【お役立ち情報】きざみやミキサーに対応した食事

きざみやミキサーに対応した食事

食べやすい刻み食とミキサー対応の食事提供

刻み食やミキサー食など、ご本人様に合わせた食形態で提供しております。

きざみやミキサーに対応

毎日のお食事は、食べやすく、飲み込みやすいように、刻み食やミキサー食など、ご本人様に合わせた食形態で提供しております。

ここでは、食形態を変えることで利用者様に現れるメリットを中心にご説明します。

食形態を工夫する目的

  • 誤嚥や窒息を防ぐ
  • 美味しさや見た目を工夫してQOL向上
  • 栄養状態を保つ
  • 自尊心の維持(「普通の食事に近い」感覚)

基本の食形態分類(例)

食形態名 特徴・内容 対象者例
常食 通常の食事。一般的な固さ 嚥下・咀嚼機能に問題がない人
一口大

常食を一口大(約1.5~2cm)に

カット

噛む力がやや弱い人
粗刻み

刻み食よりやや大きめ。

比較的食感を残した刻み方

やや咀嚼機能が低下している人
刻み食

食材を細かく刻んだもの

(5mm~1cm程度)

噛む力が弱いが飲み込みは

可能な人

ミキサー食 食材をミキサーでペースト状にし、滑らかに整えたもの 嚥下困難がある人

きざみ

きざみは一口大、荒刻みなど、ご利用者様の嚥下状態に応じて提供しています。
特に、葉物野菜は繊維が口に残りやすく、丸いものは喉に詰まりやすいため、食材の特性に応じた工夫を行っています。ミキサー食やペースト食よりも“食事らしさ”が残ります。

ただし、刻み食には注意点もあります。
例えば「刻むことでパサついて飲み込みづらくなる」「食材が口の中に散らばりやすくなる」「食材により刻む大きさによっては誤嚥の原因になる」といったこともあります。

そのため、場合によってはとろみをつける、ソースやあんをかけるなどの工夫も必要です。

ミキサー食

ミキサー食とは、食品をミキサーなどで細かく粉砕し、なめらかなペースト状にした食事のことです。主に、嚥下(えんげ)障害がある方や、噛む力が弱い方のために提供される介護食の一つです。

ミキサーは味が混ざらないように種類ごとに分け、見た目にも気を付けて盛り付けています。
繊維があるものは分けてミキサーにかけ、なるべくどの食材も同じ硬さや舌触りになるよう、配慮します。

また、おかゆはミキサーにかけ、トロミ剤などで硬さを調整して提供しています。

ミキサー食は硬さも重要です。硬すぎれば、喉を通りづらくなることもあり喉に張り付いて窒息をしてしまう可能性もあります。

反対に水分が多いと飲み込みづらくなり、誤嚥の発生原因にもなってしまうこともあるため、その方の飲み込みやすい硬さにトロミ剤などを利用し安全に召し上がっていただくようにしています。

医師などと連携をし、意見を聞き、状況によっては嚥下機能の検査※などを行いながら提供をしております。

トロミ剤の種類

トロミ剤の種類には、大きく分けて3つの種類があります。

① デンプン系トロミ剤(でんぷん由来)

<特徴>

・昔から使われているタイプで安価でとろみが安定しやすいです。
・風味が多少変わる場合があり、加熱によって粘度が変化しやすい傾向です。

② 増粘多糖類系トロミ剤(ガム系)

主な成分:キサンタンガム、グァーガム、ローカストビーンガムなど

<特徴>

  • 少量で強いトロミがつき、透明性が高く、飲み物の見た目を損ないません。
  • 味やにおいの変化が少なく、粘度は時間が経っても持続します。

③ 混合型(でんぷん+ガム)

<特徴>

  • 両方の利点を組み合わせたものです。
  • トロミの安定感があり使いやすいです。
  • 両方の特性を持っている為、食品の種類に対応力があります。

トロミ剤の使用上の注意

  • 液体の種類(水・牛乳・お茶など)によってとろみのつき方が異なる。
  • 牛乳・ジュースなどは分離しやすい→ガム系が安定しやすい。
  • しっかりと混ぜることが重要→成分によって分離するなどトロミが安定しないため。

介護施設で使われる主なミキサーの種類

  1. ハイパワーミキサー(業務用ブレンダー)

【特徴】高回転で硬い食材や繊維質の多い食材もなめらかにペースト状にできます。

【用途】ミキサー食、ペースト食、スープなどの調理に最適です。

  1. 真空ミキサー

【特徴】真空状態で撹拌することで、酸化を抑えて色や風味、栄養価を保てます。

【用途】見た目や風味のよいミキサー食、飲み込みやすさを重視した仕上がりです。

【メリット】泡立ちが少なくなめらかな仕上がりです。

  1. スチームミキサー(加熱機能付き)

【特徴】加熱しながら撹拌でき食材を柔らかくし、そのままペースト状にできます。

【用途】調理の工程が少なくて済むため、大量調理に便利です。

  1. フードプロセッサー・・・介護施設でよく使われている器具

【特徴】みじん切り、刻み食、粗いペースト状など多機能で調整可能で使いやすいです。

【用途】刻み食やムース食の下ごしらえ、ミキサー食にも使っています。

【注意点】完全なミキサー食ほど滑らかにはならない場合もあります。

  1. スティックミキサー(ハンドブレンダー)

