介護を本音で話そう 「感情のコントロールはどうしたらいい?」

介護を本音で話そう・家族編

「感情のコントロールはどうしたらいい?」

他人事ではない介護の感情と向き合う

介護には切り替えられない感情もある

介護の記事や本を読むと、「冷静に対応しましょう」「優しく接しましょう」「深呼吸をしましょう」そんな言葉を目にすることがあります。

もちろん、それは間違いではありません。

「深呼吸」をして息を整える。介護をされている皆さんも、一度は試したことがあるのではないでしょうか。

でも、深呼吸をしただけで気持ちは切り替わったでしょうか。

介護には、深呼吸だけでは切り替えられない感情もたくさんあるのです。

優しさがイライラに変わる時

介護をしている人なら、誰だって本当は優しくしたいと思っています。

怒りたくて怒っているわけではありません。穏やかに接したい、笑顔でいたい、できるなら最後まで優しく支えたい。そう思っている人がほとんどだと思います。

でも、現実の介護は、そんなにきれいごとだけでは続きません。

  • 何度説明しても同じことを繰り返される
  • 夜中に何度も起こされる
  • 仕事と介護が重なる

介護をしていると、少しずつ心が削られていきます。そして、少しずつ感情が変わっていくのです。

最初は、「大丈夫?」と心配していたのに、いつの間にか「また?」という言葉が増えていく。
最初は優しく聞いていた話も、「それ、さっき聞いたよ」と強い口調になってしまうのです。

  • 電話が鳴るだけでため息が出る
  • ちょっとしたことばにもイライラする

そして、気が付けば無表情で介助をして、心の中では「一人になりたい」「逃げてしまいたい」と思ってしまう。

それでも多くの人は、「こんなことを思ってはいけない」と自分を責めてしまいます。
でも、それは“感情のコントロールが崩れかけているサイン”なのかもしれません。

限界は真面目な人ほど気づきにくい

介護をしている人の中には、「私はまだ大丈夫」と言い続ける人がいます。特に真面目な人ほど、そのような状況を続けようとします。

  • 責任感が強い人
  • 弱音を吐けない人
  • 家族だから「自分がやらないと」と思う人

そういう人ほど、自分の限界に気づけません。
そして、我慢の限界を超えたとき、人は感情をコントロールできなくなることがあります。

  • 大きな声を出してしまう
  • 乱暴に腕を引いてしまう
  • 冷たい態度を取ってしまう
  • 無視をしてしまう
  • 感情をみせずに接してしまう

「このままだと、自分は手を出してしまうかもしれない」そんな怖さを感じた人もいると思います。

でも、その気持ちは決して“特別な人だけ”が感じるものではなく、誰にでも起こりうる感情の動きなのです。

感情を保つために必要なこと

感情を消すことがコントロールではない

介護は、「感情労働」です。介護をしていると、感情が大きく揺さぶられることも少なくありません。

大切なのは、感情を無理やり消して「怒らないようにすること」ではなく、自分が限界に近づいていることに気づくことです。

  • 「今日は優しくできない」
  • 「今は距離を置きたい」
  • 「もう限界かもしれない」

まずは、そう感じている自分を認めることです。

頑張り続けることは本当に必要なのか

また介護では、「頑張り続けること」が美徳のように言われることがあります。

  • 疲れているのに休まない
  • 苦しいのに相談しない
  • 限界なのに「大丈夫」と言い続ける

そうやって、自分を追い込んでしまうのです。

例えば、家電ひとつも毎日フル回転で使い続ければ、壊れやすくなります。

同じように、人間の「頑張り」や「我慢」にも限界があります。壊れてしまう前に、「今、頑張りすぎている」と認めることです。

介護から離れることは逃げではない

介護から少し離れることは、逃げではありません。

  • デイサービスやショートステイなどの介護サービスを使う
  • ケアマネジャーに相談する
  • ほかの家族に頼る
  • 施設入所を考える

これらは、介護から「逃げる」のではなく、介護を続けるために必要な方法です。

介護職もまた感情と向き合っている

介護職も家族と同じように悩み、揺れている

また、介護を担う立場として「感情のコントロール」に悩む方々がいます。それは施設などで介護を行う介護職員です。

私はこれまで、現場で相談・指導を行う立場として、多くの現場を見てきました。

以前、勤務していた会社で、同僚や後輩の働く姿を見て、「(介護の現場では)ほんとに難しいんだな」と感じることもありました。

  • 利用者さんへの言葉が強くなる人
  • 対応が雑になってしまう人
  • 感情がなくなったように働いている人
  • 本来行うべき関わりができなくなってしまう人

