「食の楽しみ」~美味しく魅せるコツ~
人が「美味しい」と感じるためには、料理そのものだけでなく周囲の環境や気持ちも大きく影響します。なぜならば視覚・嗅覚・聴覚・触覚・味覚といった五感からいろいろな情報を得て感じているからです。
私達人間は五感の中でも、特に視覚からの情報で美味しさを判断しています。ですから、食べたいなと思ってもらうためには、視覚的にいかに美味しそうに魅せるかが特に重要です。
前回は人がどのような過程で美味しいと感じて食べるのか、色が与えるイメージなどを紹介しましたが、今回は色の組み合わせ方、盛り付け方などについてお話をしていきます。
色の組み合わせ方
見た目の印象は、色の組み合わせ方で変えることができるので、色を組み合させ方によって、食の楽しみを増やすことに繋がります。
色の組み合わせは料理だけでなく、食卓を囲む色も食欲や満足感に大きく影響します。ですから、料理の中の食材の色、器の色、テーブルクロスやランチョンマットの色などの組み合わせ等でも印象を変えることができるのです。
色の組み合わせで基本になるのが、「三原色」と「補色」という方法です。この考え方を知っていると、食だけでなく日々の生活全般に役立ちます。
三原色
三原色とは、すべての色の基になる基本の色のことで、「赤・黄・青(緑)」を指します。料理を美味しく魅せるためには、この三原色をバランスよく取り入れることで、見た目だけでなく、栄養バランスも整いやすくなります。
お弁当には信号機の三色のおかずを入れると見栄えが良くなるという話を聞いたことがあると思います。ミニトマト、卵焼き、ブロッコリーといった三色の食材を入れることで、お弁当箱全体がグッと美味しく見えるわけです。さらに、同じ色の食材が隣り合わないように配置するとバランス良く見えます。
色相環
色の組み合わせを考える為に色を体系的に考えるのに役立つのが「色相環」です。
基本の色と色の変化を繋いで環状に配置したもので、どの色がどこに配置されているかがひと目でわかり、色の組み合わせのバランスを考えるために便利です。色相環の中には12色しかありません。その他の色は、色相環上の色の明度を変えたり、彩度を変えたりしたものです。。
補色~反対色同士を組み合わせる~
補色は、色相環で反対側に位置する色のことです。これらを組み合わせると、お互いの色が引き立ち、印象が強くなる効果があります。
補色の例:赤×緑、青×橙、黒×白、黄×紫など
お料理の色合いがあまり美味しそうに見えない場合に、補色を加えると美味しそうに見せることができます。例えば、鮪の刺身は赤色ですが、大根のツマに大葉の緑色が敷かれると赤が引き立ちます。これは赤×緑の補色効果です。
赤に補色の緑を加えるとかなりイメージが変わる
お肉とジャガイモと玉ねぎで作った肉じゃがは茶色っぽいですね。茶色の補色は、青味がかった色(青色、青緑色、深緑色など)になります。ですからちょっと緑っぽい色を加えると、かなり印象が変わります。
肉じゃが
枝豆を加える
緑系のマットに乗せる
その他の色の組み合わせ方
二色の組み合わせは、「三原色」や「補色」以外にもあります。隣り合わせの色を組み合わせる「類似色」、正三角形の配置の色を組み合わせる「トライアド」、二等辺三角形の色の組み合わせの「スプリットコンプリメンタリー配色」などです。更に色の組み合わせ方は二色だけでなく、三色、四色、五色・・・を使った組み合わせ方もあります。
色の組み合わせは、頭の中で想像するだけではイメージが湧きにくいので、実際の食品で配色してみたり、ランチョンマットの代わりに色画用紙などを敷いてみるとイメージしやすくなります。
茶色と橙色は「類似色」で、調和のとれた印象に
盛り付けの工夫
お料理の出来栄えを大きく左右するのが、盛り付けです。どんなに美味しい料理でも、盛り付け方で印象はガラリと変わってしまいます。 美味しそうに見える盛り付けのポイントは、「色合い」、「余白」、「高さ」の三つです。色合いについてはここまでお話をしてきたので、「余白」と「高さ」について、盛り付けのコツも含めてお伝えしていきます。
余白
お皿の大きさに対してお料理がどれだけの割合を占めているか、どれだけ余白があるかで料理の雰囲気は大きく変わります。一般的にお皿の余白が多いほど上品なイメージが高くなり、逆に余白が少なくなるほどボリューム感が出てきます。