【特徴】鍋や容器の中で直接撹拌できます。小回りが利き、収納もしやすいです。

【用途】少量のミキサー食、個別対応が可能です。

【メリット】洗い物が少なく済み、手軽に使えるのが最大のメリットです。

ハイパワーミキサー

フードプロセッサー

スティックミキサー

きざみ食やミキサー食にするメリット

  1. 咀嚼(そしゃく)しやすくなる

・歯が弱い人や入れ歯を使用している人でも食べやすくなります。

・固い食材も、刻んだりミキサーをかけるたりすることで噛む力が弱くても召し上がれます。

  1. 嚥下(えんげ)しやすくなる

・飲み込みやすい大きさや形状にすることで、誤嚥(ごえん)のリスクが減ります。

・のどに詰まりにくく、安全に食事ができます。

  1. 食事の自立支援

・自分で食べられる範囲が広がるため、食事介助が少なくなる傾向があります。

・「自分で食べられる」という喜びや尊厳を保つ手助けにもなります。

  1. 食事量の維持・改善

・食べやすくなることで、食欲が落ちている方でも食欲が回復し摂取量が増え結果として栄養状態の改善にもつながります。

  1. 料理の多様性が保てる

・普通の食事を刻んだりミキサーにかけたりするだけなので、見た目や味をある程度保ちやすくなります。

食形態の選定基準

食形態は以下のような要素を参考にして決めています。

・咀嚼機能(歯の有無・義歯の使用も含めた評価)

歯の本数により噛む力も変ってきます。また義歯がしっかりあっているかも咀嚼に関係があります。また歯がない方でも噛む力が強く、歯茎で噛んで咀嚼できる方がおられます。

・嚥下機能(飲み込みの反射や誤嚥リスクを含めた評価)

形あるものの方が飲み込みやすい方もおられますが、水分が多いと飲み込みが出来なくなったり、飲み込むのに時間がかかったりと誤嚥のリスクが高い方もおられます。

・体力・認知症の有無

食べるにも体力が必要です。食事中、手が止まってしまうのも食べているうち食べたり、噛んだりしている間につかれてしまう方もおられます。また認知症の進行が見られる場合、「食べる」自体の行動を忘れてしまい噛んで飲み込むことが困難になる方もおられます。

・医師など医療従事者による評価

上記に挙げた機能などを総合的に考慮し、医師の医療的判断も含め食形態の評価を行い選定するようにしています。

食形態を変更する際の注意点

●医師などの医療従事者との連携

独断で変更せず、専門職の評価をもとに決定すること。
嚥下機能検査(VFやVEなど)※を参考にする。)

嚥下機能検査とは※

主な嚥下機能検査の種類

①スクリーニング検査(簡易評価)

♦水飲みテスト(反復唾液嚥下テスト、改訂水飲みテストなど)

水を少量飲んでもらい、むせや声の変化を観察します。
ベッドサイドで簡単にできる検査です。

♦フォーセットテスト(嚥下音聴診)

のどの音を聴診器で聞きながら嚥下のタイミングを確認します。

♦EAT-10(アンケート形式)

本人や家族に質問してスクリーニングを行います。

②精密検査(画像検査)

♦VF(嚥下造影検査)=ビデオ透視検査

バリウム入りの飲食物を摂取してもらいながら、X線で嚥下の様子を撮影して、誤嚥の有無、どのタイミングで詰まるかなどが詳細にわかります。

放射線室で実施、医師・ST(言語聴覚士)が評価します。

♦VE(嚥下内視鏡検査)=ファイバースコープ検査

細い内視鏡(ファイバースコープ)を鼻から挿入し、喉頭・咽頭を直接観察します。着色ゼリーなどを使って、誤嚥や残留の有無を確認します。

外来やベッドサイドでも可能で、比較的簡便な検査です。

検査に当たるのは、言語聴覚士(ST):嚥下評価・訓練の専門職、医師(主に耳鼻科・リハビリ科)で検査結果から評価を行います。
また、看護師や栄養士とも連携しながら食事管理を行います。

検査を受けるタイミング

  • 誤嚥があれば、食事形態の変更(ミキサー食、ゼリー食など)
  • 嚥下リハビリ:アイスマッサージ、発声練習、嚥下体操
  • 食事姿勢や飲み込みのタイミング指導

検査結果にもとづく対応

  • 食事中にむせる、食べ物が残る、飲み込みにくい事が増えたとき
  • 声がガラガラする、食後に咳が出るとき
  • 体重が急に減った などの症状があるとき
    などです。

本人の様子を観察する

食事中にむせる、食後に痰が増える、食べるのに時間がかかるなどのサインに注意しながら、食欲の変化や体重減少の推移などの数値も合わせ経過観察します。

段階的な変更

いきなり形態を下げたり上げたりせず、少しずつ試します。

例)常食 ➡ 一口大 ➡ きざみ食

常食 → 一口大 → きざみ食といったように段階を追って変更を行います。

味・見た目・温度に配慮

食事の見た目や味が損なわれると食欲が低下しがちです。
盛り付け工夫や風味を損なわないようにするため、とろみなどにだしの活用などの工夫も必要です。

適温を守ることで飲み込みやすくなる

お茶やみそ汁などの水分のトロミ調整も行います。

飲み物も同様に嚥下能力に応じた「とろみ」の調整が必要なことが多いです。

高齢者の方は、年齢とともに食欲や栄養の吸収力が低下していく傾向があります。

私ども日本アメニティライフ協会では、こうした変化に対応し、咀嚼力が低下した方や誤嚥リスクの高い利用者様にも、安心して栄養をしっかり摂取していただけるよう、健康的で安全なお食事の提供に努めております。

この記事の執筆者

介護福祉士
青木 いづみ

母親の認知症をきっかけに、サービス業から介護の道へ転身。サービス業で培ったコミュニケーション力と、介護職員や施設長としての知識や経験を活かし、入居相談員として家族が抱える悩みに寄り添っています。介護現場の視点、利用者目線、専門知識を基にした丁寧な相談を行っています。