11月11日は介護の日「認知症になりにくい人になる方法」
「会話で脳を元気にさせる話し方・聞き方」
認知症は、高齢者だけの病気ではありません。65歳未満の若年層においても認知症を発症するケースが増えてきています。若い方では30代後半から若年性認知症を発症する方もおられます。また、生活習慣病が増加傾向にあることから、働き盛りの40代から50代の方が認知症を発症することも珍しくなくなり、年齢が若いからと言って「認知症は他人事」ではなくなってきた時代になりました。
「最近、物の名前が出てこない」「同じ話をしていたみたい」もしかしたら、この現象は、「認知症なのでは?」と考えてしまった、そんな経験はありませんか?
「ふと出て来る」そのような現象は、年を重ねると誰にでも起こる自然な変化ですが、実は会話の仕方が脳の健康に深く関係しているということが、脳科学の研究でわかってきました。
理化学研究所ロボット工学博士、認知症予防研究者・※大武美保子氏は、「会話の中に、脳の元気度がそのまま表れています」と話します。
“どんな話し方・聞き方をしているか”で認知症になりやすい会話であるか、認知症にはなりにくい会話なのかのがわかるのだというのです。その傾向が分かれば、認知症の予防にもつながるのです。
会話にあらわれる「脳のサイン」
大武氏は、脳と会話の関係は「スマホとアプリ」のようなものだと例えています。
スマホが機械自体に不具合があればアプリも動かないように、脳が元気でなければ会話もうまく進みません。
この事象を認知症に当てはめて考えてみましょう。
認知症は、脳のある部分に萎縮などの支障が出て来ることにより、継続的に短期記憶障害や見当識障害、判断力の低下などの中核症状が現れ、言葉がスムーズに出なかったり、物の名前が出てこなかったりという周辺症状があらわれます。これらは、脳の支障がある影響で起きている現象なのです。
たとえば、最近していた会話の中でこんなことはありませんか?
- 「あれ」「それ」といった言葉が増え、人や物の名前が出てこない。
- 話の途中で言葉が出てこない、何を話していたか忘れてしまう、など会話中に文章がつながらなかったり、表現がしっくりこなかったりする。
- 同じ話を繰り返してしまうなど
こうしたことが増えてきたときは、脳が少し疲れているサインかもしれません。
一次的にその様なことが気になったからと言って、あまり落ち込む必要はありません。なぜなら、脳は使えば鍛え直せる臓器だからです。しかし気を付けなければいけないことは、脳の機能よりも、「会話」が問題である場合があります。
「頭を使わない会話」は注意が必要です
普段意識はしてなくても脳はとてもエネルギーを使う臓器なのです。
体のわずか2%ほどの重さしかないのに、使うエネルギーは全体の約20%。そのため、脳は「使わない部分」を省エネモードにしてしまいます。
例えば「脳をつかわない会話」とは、同じ話ばかりの会話や聞き流すだけの会話などです。それらの会話は「脳を使わない」「省エネモード」な会話であるため、自然と脳がサボってしまうのです。
また、普段何気なくしている会話の中にも、下記の様な内容の会話をしていることはないでしょうか?心当たりがないか、考えてみましょう。
脳をつかわない会話
自慢話タイプ
「昔はすごかった」と同じ話を何度もする。同じ話を何度もするのは過去の経験した話を再生ボタンとして押しているにすぎません。
話題どろぼうタイプ
自分で自ら話始めるのではなく、人の話を途中で取ってしまう、要は人の話に乗って、自分の話をしてしまうなどです。
聞き流しタイプ
「ふーん」「へぇ」と返すだけで済ましてしまう。一見聞いているようで実は聞いていない、または内容を理解していないのです。
否定タイプ
「そうじゃない」「でもね」とつい言ってしまう。内容を聞いているようで、実は否定という形で話の内容を反射神経のみで答えている。
どれも誰でもやりがちなことですので、心当たりがあるから「脳を使っていない」のではありません。気を付けたいのは、こうした会話では脳があまり働かないため、いかに「脳を働かせるか」を意識することが大切だということです。
なぜなら、脳は意識して「頭を使う会話」を増やすことで、脳のネットワークは元気を取り戻していくからです。
「話す」「聞く」で脳をトレーニング
大武氏は、「脳は筋肉と同じで、使えば鍛えられる」と話します。たとえ年齢を重ねても、神経同士の“つながり”は何度でも作り直せるのです。
「頭を使う会話」は、次の2つの動作で成り立っています。
話す

体験を思い出して、
相手に伝わるように話す。
聞く

相手の話を理解し、
気になったことを質問する。
この“話す・聞く”を繰り返すだけで、脳はしっかり働きます。会話の最中に、頭の中で整理したり思い出したりすることが、脳の「ワーキングメモリ(作業机のような記憶)」を鍛えるからです。
例えば認知症の方と話すときであっても、「話す」・「聞く」の言葉のキャッチボールを心がけていると、脳が働きはじめ、言葉の数が増えていきます。「認知症だからきっと言葉が返ってこない」ではないのです。
