障がい者施設の月別研修②
(株)日本アメニティライフ協会(以下「JALA」)では、安心してご利用者様に施設での生活を送っていただけるために、職員の育成にも力を入れております。
各施設において、下記の内容に沿って研修を行っております。
施設研修プログラム例– 障がい者グループホーム –
研修②
| 9月 | 非常災害時 |
| 10月 | セルフマネジメント |
| 11月 | 緊急時・事故発生対応(再発防止 |
| 12月 | 虐待予防、身体拘束等の適正化 |
| 1月 | 自閉症、発達障がいの理解と支援 |
| 2月 | 精神障がいの理解と支援 |
| 3月 | 身体障がいの理解と支援 |
非常災害時・BCP訓練
水害発生時の対応とBCP(事業継続計画)
近年、台風や集中豪雨などによる水害が全国各地で発生しており、障害福祉施設でも「入居者の安全確保」と「事業の継続」が大きな課題となっています。
本研修では、水害時における初動対応、避難行動、連携体制の確認を中心に、BCP(事業継続計画)の視点から実践的に学びます。
水害のリスク把握
・地域のハザードマップを確認し、浸水想定区域や避難経路、避難所の位置を共有します。
初動対応の手順
- 気象警報発令時の情報収集と職員間連絡
- 停電・断水時の備え(懐中電灯、飲料水、非常食の点検)
- 入居者の特性に応じた避難支援方法の確認
避難行動のシミュレーション
車椅子利用者や聴覚障がいのある方など、それぞれの特性に合わせた避難誘導を想定し、実際の移動経路を確認し、避難所までの安全確保を訓練します。
BCP(事業継続計画)の再確認
- 職員の役割分担と連絡体制
- 福祉避難所や関係機関との連携方法
- 災害後の支援体制と復旧手順
障がいのある方々にとって、災害時の環境変化や避難行動は大きな不安や混乱をもたらします。そのため、日頃からの準備と職員一人ひとりの判断力・行動力が生命を守る鍵となります。
セルフマネジメント(自己管理)
福祉の現場では、日々さまざまな利用者様と関わりながら支援を行う中で、「自分自身の心と体を整える力=セルフマネジメント」がとても大切になります。
セルフマネジメントとは、自分の感情・行動・体調・時間を自分で上手にコントロールする力のことです。
職員一人ひとりが安定した状態で働くことが、利用者の安心やチーム全体の信頼にもつながります。
セルフマネジメントの目的
- 職員自身の健康と心の安定を保つ
- 冷静で適切な判断・対応を行うため
- チームワークを良好に保ち、支援の質を高めるため
セルフマネジメントの要素
① 感情のコントロール(アンガーマネジメントを含む)
- 感情に気づく、整理する、落ち着いて対応する。
- 怒りを感じた時には「6秒ルール」で一呼吸おく。
- 感情的になりそうな場面では、上司や同僚に相談し、抱え込まない。
② 体調管理
- 十分な睡眠、バランスの取れた食事、適度な休養を心がける。
- 体調不良時は早めの報告・相談を行い、無理をしない。
③ 時間・業務の管理
- 優先順位を整理し、計画的に業務を行う。
- 記録や報告はその日のうちに。小さな積み重ねが信頼につながる。
④ ストレスマネジメント
- 気分転換の方法(深呼吸、軽い運動、趣味など)を持つ。
- チーム内で声をかけ合い、助け合える環境を作る。
セルフマネジメントは、「自分を大切にすること」から始まります。
自分の状態を整えることは、利用者への安心した支援や、チーム全体の安定につながります。
緊急時・事故発生対応(再発防止)
障がい者グループホームでは、入居者の方々が安心して地域生活を送るために、日常の見守りや体調管理が重要です
しかし、予期せぬ体調変化、転倒、けが、パニックや興奮など、さまざまな「緊急事態」が発生することもあります。障がい特性を理解したうえでの冷静な初期対応と、再発を防ぐチーム体制づくりを学びます。
障がい特性に応じた緊急時対応
- パニックや不安が強い方には、まず職員が落ち着いた声かけを行う。
- 大声や急な動作を避け、安心感を与える空間を確保する。
- 身体障がいのある方への介助では、二次的なけが防止を意識する。
- 服薬や持病の管理を日頃から把握し、発作・体調変化への備えを共有する。
事故発生時の対応と報告
- 第一発見者は「安全確保→応急処置→連絡(119・管理者)」の順に行動。
- 報告時には、感情的な表現を避け、事実を正確に記録する。
再発防止のためのチーム支援
- 事故後は、職員間で情報を共有し、支援内容・環境整備を見直す。
- ヒヤリハット報告を積極的に行い、小さな気づきを全体で活かす。
- 入居者の行動特性(こだわり・不安・感覚過敏など)を理解し、予防的支援を計画に反映させる。
入居者の尊厳を守る対応
- 事故後も本人を責めず、安心できる言葉をかける。
- 「失敗」ではなく「経験」として受け止め、信頼関係を維持する支援姿勢を持つ。
障がい者グループホームにおける緊急対応は、単なるマニュアル対応ではなく、その人の特性を理解した上での柔軟な判断と対応力が求められます。職員が、普段から入居者の様子を観察し、小さな変化に気づくことが事故の予防につながります。
自閉症、発達障がいの理解と支援
自閉症・発達障がいについて
