もっと介護を考えよう 「介護あるあるお悩み編・介護や施設入居の考えどき」 介護を考え始めるきっかけ

もっと介護を考えよう

「介護あるある家族のお悩み編・介護や施設入居の考え時」

介護を考え始めるきっかけ

介護を意識し始めるタイミングは、ご家族によってさまざまです。その中でも多くの人に共通しているのは、親の身体的・精神的な変化に気づいた時です。たとえば、病気や怪我で入院した後、退院しても以前のように体が動かない、認知機能が落ちたように感じることがあります。どのきっかけも「親に安心して過ごしてほしい」という気持ちから生まれる大切な一歩です。

介護を始めるのは、介護認定を受けた段階で利用を始める方が多いかと思います。介護を続けているうちに、次に考えることが、「このまま在宅で介護を続けていくか?」それとも、「介護施設に入居を検討するか」ということかと思います。

「介護施設に入居を考えるきっかけ」というのはどのようなところなのでしょうか??

介護施設入居を検討するきっかけ

1.自宅での生活が難しくなったと感じた時

  • ご本人の転倒が増えた。また、住いの家で生活することに支障が出てきた
  • 調理・入浴・トイレなどの基本的な生活動作が難しくなり、家族が本人の独居に不安や限界を感じてきた
  • 認知症などによる徘徊や火の不始末など、安全面の不安が大きくなった

ご家族が「もう自宅では危ないかもしれない」と感じることが、施設入居を考える大きな転機になります。

2. 介護する家族の負担が限界に近づいた時

  • 介護者の仕事や家事・育児などとの両立が難しくなった
  • 24時間見守りが必要になり、介護者が休めなくなった
  • 介護者の心身の疲れが強くなり、介護うつや健康悪化の心配が出てきた

「このままでは続けられない」と気づいた時、施設という選択肢が現実的になります。

3. 医療的ケアが必要になった時

  • 病気が進行し、専門的な医療管理が必要になった
  • 在宅では看護や医療処置が十分にできないと感じたとき
  • 退院後、自宅での生活が困難と医師から説明され、医療体制の整った施設への入居が必要と判断される

4. 認知症が進行し、安心して生活できなくなった時

  • 迷子・徘徊が増えてひとりでの外出が困難になり、また行方不明になる可能性や事件、事故に巻き込まれる危険性が出てきた
  • 夜間の不眠や大声、行動が激しくなり、家族の生活や健康にも影響が出てきた
  • 食事や薬の管理ができなくなってきた

5. 一人暮らしの継続が難しくなった時

  • 配偶者の死去で急に一人になった
  • 周囲に頼れる人がいない、また、家族などが遠くに離れている
  • 近所の人から心配の声が増えた

独居では孤独や事故のリスクが高まるため、安心して生活できる環境を求めて入居を考えることがあります。

6. 家族との生活が難しくなった時

  • 同居中の家族とのトラブルが起こり、家族にも本人にもストレスが増えた
  • 認知症による暴言・介護拒否などで、家族が疲弊してきた
  • 介護している家族が、仕事や育児などで十分に介護できなくなった

「家庭だけでは支えきれない」と判断し、施設を選ぶケースです。

7. 本人が“安心して暮らせる場所”を求めた時

  • 本人が「家族や周りの人に迷惑をかけたくない」と望む場合
  • 家族が将来を見据えて早めに環境を整えたいと考えた
  • 不安よりも「安心を選ぶ」という前向きな入居理由

最近では「終活」という言葉がよく知られるようになりました。そのためか、「子どもに迷惑を掛けたくない」「自分の気に入った施設を自分で決めたい」と思い、本人自らが施設の下調べをしたり、実際に施設見学などをして、自分で納得した形で施設を選ばれる方も増えました。

介護施設に入居を考える時はこんな時

事例1

◆「なかなか、施設入居をさせる決心がつかない・妻としての思い」

Sさんは85歳の認知症のある介護度3の男性です。自立の妻が自宅で介護をしています。

認知症もなかなか思い出せないこともあり多少イライラすることが増えた程度で、家庭菜園で草刈りなども出来るほど足腰は元気です。

ある日Sさんはコロナに罹り入院をしてしまいます。その時に一気に状況が変わります。

コロナで治療中寝たきり状態になったため、ADL(日常生活動作)が低下してしまったのです。健脚だった姿はなく、リハビリでも介助をしてもらってやっと立てるような状態です。

妻は病院の相談員から「退院しても、奥様だけでは介護は厳しいです。施設の検討をして下さい」と言われます。

Sさんの奥さんは最後まで家で介護をしたいと思っていました。

その思いを近くに住む次男に相談したところ「これから親父もどんどん弱ってしまうだろうし、潮時だよ、施設考えた方がいいと思う」と言われてしまいます。しかし妻はSさんを施設には入れなくないと、退院後家に戻す決断をします。

