夏の健康を守ろう「夏の感染症について知ろう」高齢者が注意したい感染症

夏の健康を守ろう

「夏の感染症について知ろう」夏の高齢者が注意したい感染症

熱中症だけではない、見逃されやすい夏の危険

夏になると、「熱中症に気をつけましょう」という言葉を耳にする機会が増えます。確かに高齢者にとって熱中症は健康に大きな影響を与える重要な注意点です。

一方で、介護現場では、夏は感染症にも注意が必要な季節とされています。

高齢者は加齢によって免疫力や体力が低下しているため、感染症にかかりやすく、また重症化しやすい傾向があるといわれています。さらに、若い人のように分かりやすい症状が出ないこともあり、周囲が気付いた時には状態が悪化しているケースも見られます。

介護の現場で働いていると、「最初は食欲が少し落ちただけだった」「なんとなく元気がないと思っていたら感染症だった」というケースを数多く経験します。

夏は熱中症だけでなく、感染症にも目を向けておくことが大切な季節なのです。

なぜ夏は感染症が増えるのか

夏に感染症が増えやすい背景には、いくつかの要因があるとされています。

  • ウイルスや細菌の活性化では、夏に流行する主な病原体(エンテロウイルスやアデノウイルスなど)は、高温多湿の環境で活動が活発になりやすく、このため手足口病やプール熱(咽頭結膜熱)、胃腸炎(食中毒)などが見られることがあります。
  • 免疫力の低下では、猛暑による寝不足や夏バテ、冷たいものの摂りすぎ、さらにはエアコンによる室内外の温度差が自律神経を乱し、体の免疫機能を大きく低下させるといわれています。
  • 夏休みやお盆などの時期は、レジャーや帰省、イベントなどで人が密集する機会が増えるため、飛沫や接触によってウイルスがうつりやすくなる傾向があります。

食中毒

夏に多い代表的な感染症の一つが食中毒です。

暑い時期は細菌が増殖しやすく、食品の管理が不十分だと食中毒が発生することがあります。

ある高齢の男性は、「もったいないから」と前日の夕食の残りを翌日の昼に食べていました。家族も「昔からそうしているので大丈夫だろう」と思っていたそうです。

しかしその後、激しい下痢と嘔吐が出現し、救急搬送されました。幸い回復しましたが、医師からは「若い人なら軽症で済んだかもしれませんが、高齢者は脱水で一気に状態が悪くなることがあります」と説明を受けたそうです。