フランス料理など高級感のあるレストランの盛り付けは、大きなお皿にちょこんと料理が乗っていたりします。またカフェランチでは、一つのお皿の上に複数のお料理をのせてワンプレートにして、ボリューム感がある見栄えにしています。
盛り付けの際、余白をどの位のスペースにするかは、料理のコンセプト、食べるシーン、食べる人のことを考えて決めると良いでしょう。
皿の余白を考えるのはちょっと面倒だけど美味しく見せたい場合に、「リム皿」を使うのも一つの方法です。リム皿とは外側に縁がしっかりある皿で、リム部分にお料理がかからないように盛り付けることで、リム部分が良い感じの余白となり、自然とお料理が引き立ち美味しく見えます。
リム皿
高さ
立体感を考えて盛り付けをすると美味しそうに見えるので、高さを意識します。お刺身は通常、大根のツマを盛ってそこに切った刺身を並べますね。そうすると、お皿に切り身を並べるよりも立体感が出て美味しそうに見えます。天ぷらなどの盛り付けは手前が低く奥が高くなるように盛り付けられています。煮物や酢の物などは中心が高くなるように盛り付けます。
意外に盛り付けが難しいのがパスタ。ただ平皿に麺をお箸で盛り付けると、平べったい感じになり、あまり美味しそうには見えません。トングを使ってパスタをねじりながら盛り付けると、中央が高くなり美味しそうに見えます。更に、具材やバジルの葉などを乗せると、自然と高さがでて強調されて美味しそうに見えます。
天盛り~和食の盛り付けの技法~
天盛りとは和食の盛り付けの方法の一つで、お料理をより一層楽しむための要素です。煮物、酢の物、和え物の盛り付けの際に、刻み海苔、木の芽、柚子の皮の千切り、ゴマ、針生姜などの食材をごく少量乗せます。料理の見た目を美しくするだけでなく、香りで料理にアクセントをつけたり、季節感を出す役目もあります。
天盛りは和食特有の技法ですが、他のジャンルの料理でも行われます。例えば、イタリア料理の上に散らすバジルやパセリは、彩り+風味で料理を引き立てていますし、韓国料理のビビンバなどでは糸唐辛子が彩り+風味として用いられています。
美味しく魅せるコツ
ここまで、「美味しそう、食べたいな」と食指を動かしてもらうための様々なポイントについてお話をしてきました。でも、いろいろありすぎてわかりにくいかもしれません。そこで最後に私が日頃実践している料理を美味しくみせるために実践している事を一つご紹介します。
まず料理そのものを美味しく魅せるには、盛り付けの技術を磨くよりも、食材の色の組み合わせ方を考える方が簡単です。料理の色合いを考える時、一番シンプルなのは「三原色」を意識することです。ですから三原色(赤・黄・緑)の食材を常備しておいて、ちょっと料理に加えることで、美味しそうに見えます。
料理に三原色の色を足すために、冷凍庫に剥き枝豆、バラのトウモロコシ、カットしたパプリカをだいたい常備しています。冷凍で三原色を持っているとすぐに使えて便利だからです。他にもニンジン、ミニトマト、紫タマネギ、レモン等もいつも持っています。特に紫タマネギは赤色ではありませんが赤に近い色なので、普通の白色の玉ねぎの代わりにちょっと使うとかなり料理の印象が変わるのでお勧めです。
買い物をする時に、食材の色を意識して選んでみたり、Instagram等で美味しそうと思った料理の色合いを考えて真似たり、ご自分が美味しそうと思うような魅せ方を楽しみながら試してみたらいかがでしょう。
美味しそうと感じて食べていただくことは、食べる人はもちろん、料理を提供する人にとっても喜びに繋がります。身近な食材やモノを使って、食の環境を整える工夫をしてみませんか。
この記事の執筆者
有限会社コートヤード
代表取締役 新田美砂子
農産物プロデューサー・フードデザイナー
MBA(経営管理修士)、NPO法人野菜と文化のフォーラム理事
「今ある資源を活かす」「もったいないをなくす」「健康的に食べる」をモットーにして、様々な形で農と食を繋いでいる。商品・メニュー開発、地域食材・農産物のマーケティング、地域活性化などを多数手がけてきた。
日本野菜ソムリエ協会講師、城西国際大学では食の知識と体験学習を織り交ぜた「環境と食文化」の講義を5年間担当。近年は様々な現場に携わってきた経験を活かし、食や農に対する「なぜ?」をわかりやすくフラットに伝えている。

