | 正常な加齢 | MCI | 認知症 |
| 物忘れ | 体験の一部を忘れる | 体験自体を忘れることが増加 | 体験自体を忘れ繰り返す |
| ヒント | 思い出せる | 思い出せないことが多い | ヒントでも難しい |
| 日常生活 | 問題なし | ほぼ自立 | 支障が出る |
| 判断力 | 保たれる | やや低下 | 明らかに低下 |
| 自覚 | あり | あることが多い | 乏しくなる |
💡 「自分は最近おかしい」と自覚があるのはMCIの特徴です。
MCIの基本的な分類の考え方
MCIは次の2つの視点で分類されます。
- 記憶障害が主かどうか
- 障害とされている認知機能が1つか、複数か
この組み合わせにより、主に4タイプに分けられます。
1. 記憶障害型MCI(amnestic MCI)
特徴
- 記憶力の低下が中心
- 特に最近の出来事を覚えにくい
- 約束や会話内容を忘れやすい
生活面
- 日常生活はほぼ自立
- メモや工夫で補えることが多い
医学的背景
- 脳の海馬を中心とした機能低下
- アルツハイマー病の初期変化であることが多い
進行リスク
認知症(特にアルツハイマー型)への進行リスクが高め
2. 非記憶障害型MCI(non-amnestic MCI)
特徴
記憶以外の機能が主に低下
- 注意力
- 判断力
- 実行機能
- 言語
- 視空間認知
具体例
段取りが立てられない、作業に時間がかかる、会話の理解が遅れる
医学的背景
- 脳血管障害、レビー小体病、前頭側頭葉変性症など
進行リスク
- 血管性認知症、レビー小体型認知症などに進行する可能性
3. 単一領域型MCI(single-domain MCI)
特徴
- 低下している認知機能が1つだけ
- 記憶のみ、注意力のみ など
経過
- 進行がゆっくりであることが多い
- 改善・維持されるケースも多い
- 早期発見段階であることが多い
生活習慣の見直しなどで状況の保持または改善の見込みあり。
4. 多領域型MCI(multiple-domain MCI)
特徴
- 複数の認知機能が低下
- 記憶+判断力
- 注意力+実行機能
など
生活面
- ミスや戸惑いが増える
- 認知症へ進行するリスクが高い
進行リスク
認知症へ進行するリスクが高い
5. 4つのタイプの組み合わせ
分類
特徴
主な関連疾患
記憶障害型・単一領域
記憶のみ低下
アルツハイマー初期
記憶障害型・多領域
記憶+他機能低下
アルツハイマー進行前
非記憶障害型・単一領域
判断力など1機能低下
血管性など
非記憶障害型・多領域
複数機能低下
レビー小体・血管性
6. なぜタイプ分類が重要なのか
- 将来の認知症のタイプ予測がつけられる
- 治療・介入方針の決定しやすい
- 生活指導内容の違い
- 家族への説明が具体的に行うことが出来る
👉 MCI=一律ではなく、背景が異なる状態の集合体です。
MCI(軽度認知障害)が認知症に進行するかどうか?
MCI(軽度認知障害)が必ず認知症に進行するわけではありません。
これはとても重要なポイントです。以下に、医学的に分かっている事実を整理して説明します。結論から言えばMCIは「認知症になる人もいれば、ならない人もいる状態」です。
進行・維持・改善の3つの経過があります。
1. 認知症へ進行する割合
医学研究から、次のような傾向が分かっています。
- 年間 約10~15%が認知症へ進行
- 数年単位で見ると
- 約30~40%:認知症へ進行
- 約20~30%:正常に近い状態へ改善
- 残り:MCIのまま安定
👉 つまり、半数以上はすぐに認知症にはなりません。
2. なぜ進行する人としない人がいるのか
進行には、MCIのタイプ・身体状態・生活習慣が深く関係します。
MCI(軽度認知障害)は、「この先どうなるのだろう」と不安になりやすい状態ですが、すべての人が認知症に進むわけではありません。MCIには、進みやすい場合と、進みにくく改善が期待できる場合があります。