こうした様子は、「介護職なのにそんなことをするのか」「介護職としてどうなのか」と思われてしまうかもしれません。

では、なぜその様な行動になるのでしょうか。

プロだからこそ求められる感情の切り替え

きっと最初からそんな人だったわけではありません。介護職はプロとしての技術を持っています。しかし一方で、感情の部分では家族と近いものがあります。同じ人間として関わっているからです。

プロとして働いていても、同じことの繰り返しに疲れたり、先が見えなくなったりすることがあります。それは、家で介護をしている家族の方と重なる部分があります。

ただ、家族と違うところは、「同じような感情を抱えながらも、介護職として利用者さんと向き合い続けなければならないこと」です。

介護職と家族介護の違い

「仕事だから」「支援をしなければいけない」「利用者様はお客様」という線引きがあります。それが介護職に求められることです。家族介護とは異なり、感情をそのままぶつけるのではなく、支援者として関わることが求められます。

感情の麻痺が起きる職場

介護職員も感情を抱えながら働いている

介護職を目指す人はむしろ、真面目で、一生懸命で、「利用者さんのために」と頑張ろうと思う人が多くいます。

介護職は、利用者さんと日々向き合う中で、感情が大きく揺れる仕事です。
喜怒哀楽が生まれるのは自然なことであり、また、体力的にも一日中動き回るため疲労がたまっていきます。こうした日々の積み重ねが、心身の負担につながっていきます。

特に介護業界は、人員不足が問題視されています。そのため、無理をせざるを得ない状況で働いている介護職員も少なくありません。

感情の麻痺は職場全体に広がる

私も、そのような状況のなかで「仕事だから」と割り切れない職員を見てきました。

「あの言い方は少しきついのではないか」
「対応が適切ではないのでは?」

ただ、最初は、そう感じていた職員も、毎日その空気の中にいるうちに、少しずつ感覚が麻痺していきます。

そして、本当に怖いのは、自分の感情が保てなくなっていることに気づかないまま、それが周囲にも当たり前になっていくことなのだと思うのです。

「仕方ない」が当たり前になったとき

「忙しいから仕方ない。」
「人がいないから仕方ない。」
「このくらいなら大丈夫。」

そして気づけば、利用者さんの気持ちよりも、「業務を終わらせること」が優先されることがあります。

これは、人員不足や業務量の多さで余裕がなくなっている職場に多く見られる傾向です。

支え合える職場が理想だが…

もちろん、利用者さんを傷つけるような対応はあってはいけません。

本来なら、お客様である利用者様によりよい介護サービスを提供できるよう、職員同士が良い環境をつくることが理想です。

「少し休んだ方がいい」
「最近、疲れていない?」
「その対応はよくないかもしれない」

こうしたねぎらいの言葉をかけ合ったり、互いの対応について意見を伝え合ったりしながら、支え合える職場が望まれます。

しかし、限られた時間や人員の中で、さらに「つらい」と言えない空気があると、心や感情に余裕がなくなり、気遣いも難しくなっていきます。

感情を失う前に気づいてほしいこと

支える人にも支えが必要

私は、介護に必要なのは、「もっと頑張ろう」という言葉だけではないと思うのです。追い詰められてからでは遅いのです。

大切なのは、後で責めることではなく、その前に気付いて、感情を保つ方法を見つけることです。
それには、少しその場から離れてクールダウンすることかもしれませんし、周りの人の助けを借りることかもしれません。方法は人によって違います。

家族介護にも同じことが起きる

介護現場の問題というのは、ある日突然、誰にでも起こりうるものだと思います。

それは家族介護でも同じです。最初は優しく声をかけていたのに、いつの間にか強い口調になる。

何度も呼ばれて、「あとにして!」と声を荒げてしまう。
夜中に何度も起こされ、「もう勘弁して」と思ってしまう。

その瞬間だけを見れば、「ひどい」と感じるかもしれません。
でも、その背景には、眠れない日々や、終わりの見えない介護や、誰にも言えない孤独が積み重なっていることがあります。

感情を保つ方法

介護の現場では、「もう限界かもしれない」という感覚を無視しないことが大切です。休むことは逃げではなく、介護を続けるために必要な選択です。一人で抱え込まず、周囲に頼りながら支え合うことが重要です。

介護は、人が人を支えるものです。支える人がまた違う形のものに支えられ、心に余裕を持ちながら介護が出来る社会になる日が早く来るとよいですね。

◎次回は、介護を本音で話そう~感情のコントロールを整える~実録「クールダウンは必要な時間」です

この記事は介護福祉士に監修されています

介護福祉士
青木 いづみ

母親の認知症をきっかけに、サービス業から介護の道へ転身。サービス業で培ったコミュニケーション力と、介護職員や施設長としての知識や経験を活かし、入居相談員として家族が抱える悩みに寄り添っています。介護現場の視点、利用者目線、専門知識を基にした丁寧な相談を行っています。