もし、認知症が進行をしていて言葉がなかなか出なくても、言葉を「聞く」ことで表情などが変わったりすることがあります。その変化は「脳の中が働いた」変化なのです。
脳が若返る6つのコツ
■聞く時間を少し多めに(6:4のバランス)
相手の話をじっくり聞くことで、相手の話している内容を理解することで脳の理解力や想像力が刺激されます。また、認知症の方に対しても「傾聴を心がける」ことが大事とありますが、受ける側が話をしている内容を理解することで、続きの会話につながり、お互いが「脳を働かせる」ことが出来るのです。
■「何を話そう」ではなく「何を聞こう」
次に何を話すか考えるより、「どんな質問をしようかな」と考える方が脳活発に動きます。質問が出て来るということは、聞いた話を理解した上で疑問が出てきたということです。認知症の方の話をよく聞いてみると、「相手に質問が出来る方」は認知症の進行も穏やかである傾向があります。
■「なぜ」よりも「いつ・どこで・誰と」を使う
「なぜそれをしたの?」よりも「いつから始めたの?」「誰と行ったの?」など、具体的な質問で会話が広がります。その会話の広がりが脳を働かせるきっかけになります。「なぜ」の質問はなぜに対しての答えしかないのです。例えば「いつから」「誰」を入れることで、質問した側は脳を働かせながら会話をしているのです。
■昔の話より“最近の話”を取り入れましょう。
新しい出来事を思い出して話すと、「覚える」「思い出す」力が自然と鍛えられます。昔の話の方が脳を使うように感じられるかもしれませんが、昔の話は経験として格納されている引き出しから出来上がった話を取り出すだけであり、新しい出来事はその時に感じた感覚を伝えることにより脳を働かせます。
■固有名詞や数字を入れる
「○○城に行った」「高さが○メートルあった」など、具体的に話すことが脳への刺激になります。
■笑いを取り入れる
少しの失敗談や笑える話は、会話を明るくし、脳を柔らかく保ちます。これは脳を働かせるだけの効果ではなく、会話を広げるテクニックでもあります。また、笑いは脳をリラックスさせます。リラックスを取り入れ、その上で話を広げていくことが効率的に「脳を働かせる」ことにもつながるのです。
「共想法」で脳のネットワークを活性化しよう
大武氏が提唱する「共想法(きょうそうほう)」は、会話を通じて認知機能を高める方法です。
3~6人でグループを作り、写真や話題を持ち寄って「話す」「聞く」「質問する」「答える」を交互に行います。
どれかに偏るのではなく、バランスよく「話す」「聞く」「質問する」「答える」を取り入れるのかポイントです。
この方法を続けた人は、言葉をスラスラ出す力(言語流暢性)が高まったというデータもあります。言語流暢性は、認知機能のバロメーターです。続けることで、物忘れの予防にもつながります。
例えば、この方法は、絵や写真などを用意しなくても、出来ます。例えばテレビを見ていても、出来るのです。家庭や施設などでは、「グルメ番組」などがいいでしょう。番組を見た後で出てきた料理で食べたかったものの話をするだけでも、効果があるのではないでしょうか?
「さっきの4つあったけど、どれが食べたいですか?」などの話題から「話す」「聞く」「質問する」「答える」を行っていくことはいかがでしょうか。
難しく考えずに、「一方的に話さない」「質問してみる」だけでも十分な効果があります。毎日の会話こそが脳のトレーニングなのです。
柔らかい心が脳を若くする
最後にもう一つ大切なのが、「常識にしばられないこと」です。
人によって考え方や価値観はさまざまです。「自分が正しい」と決めつけず、「この人はこういう考え方なんだ」と想像し柔軟な気持ちで会話を心がけましょう。
心理学ではこれを「パースペクティブ・テイキング」と言い、脳の柔軟性を高める力とされています。いろいろな人の視点に触れることで、脳のネットワークがさらに広がります。
会話は、ただの言葉のやりとりではありません。脳を動かし、気持ちを豊かにし、人とのつながりを深める“生きたトレーニング”です。
相手の話をよく聞き、質問し、笑い合う。その積み重ねが、脳の若さと心の健康を守ります。
さあ、少しだけ“頭を使う会話”を楽しんでみませんか?
世の中はデジタル化が進んでいきますが、私たち人間の脳は生きています。人との会話の中で自分の脳を働かせてみませんか?
出典:大武美保子(2025年6月1日)「『認知症になりにくい人』が日常会話で避ける〈2文字のNGワード〉」DIAMOND online
URL:https://diamond.jp/articles/-/374163
(参照日:2025年11月19日)
この記事は介護福祉士に監修されています
介護福祉士
青木 いづみ
母親の認知症をきっかけに、サービス業から介護の道へ転身。サービス業で培ったコミュニケーション力と、介護職員や施設長としての知識や経験を活かし、入居相談員として家族が抱える悩みに寄り添っています。介護現場の視点、利用者目線、専門知識を基にした丁寧な相談を行っています。