まず、認知症に進みやすいと考えられているのは、物忘れが目立つタイプのMCIです。特に、最近の出来事を覚えにくい状態が続いていたり、記憶をつかさどる脳の部分に変化がみられたりする場合は、注意深い経過観察が必要になります。
また、物忘れだけでなく、判断力や段取りを考える力など、いくつかの力が同時に弱っている場合も、進行のリスクがやや高くなることがあります。
体の病気や体調も、MCIの経過に影響します。糖尿病や高血圧、脂質の異常といった生活習慣病がある場合や、脳の血管に小さなトラブルがある場合、睡眠の質が悪い状態が続いている場合、耳が聞こえにくい状態を放置している場合などは、脳に負担がかかりやすくなります。
さらに、気分の落ち込み、外出や人付き合いが減ること、体を動かす機会が少ないこと、食事量やたんぱく質が不足していることも、認知機能の低下につながりやすいとされています。
一方で、進みにくく、良くなる可能性があるMCIもあります。物忘れよりも、集中しにくさや判断の遅さが目立つ場合には、原因を整えることで状態が改善することがあります。
また、うつ状態や睡眠不足、脱水や栄養不足、薬の影響などが原因の場合は、治療や生活の見直しによって認知機能が回復することもあります。
早い段階から、無理のない運動を続け、生活のリズムを整え、人とのつながりを保ち、持病をきちんと治療することが、良い経過につながります。
医療の立場では、MCIは「今後の変化を見ていくための診断」と考えられています。一度MCIと診断されたからといって、将来が決まってしまうわけではありません。そのため、半年から1年ごとに様子を確認し、少しずつ変化がないかを見ていくことが大切です。大事なのは、「できなくなったかどうか」だけでなく、「どのくらいの速さで変化しているか」を知ることです。
MCIは、早く気づき、支えながら向き合うことで、良い状態を保てる可能性がある段階です。本人もご家族も、必要以上に悲観せず、できることを一つずつ続けていくことが大切です。
MCI 進行リスクチェックリスト
※あてはまる項目に ✔ をつけてください
1. 物忘れ・考える力について
- ☐ 最近の出来事を思い出せないことが増えた
- ☐ 同じ話や質問を繰り返すことがある
- ☐ メモをしても思い出せないことがある
- ☐ 判断や段取りに時間がかかるようになった
2. 日常生活での変化
- ☐ 買い物で同じ物を何度も買ってしまう
- ☐ お金や支払いの管理が不安になってきた
- ☐ 薬の飲み忘れ・飲み間違いがある
- ☐ 新しいことを避けるようになった
3. 体の病気・体調
- ☐ 糖尿病がある、または血糖値が高め
- ☐ 高血圧・脂質異常症がある
- ☐ 脳梗塞や「脳の血管の変化」を指摘されたことがある
- ☐ いびきがひどい/眠っても疲れが取れない
- ☐ 耳が聞こえにくいが、そのままにしている
4. 気持ち・生活習慣
- ☐ 気分が落ち込みやすい、やる気が出ない
- ☐ 外出や人との会話が減っている
- ☐ あまり体を動かしていない
- ☐ 食事量が少ない、たんぱく質(肉・魚・卵など)が不足しがち
| 分類 | 特徴 |
主な関連疾患 |
| 記憶障害型・単一領域 | 記憶のみ低下 |
アルツハイマー初期 |
| 記憶障害型・多領域 | 記憶+他機能低下 |
アルツハイマー進行前 |
| 非記憶障害型・単一領域 | 判断力など1機能低下 |
血管性など |
| 非記憶障害型・多領域 | 複数機能低下 |
レビー小体・血管性 |
6. なぜタイプ分類が重要なのか
- 将来の認知症のタイプ予測がつけられる
- 治療・介入方針の決定しやすい
- 生活指導内容の違い
- 家族への説明が具体的に行うことが出来る
👉 MCI=一律ではなく、背景が異なる状態の集合体です。
MCI(軽度認知障害)が認知症に進行するかどうか?