Sさんは足腰の筋力がかなり低下していました。妻だけではうまく介護が出来ず、排泄の失敗も増えてしまいました。

それでも妻は頑張りますが、とうとう妻の腰の痛みがピークに達します。病院での診断は「圧迫骨折」でした。

妻も動けなくなり、しばらくSさんは、緊急でショートステイを利用します。この間に遠くに住む長男も総出でSさんの施設探しが始まりました。

家族で手分けし施設を探し、Sさんに合いそうな認知症グループホームが見つかりました。

最後まで妻は入居に難色を見せましたが、「面会ならいつでもお越しください」という施設の職員の言葉を聞き、Sさんをグループホームに入居させました。

今では無理なく妻は生活をし、会いたいときにはSさんの面会に通っています。面会の際には施設の外にあるベンチに夫婦二人で日向ぼっこで絆を深めています。

事例2

■この事例は、ご本人が家族との同居に不満を感じ自分で施設を選んだケースです

~「ここは私の居場所ではない、私は私の居場所を自分で見つける」~

40年以上看護師をしていたKさん(75歳)は夫の他界後、持ち家に自分一人で生活をしていました。

ある日買い物の際に自転車のまま転倒してしまい、Kさんはそのまま救急車で病院に搬送されました。結果は大腿骨骨折と右手の骨折でした。

そのまま入院、手術となりました。手術後、長男が今後の心配をして、介護認定を受けさせました。結果は介護2でした。

Kさんは1人暮らしが長かったため、退院後、日常生活がきるようになるまでという約束で、長男の家に同居することになりました。同居をする間、Kさんは年金から生活費を渡していました。

同居後はリハビリ強化型のデイサービスに通い、Kさんはどんどん回復していきます。

Kさん

息子

その様子を見て、長男の嫁は

お母さん、ずいぶんお元気になりましたね。実は私しばらく仕事が大変になるので、夕飯だけ作ってもらえませんか?

嫁

Kさん家に帰るリハビリと思い夕飯作りを引受けました。そのうち、洗濯物の取り込みなどもお願いされることも出てきました。

Kさんの孫は中学生でした。毎日のように友人を連れてきて、リビングを占領してゲームで大騒ぎです。

しばらくは我慢をしますが、孫たちの騒ぎ方にしびれを切らしたKさんは孫と孫の友達を注意します。

すると「うっぜぇーー、出てけよ、怒るかよ友達来てんのにさ、あーあ気分ダダ下がりーっ、もう、ばーちゃん無理!」と孫にひどい言葉を浴びせられます。

その後、帰ってきた長男の嫁に「なんで、息子と息子の友達まで叱るのか?」と責められます。Kさんはやり場のない怒りを感じます。
長男に相談をするも、

今は子供にも子供の付き合いとか大変なんだろ

とたしなめられます。思わずKさんは


家に帰る

と口にします。すると

今そんなこと言われても、仕事のプロジェクトが始まってお母さんに家にいてもらわないと困ります、息子の夏期講習もあるし・・・ねえあなた・・

嫁

母さんの家には急な階段があるだろ、風呂だって古いし、戻るのは無理だろ?なぁ、せめてかわいい孫が高校に入るくらいまでは助けてくれよ

Kさんは心の中で何かがプチンと切れました。
「私の年金が目当てなの?」
「嫁は介護のためにいる私を家政婦だと思っているの!!」

「うっぜぇー、出てけよなんて言う孫はいらない、私も無理」介護目的で同居をしているのに・・・という怒りが込み上げました。

「・・・・・・・私は私の居場所を見つける!」

私の居場所を
見つける!

~ そして1か月後、Kさんは


私、この施設に入るわ。私の家売手がついたの、そのお金で入居するの。知り合いのケアマネさんに相談したらとても親切でいろいろ施設を紹介してくれたの。


法テラスって無料で法律相談出来るところで相談して任意後見というのを頼んだわ。あなたたちには迷惑かけたくないから。

と施設の契約書を渡します。すると長男は慌てて

なんで相談しないで決めるんだよ、家だって勝手に売るなんて・・・

といい呆然とします。


売った家は、私の財産よ。それに、私は自分の居場所を作りたいのよ。私のペースで安心して、穏やかに過ごしたい。いつか施設に入るなら、自分で決めたかったの。これは、母さんの最後のわがままだと思ってほしい。

後日、納得しない長男の元にケアマネジャーが訪問し、Kさんの気持ちを伝えました。

嫁や孫との関係も長く続けることはお互いによくないとの状況を長男は把握し、Kさんの入居を承諾し、身元保証人を引受けました。

入居をしてKさんは自分のペースで穏やかに過ごしています。今は施設の看護師時代の話をするなどして元看護師の経験を活かして楽しい会話をしています。

家族とは距離が出来た分、面会や外出などもでき良好な家族関係が続いています。

安心な生活を過ごしたいというのは、誰でもが思うことです。親子だから考えが同じというわけではありません。お互いが全く違う考え方の場合もあります。

「終活」も本人だけが決めるわけでなく、家族がご本人の考えを理解して「施設生活」を送れるのが理想ですね。

この記事は介護福祉士に監修されています

介護福祉士
青木 いづみ

母親の認知症をきっかけに、サービス業から介護の道へ転身。サービス業で培ったコミュニケーション力と、介護職員や施設長としての知識や経験を活かし、入居相談員として家族が抱える悩みに寄り添っています。介護現場の視点、利用者目線、専門知識を基にした丁寧な相談を行っています。