介護を本音で話そう・家族編
「介護をしていて・・・正直ショックだったこと」前編
介護は、ある日突然はじまることがあります。「こんなことになるとは思わなかった」という戸惑いとともに、その日常は静かに、そして確実に変わっていきます。
私も感じた介護の中の「ショック」
介護をされているご家族から「ショックでした」という言葉を耳にします。その一言の中には、想像以上に重い意味が含まれています。
家族の介護の中で、私自身も何度も同じような経験をし、まるで嵐に巻き込まれたような「ショック」を感じたときもありました。
そのきっかけは、15年以上前に起きた、母の脳梗塞による入院でした。
幸いにも症状は軽く、後遺症も残りませんでした。退院後はこれまでと変わらない生活を送っていましたが、その病気をきっかけに、活動的だった母は少しずつ「活気」を失っていきました。
その様子は、数年後も変わりませんでした。
ある日、脳神経外科で半年に一度の経過観察を受けたときのことです。医師から「脳の萎縮が見られます。認知症の初期症状かと思われます。服薬を始めましょう」と告げられました。
当時の私は「認知症」という病気のことをよく知りませんでした。
「服薬」と聞いて薬を飲めば治るものだと思っていたのです・・・
調べてみると、認知症は「まだ治療法が確立されていない未知の病気」だと知りましたが、周りに介護をしている友人もなく、誰に相談すればよいのかもわからずにいました。
そのときの気持ちは、ただただ悲しく、辛く、胸に重くのしかかるようなショックだったことを覚えています。
さまざまなショックな出来事
◆では、家族の介護をしている人はどんな場面でショックを受けるのでしょうか。
- 親に拒絶されたとき
- 排泄介助で感じる強い衝撃
- 急激な身体状況、精神状態の状態悪化
- お金や物がないと疑われる
- 暴言・暴力を受けたとき
- 周囲や介護をしていない人に言われたひとこと
- 「もう限界かもしれない」と気づいた瞬間
① 親に拒絶されたとき
◎これまで関係が良好だった親から、突き放すような言葉を言われる。
- 「触るな」
- 「あんたなんか知らない」
- 介護する側の思いが通じないこと
- これまでの関係の崩れ
認知症の影響で起こることが多いですが、介護する側は、「人格を否定された」または「嫌われてしまった」と深く傷つきます。
これまで何でも話していた母親に突然「あなた誰?」と言われた瞬間、頭では認知症の影響だと理解していても、気持ちが追いつきません。
それまで積み重ねてきた関係が、一瞬で途切れてしまったような感覚に襲われます。
② 排泄介助で感じる強い衝撃
◎親の排泄を手伝う場面で「ここまで自分で出来なくなるのか」と強い衝撃を受ける。
親の排泄介助を初めて行ったときには「ここまでやるとは思っていなかった」と、多くの方が口にします。
- おむつ交換
- 尿、便失禁の処理
- トイレ誘導の失敗
- 尊厳と現実のギャップ
- 親子関係の逆転を突きつけられること
それは単に“大変だった”ではなく、子供にとっては威厳のある親が「こんな状態になってしまった」と認めたくない感情が生まれます。
③ 急激な身体状況、精神状態の状態悪化
◎昨日まで歩けていたのに、突然歩けなくなる・食べられなくなる。
- これまで活発に活動できていた
- 急に意欲が低下してしまった
- 「こんなに急に?」という戸惑い
- 「どうなるか?」先の見えない不安
「出来なくなったこと」が、一時の事なのか、それともこの後長く続くのか、不安と焦燥感を感じ始めます。
④ お金や物がないと疑われる
◎物がなくなったと疑われる。
- 「財布を盗っただろう」
- 「通帳を隠しただろう」
- 信頼関係の崩れ
- 善意が受け入れられないつらさ
「お金を盗っただろう」そうに疑われたとき、怒りよりも先に込み上げてくるのは、やるせなさです。
これまで築いてきた信頼が揺らぎ、想像以上に心に残ります。ショックだけでなく、悲しい、悔しい思いなど様々な思いを味わいます。
⑤ 暴言・暴力を受けたとき
◎介護の中で、思いもよらない言葉を投げかけられる。
普段穏やかだった人が、怒鳴る・叩く・物を投げるなどの行動をとる
- 「別人になってしまった」のではという喪失感
- 次はどうなるのだろう?恐怖と罪悪感
いつ起こるかわからない事態に対して常に構えた状態で応対しなければいけなくなります。
相手の態度に常に恐怖を感じ、介護者が「なんで自分がこんな思いをするのだろう」と悩むこともあります。何よりも不安と恐怖を抱えることになります。
⑥ 周囲の人に言われたひとこと
◎周囲や家族・パートナーの言葉にショックを受ける。
『周りの人に言われたひとこと』
- 自分の親なら「当たり前でしょ」
- 「私は〇〇あるから協力できない」と家族に言われた時
『家族やパートナー人に言われたひとこと』
- 「自分の親ではないから、関係ない」と言われた時
- 協力的な姿勢が見えず、孤独感を感じる
- 「家族なのに、苦労が分かっていない」と感じる
自分だけが苦労しているように感じ、まるで他人事のような言葉にショックを受けることもあります。 相談もできず、手伝いもなく、労いの言葉もない中で、「家族なのだから、少しは協力してほしい」と、孤独を感じてしまいます。
⑦ 「もう限界かもしれない」と気づいた瞬間
◎ある日突然、「もう限界かもしれない」と感じる。
- 涙が止まらない
- 何もする気が起きない
- 介護の相手に優しくできない
- 自分の変化や、「自分はどうなってしまうのか」という恐怖
- 「頑張れていた自分」が崩れていく感覚
- いつまで続くのか分からない不安
まとめ
◎介護で受けるショックは、単なる出来事ではありません。
- 人間関係の崩れ
- 自分の価値観や気持ちの揺らぎ
- 将来への不安
こうしたことが一度に押し寄せることによって起きます。
そして重要なのは、これらは「珍しいこと」ではなく、非常に多くの人が経験している現実だという点です。
※次回は、「介護をしていて・・・正直ショックだったことの実録~いまどこ?いま日光」の実録をご紹介いたします。
この記事は介護福祉士に監修されています
介護福祉士
青木 いづみ
母親の認知症をきっかけに、サービス業から介護の道へ転身。サービス業で培ったコミュニケーション力と、介護職員や施設長としての知識や経験を活かし、入居相談員として家族が抱える悩みに寄り添っています。介護現場の視点、利用者目線、専門知識を基にした丁寧な相談を行っています。