MCI(軽度認知障害)が必ず認知症に進行するわけではありません。
これはとても重要なポイントです。以下に、医学的に分かっている事実を整理して説明します。結論から言えばMCIは「認知症になる人もいれば、ならない人もいる状態」です。
進行・維持・改善の3つの経過があります。
1. 認知症へ進行する割合
医学研究から、次のような傾向が分かっています。
- 年間 約10~15%が認知症へ進行
- 数年単位で見ると
- 約30~40%:認知症へ進行
- 約20~30%:正常に近い状態へ改善
- 残り:MCIのまま安定
👉 つまり、半数以上はすぐに認知症にはなりません。
2. なぜ進行する人としない人がいるのか
進行には、MCIのタイプ・身体状態・生活習慣が深く関係します。
MCI(軽度認知障害)は、「この先どうなるのだろう」と不安になりやすい状態ですが、すべての人が認知症に進むわけではありません。MCIには、進みやすい場合と、進みにくく改善が期待できる場合があります。
まず、認知症に進みやすいと考えられているのは、物忘れが目立つタイプのMCIです。特に、最近の出来事を覚えにくい状態が続いていたり、記憶をつかさどる脳の部分に変化がみられたりする場合は、注意深い経過観察が必要になります。
また、物忘れだけでなく、判断力や段取りを考える力など、いくつかの力が同時に弱っている場合も、進行のリスクがやや高くなることがあります。
体の病気や体調も、MCIの経過に影響します。糖尿病や高血圧、脂質の異常といった生活習慣病がある場合や、脳の血管に小さなトラブルがある場合、睡眠の質が悪い状態が続いている場合、耳が聞こえにくい状態を放置している場合などは、脳に負担がかかりやすくなります。
さらに、気分の落ち込み、外出や人付き合いが減ること、体を動かす機会が少ないこと、食事量やたんぱく質が不足していることも、認知機能の低下につながりやすいとされています。
一方で、進みにくく、良くなる可能性があるMCIもあります。物忘れよりも、集中しにくさや判断の遅さが目立つ場合には、原因を整えることで状態が改善することがあります。
また、うつ状態や睡眠不足、脱水や栄養不足、薬の影響などが原因の場合は、治療や生活の見直しによって認知機能が回復することもあります。
早い段階から、無理のない運動を続け、生活のリズムを整え、人とのつながりを保ち、持病をきちんと治療することが、良い経過につながります。
医療の立場では、MCIは「今後の変化を見ていくための診断」と考えられています。一度MCIと診断されたからといって、将来が決まってしまうわけではありません。そのため、半年から1年ごとに様子を確認し、少しずつ変化がないかを見ていくことが大切です。大事なのは、「できなくなったかどうか」だけでなく、「どのくらいの速さで変化しているか」を知ることです。
MCIは、早く気づき、支えながら向き合うことで、良い状態を保てる可能性がある段階です。本人もご家族も、必要以上に悲観せず、できることを一つずつ続けていくことが大切です。
MCI 進行リスクチェックリスト
※あてはまる項目に ✔ をつけてください
1. 物忘れ・考える力について
- ☐ 最近の出来事を思い出せないことが増えた
- ☐ 同じ話や質問を繰り返すことがある
- ☐ メモをしても思い出せないことがある
- ☐ 判断や段取りに時間がかかるようになった
2. 日常生活での変化
- ☐ 買い物で同じ物を何度も買ってしまう
- ☐ お金や支払いの管理が不安になってきた
- ☐ 薬の飲み忘れ・飲み間違いがある
- ☐ 新しいことを避けるようになった
3. 体の病気・体調
- ☐ 糖尿病がある、または血糖値が高め
- ☐ 高血圧・脂質異常症がある
- ☐ 脳梗塞や「脳の血管の変化」を指摘されたことがある
- ☐ いびきがひどい/眠っても疲れが取れない
- ☐ 耳が聞こえにくいが、そのままにしている
4. 気持ち・生活習慣
- ☐ 気分が落ち込みやすい、やる気が出ない
- ☐ 外出や人との会話が減っている
- ☐ あまり体を動かしていない
- ☐ 食事量が少ない、たんぱく質(肉・魚・卵など)が不足しがち
チェック結果の目安
✔ 0~3個
→ 今のところ大きな心配は少ない状態
生活習慣を続けながら様子を見ましょう。
✔ 4~7個
→ 進行リスクがやや高め
生活の見直しや、医療機関への相談をおすすめします。
✔ 8個以上
→ 進行リスクが高い可能性
早めに医師へ相談し、定期的なフォローを受けましょう。
【大切なポイント】
このチェックは診断ではありません
当てはまる項目が多くても、改善できることはたくさんあります
早めに気づき、対応することが一番の予防です。
MCI(軽度認知障害)は、決して「認知症のはじまり」の状態ではありません。
気づくことで予防が出来る状態です。過ごし方によって、これからもできることがたくさんある段階です。不安を一人で抱え込まず、医療や周囲の力を借りながら、できることを少しずつ続けていきましょう。この機会をきっかけに、ご自身やご家族の“最近の変化”に、少し目を向けてみませんか。
この記事は介護福祉士に監修されています
介護福祉士
青木 いづみ
母親の認知症をきっかけに、サービス業から介護の道へ転身。サービス業で培ったコミュニケーション力と、介護職員や施設長としての知識や経験を活かし、入居相談員として家族が抱える悩みに寄り添っています。介護現場の視点、利用者目線、専門知識を基にした丁寧な相談を行っています。