自閉症や発達障がいのある方は、脳の働き方や感じ方に特徴があり、他の人とは異なる情報の受け取り方・考え方をしています。これは「性格」ではなく「特性」であり、本人の努力不足ではありません。職員が理解し、環境を整えることで、その方が安心して暮らせる支援が可能になります。
■ 自閉症スペクトラム(ASD)の特徴
対人関係やコミュニケーションの困難さ
- 言葉の裏を読むことや、相手の気持ちを想像することが難しい場合があるため、具体的に、わかりやくす伝える必要があります。
こだわり・同じ行動への安心感
- 生活リズムや手順の変化に強い不安を感じることがあります。あらかじめ手順などを示し、予告などの配慮をします。
感覚の過敏・鈍麻
- 光・音・匂い・肌触りなどに敏感、または鈍感な場合があります。状況に合わせた落ち着ける環境作りを心掛けます。
■ 発達障がい(ADHD・LDなど)の特徴
注意・集中のコントロールが難しい(ADHD)
- 忘れ物やケアレスミスが多かったり、衝動的な行動が出やすかったりするため、声かけ、視覚的な手がかりなどの工夫をします。
学習や理解の偏り(LDなど)
- 文字や数の理解が苦手でも、絵や音で理解しやすい場合があるため、得意な方法で伝えることが支援のポイントです。
■ 支援の基本姿勢
自閉症や発達障がいのある方の支援は、相手を変えることではなく、「支援者が見方を変えること」から始まります。理解を深めることで、「安心できる居場所」となり、その方の自立と笑顔につながっていきます。
精神障がいの理解と支援
精神障がいとは
精神障がいとは、統合失調症、うつ病、双極性障害、パニック障害など、心の働きに不調をきたすことによって、日常生活に支障が生じている状態をいいます。
■ 精神障がいの主な特徴
- 気分や感情の変動
気分の落ち込み、不安、イライラなどが強く現れることがあります。感情の変化を責めず、「どうされたのかな」と受け止める姿勢で対応します。 - 思考や判断の混乱
考えがまとまりにくい、現実との区別がつきにくいなどの症状が見られる場合があります。否定せず、安心できる言葉で短く伝えるようにしましょう。 - 対人関係の苦手さ
人との関わりに不安を感じたり、孤立しやすいことがあります。安心できる距離感が大事です。 - 服薬や生活リズムの乱れ
薬の飲み忘れや昼夜逆転などが起きやすい傾向があります。
→ 支援者が生活の流れを一緒に整え、見守りながら自立を支えます。
■ 支援のポイント
- 傾聴と共感→「受け止めてもらえる」と感じることが安心につながります。
- 自己決定の尊重→できることなどを一緒に考え本人の意思を大切にします
- チームでの支援→医師・看護師・相談支援専門員などと情報共有し、支援します。
精神障がいのある方の支援で大切なのは、「症状を見る」のではなく、「人を見る」ことです。不安や苦しみの裏には、その人なりの努力や思いがあります。安心できる環境を整えることで、その人が自分らしく暮らし、社会とつながる力を取り戻すことができます。
身体障がいの理解と支援
身体障がいとは、手足・体幹・視覚・聴覚・内部臓器など、身体機能の一部に障がいがあることで、日常生活や社会生活に支障をきたす状態をいいます。
障がいの程度や部位、原因はさまざまであり個々の特性に応じた支援が求められます
■ 主な身体障がいの種類
- 肢体不自由脳性まひ、脊髄損傷、四肢切断などで、手足の動きや姿勢の維持に制限がある。
→ 移動や更衣、入浴など生活動作の補助が必要な場合があります。 - 視覚障害見えにくい、または見えないことで情報取得や移動に制約がある。
→ 音声での案内や点字表示、明暗の調整などが有効です。 - 聴覚・言語障害聞こえにくい、または話すことが難しい障害を差します。
→ 手話、筆談、ジェスチャーなど、相手に合った伝え方を工夫します。 - 内部障害心臓・腎臓・呼吸器・膀胱・小腸などの機能障がいで、外見ではわかりにくい障害です。
→ 疲れやすさ、体調変化に配慮し、無理のない生活リズムを支援します。</li
■ 支援のポイント
- 安全で安心できる生活環境づくり
段差の解消、手すりの設置、照明の工夫など、環境調整を行いましょう。 - 自立支援の視点をもつ
できる部分は本人のペースで行ってもらい、「できる力」を伸ばす支援を大切にします - プライバシーの配慮
身体介助の場面では、羞恥心や尊厳を守る対応が求められます。 - 医療との連携
身体的な変化を早期に察知し、医療機関や看護職と情報共有を行います。
身体障がいのある方の支援では、「できないこと」よりも「できること」に目を向けることが大切です。安心して生活できる環境を整え、本人の意思を尊重した支援を続けることで、その人らしい暮らしの実現と社会参加につながります。
私たちJALAでは、障がいのある方が地域の中で自分らしく安心して暮らせる生活を支えるため、職員一人ひとりの学びと成長を大切にしています。
研修を通じて、職員が障がい特性への理解を深め、緊急時の対応力やセルフマネジメント力を高め、困難な場面においても、冷静に判断し、施設全体の信頼を築いていきます。
この記事は介護福祉士に監修されています
介護福祉士
青木 いづみ
母親の認知症をきっかけに、サービス業から介護の道へ転身。サービス業で培ったコミュニケーション力と、介護職員や施設長としての知識や経験を活かし、入居相談員として家族が抱える悩みに寄り添っています。介護現場の視点、利用者目線、専門知識を基にした丁寧な相談を行っています。