高齢者は体内の水分量が少なく、下痢や嘔吐が続くと急速に脱水が進みやすくなります。「少しお腹を壊しただけ」と軽く考えないことが大切です。

O157感染症

夏はO157による食中毒がニュースで取り上げられることがあります。

O157は強い毒素を出す大腸菌で、激しい腹痛や血便を引き起こすことがあります。
高齢者の場合は、症状がはっきり出ないこともあり、気づきにくいことがあります。

以前、ある施設で、入居者の方が朝食をほとんど食べない状態が続きました。

職員は「暑いから食欲がないのかな」と考えていましたが、その後も元気がなく、午後には下痢が出現しました。受診した結果、腸の感染症が判明したという事例があります。

高齢者の場合、「元気がない」「食欲がない」「水分を飲まない」といった変化が、体調不良のサインになることがあります。

感染性胃腸炎

感染性胃腸炎も夏に多くみられる感染症です。特に施設では、一人が感染すると集団感染につながることがあります。

ある施設では、一人の利用者が下痢をしていました。当初は「夏バテかな」と考えられていましたが、その後数日で複数の利用者に同じ症状が現れました。

結果として感染性胃腸炎による集団感染だったことが判明しました。

介護現場では、・排泄介助後の手洗い・手袋の交換・汚染物の適切な処理といった基本的な感染対策が非常に重要とされています。

特別な方法よりも、実際には基本を徹底することが最も効果的です。

尿路感染症

高齢者に特に多いのが尿路感染症です。

症状が分かりにくく、「急に認知症が進んだのでは?」と思うような行動の変化の原因が尿路感染症だったということも珍しくありません。

ある女性利用者は、いつもは穏やかな方でした。

ところが急に落ち着きがなくなり、職員に対して怒りっぽいなど、感情の起伏が見られるようになりました。

家族は認知症の悪化を心配しましたが、受診したところ尿路感染症が見つかり、治療後は無事に元の落ち着いた状態に戻ったのです。

高齢者では、発熱や排尿痛といった典型的な症状が出ない場合もあり、「ぼんやりしている」「怒りっぽい」「昼夜逆転」などの変化として気づかれることがあります。

肺炎

肺炎は冬の病気という印象がありますが、夏でも脱水や体力低下によって発症することがあります。

特に注意が必要とされているのが誤嚥性肺炎です。高齢者は飲み込む力が低下している場合、食べ物や唾液が誤って気管に入ることで肺炎を起こすことがあります。

ある男性利用者は、食事中にむせることが多く見られました。しかし本人は「年だから仕方ない」とあまり気にしていませんでした。

その後、食欲低下や微熱が続き受診したところ、誤嚥性肺炎と診断されました。

肺炎というと高熱や激しい咳をイメージしますが、高齢者では、はっきりした症状ではなく「食欲低下」「元気がない」「眠気」といった変化として現れることもあります。

新型コロナウイルス感染症

新型コロナウイルス感染症は季節に関係なく注意が必要とされています。

最近では以前ほど大きく報道されることは減っていますが、高齢者にとっては依然として注意が必要されている感染症です。

実際に施設では、「少し風邪気味かな」と思っていた利用者が新型コロナウイルス感染症だったという事例もあります。

高齢者は重症化するリスクがあるため、体調の変化を軽視しないことが大切です。

その他の夏に多い感染症

他にも、夏に流行しやすい主な感染症には、次のようなものがあります。

これらの感染症は子供に多く見られますが、ご家族に小さなお子様がいる場合や、帰省などで子供と接する機会が増える時期には注意が必要な場面もあります。

1. 手足口病

手足口病は夏季に流行し、7月にピークを迎えるウイルス性の感染症です。

患者の多くは子どもで、5歳未満の小児が約80%を占めるとされていますが、まれに大人にも感染することがあります。

近年は新型コロナウイルス感染症の流行以降、他の感染症についても流行時期に変化が見られるため注意が必要とされています。

原因

エンテロウイルスやコクサッキーウイルスなどのウイルスに感染することで起こるとされています。

主な症状・注意点

  • 手のひら、足の裏、口の中などに発疹や水ぶくれが見られることがある
  • 発熱を伴う場合もあるとされている
  • ウイルスの種類が複数あるため、再び感染することもあるといわれている
  • 手洗いの徹底や、タオルの共用を避けることが予防につながるとされている

2. ヘルパンギーナ

ヘルパンギーナは、乳幼児に多く見られる夏風邪の代表的なウイルス性の感染症です。6月から夏にかけて流行します。

主にコクサッキーウイルスなどのエンテロウイルスが原因とされ、ウイルスの型がいくつかあるため、何度も感染することがあります。免疫力や体力が低下している場合には、大人でも発症することがあるとされています。

原因

コクサッキーウイルスなどのエンテロウイルスに感染することで発症するとされています。

主な症状・注意点

  • 高熱やのどの痛みが見られることがある
  • のどの奥に水ぶくれやただれができる場合もある
  • 水分摂取がしづらくなることがあるため、脱水に注意が必要とされている

3. 咽頭結膜熱(プール熱)

咽頭結膜熱(プール熱)は、アデノウイルスによるウイルス性の感染症です。以前はプールの水を介した感染が多かったことから、「プール熱」と呼ばれていました。一般的には6月頃から徐々に増え、7~8月に流行のピークを迎えるとされています。

原因

アデノウイルスによる感染が原因とされています。

主な症状・注意点

  • 発熱、のどの痛み、目の充血などが見られることがある
  • 家庭内や集団生活の場では、タオルの共用などから感染が広がることがあるとされている

※手足口病、ヘルパンギーナ、咽頭結膜熱(プール熱)は、子供の3大夏風邪と呼ばれています。

新型コロナウイルス感染症の流行以降、それぞれのウイルスの流行時期にも変化が見られることがあるとされており、注意が必要とされています。

4. デング熱

デング熱とは、デングウイルスを持つ蚊に刺されることで感染する急性の熱性感染症です。人から人へ直接感染することはありません。

蚊を媒介として広がる感染症で、主に熱帯や亜熱帯地域で見られるとされています。

原因

デングウイルスを保有するヒトスジシマカなどの蚊に刺されることで感染します。主に熱帯や亜熱帯地域で流行していますが、日本国内でもヒトスジシマカが生息しているため、海外で感染した人をきっかけに国内で発生する可能性があります。

主な症状・注意点

  • 高熱、頭痛、関節痛、発疹などが見られることがある
  • 虫よけスプレーの使用や長袖・長ズボンの着用などで蚊に刺されないよう予防する
  • 特効薬や一般的なワクチンがないため、蚊に刺されないよう予防が重要とされている

※流行地域へ渡航する際は、蚊に刺されないよう注意が必要です。

高齢者の感染症は症状が分かりにくい

高齢者の感染症で最も怖いのは、症状がはっきり出ないことです。

若い人のように高熱や強い症状が出るとは限らず、「元気がない」「返事が遅い」「食事量が減る」「水分をあまりとらない」といった小さな変化として現れることがあります。

そのため介護では、「病気を探す」のではなく、「いつもとの違いを探す」ことが重要とされています。

介護で大切なのは「いつもとの違い」に気づくこと

介護職員やご家族が医師のように診断する必要はありません。

大切なのは、日常の中の小さな変化に気づくことです。

  • 「今日は食事が半分しか食べられていない」
  • 「いつもは自分から話すのに今日は静かだ」
  • 「水分をほとんど飲んでいない」

感染症の早期発見につながるのは、特別な医療知識よりもこうした日頃の観察です。

まとめ

夏は熱中症だけでなく、食中毒、O157、感染性胃腸炎、尿路感染症、肺炎、新型コロナウイルス感染症など、多くの感染症に注意が必要な季節です。

高齢者は症状が分かりにくく、気付いた時には重症化していることもあります。

介護が必要な高齢者では、「熱がないから大丈夫」ではなく、「いつもと違う様子がないか」という変化を見逃さないことが大切です。

食事量、水分摂取量、表情、会話、活動量など、日々の何気ない変化の中に感染症のサインは隠れています。

高齢者の健康を守るためには、「いつもと違う」に気づくことが感染症予防の第一歩です。

日常の中で気づきたいポイント

  • 「いつもと違う様子がないか」に気づく
  • 食事・水分摂取量を確認する
  • 表情や反応の変化を見る
  • 排泄・睡眠状況を把握する

※小さな変化を職員間で共有することが大切です。

この記事は介護福祉士に監修されています

介護福祉士
青木 いづみ

母親の認知症をきっかけに、サービス業から介護の道へ転身。サービス業で培ったコミュニケーション力と、介護職員や施設長としての知識や経験を活かし、入居相談員として家族が抱える悩みに寄り添っています。介護現場の視点、利用者目線、専門知識を基にした丁寧な相談を行っています。