NISAの概要と、つみたて投資・成長投資枠の違い

NISAの概要と、つみたて投資・成長投資枠の違い

NISAの概要と、つみたて投資・成長投資枠の違い

来年の制度改善や“シニアNISA案”にも触れながらわかりやすく解説します。

日本の資産形成の仕組みとして、ここ数年で一気に定着してきたのが「NISA(少額投資非課税制度)」です。投資で得た利益に税金がかからない——この仕組みは、家計にとって大きな後押しになります。特に2024年からは制度が全面的に刷新され、「新しいNISA」として生涯投資枠が大幅に広がり、誰もが長期で資産を育てやすい環境になりました。

新しいNISAでは大きな2つの変化があります。

1つは 非課税保有期間が無期限になったこと、もう1つは 生涯投資枠が1,800万円に拡大されたこと

これにより、時間を味方につけながらじっくり増やす“つみたて投資”も、ある程度リスクを取りながら成長を狙う“株式投資”も、どちらも自分のペースで選べる柔軟さが生まれました。また最近では、政府が高齢世代の投資参加を促す方向性を打ち出したこともあり、いわゆる「シニアNISA」という呼び方で注目されている改善案もあります。これは正式名称として確定しているわけではありませんが、「高齢でも積極的に資産運用に参加しやすくする」流れが強まっている、という意味で非常に重要です。

ここからは、NISAの枠組みをより深く理解するために、まず“全体像”から整理し、そのうえでつみたて投資枠と成長投資枠の違いを丁寧に説明していきます

NISAとは何か——まず押さえておきたい基本の仕組み

大前提として、投資をすると、通常は「利益に20.315%の税金」がかかります。株を売って利益が出ても、投資信託の分配金を受け取っても、税金はきっちり引かれるわけです。
しかしNISAを使えば、この利益にかかる税金がまるごと非課税になります。これが家庭の資産形成を強く後押しする理由です。

特に非課税の効果は長期になるほど顕著です。複利で増えた部分にも課税されないため、10年、20年と時間を重ねるほど「増え方に差」がついていきます。この“時間を味方にする投資”を、より多くの人が取り組めるようにと導入されたのがNISA制度であり、改正を重ねながら今の形に進化してきました。

NISAの2つの枠

新しいNISAには、主に2つの枠があります。

①つみたて投資枠(年間120万円まで)

長期・積立・分散に適した、国が認めた投資信託だけを扱う枠です。
対象商品は金融庁が厳選しており、手数料の高さや極端なリスクが排除されているのが特徴です。
時間をかけてコツコツ育てるのが前提なので、初心者やご高齢の方でも安心感のある仕組みといえます。

②成長投資枠(年間240万円まで)

こちらはより自由度が高く、上場株式・ETF・REIT・投資信託など幅広い商品を扱えます。個別株で企業の成長を狙う投資も、低コストETFで分散投資する方法も選べます。つみたて枠よりリスクはあるものの、その分リターンの可能性も広がります。

年間で使えるのは合計最大360万円、生涯で使えるのは1,800万円まで
使い方の自由度が広く、自分のライフプランにあわせて「つみたてを中心にするのか」「株式で成長を狙うのか」を組み合わせることができます

つみたて投資枠の特徴——“時間が味方になる”最も堅実な投資

つみたて投資枠の魅力は、投資の失敗要因になりがちな“感情の揺れ”を抑えられる点にあります。毎月一定額を淡々と積み立てるドルコスト平均法を用いるため、価格が高いときには少なく買い、安いときには多く買い、自動的に平均購入単価がならされます。

市場が大きく上下しても慌てずに続けられる“仕組みとしての安全性”が高く、資産形成の王道と言ってよい方法です。

また、採用できる商品の質が高いことも重要です。
金融庁の基準は厳しく、手数料が不当に高いファンドや短期売買向けファンドは除外されています。結果として、長期投資に向いた「低コスト・広い分散」が徹底されたものだけが残ります。

特にこれから老後資金を少しずつ育てたい方、安定感を重視して着実に増やしたい方には、この枠が最も相性が良いといえます。

成長投資枠の特徴——自由度は高いが、選び方にコツが必要

成長投資枠は、株式投資を通じて企業の成長を享受したり、ETFでテーマ投資をしたりと、多様な戦略を立てられるのが魅力です。一方で、価格変動が大きい商品も含まれるため、つみたて枠よりはリスクが高くなります。

ただし、リスクの高さは“選択の幅”と表裏一体でもあります。
適切に分散を効かせれば、長期では大きな資産成長に結び付く可能性も十分あります。投資経験がある程度ある方や、中長期で増やしたい方には使いやすい枠といえるでしょう。
また、ETFなどを活用すれば「世界株式に1本で分散」など、シンプルで負担の少ない運用もできます。

来年の改訂で注目される“シニアNISA(方向性案)”とは

政府の税制調査会では、高齢世代の資産活用を促すための制度改善が検討されており、金融界では非公式に「シニアNISA」と呼ばれています。
これは高齢者専用の新しいNISAではなく 既存のNISAを高齢者も使いやすくするための改善案 が中心です。

現時点で検討されているポイントとしては、

  • 高齢世代が積立投資しやすい仕組みの整備
  • 年齢に関わらず投資教育・相談体制を強化
  • 相続や贈与とNISAの連携をスムーズにする方向

といった内容が取り上げられています。

高齢者がNISAを使いにくい背景には「投資は若い人がするもの」という先入観がありますが、実際には、無期限化された今のNISAは年齢に関係なく活用できる制度です。
こうした誤解を取り除き、“シニアこそ運用の選択肢を持つべき”という考えを広めるのが、今回の改善の意図といえます。

まとめ——NISAは“人生の自由度を高めるツール”

つみたて投資枠は「堅実に育てる」、成長投資枠は「可能性を広げる」。
この2つをどう組み合わせるかで、NISAの使い方は大きく変わります。

来年以降の改善によって、高齢世代も含めて幅広い人が資産運用に参加しやすくなる流れが続くでしょう。
いまは「投資=特別な人がやるもの」という時代ではありません。
人生100年時代において、NISAは家計を守り、安心を積み重ねていくための“味方”としてますます重要な存在になっていきます。

この記事の執筆者

独立系ファイナンシャルアドバイザー( IFA)
法政大学大学院( MBA)

田中奈穂美

青山学院大学経営学部卒。IFA(独立系金融アドバイザー)、法政大学大学院MBA、宅地建物取引士、証券外務員1種、銀行融資診断士、相続診断士、投資診断士、ファイナンシャルプランニング技能士 2級。 年間100件を超える法人と個人の財務相談を受ける。 個人は年金・資産運用・ライフプランなどのマネーセミナーを、マネーキャリア、 マネーフォワードで行う。法人は、コスト削減、安定経営に役立つ処々の情報と確定拠出年金をご提供する。 社会保険料削減・節税・生命保険内部留保・投資信託・投資用マンションなど、 幅広い金融知識を持ち、士業チームとともに、クライアントの考え方に寄り添っ たコンサルティングに努める。 プライベートでは2児の母として、中学受験、大学受験を経験。両親の介護と相続、配偶者相続も経験。

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