排泄介助
排泄行為は人間だけでなくすべての生き物に必要不可欠な生理現象です。

特に感情がある私たち人間は出来る限り、年齢を重ねても病気になって自由に動けなくなったとしても、自分で済ませたいと思うものです。
排泄はデリケートに扱う介助です
もしも、自分が、排泄をする際に他人に介助をしてもらうことをイメージしてみてください。きっと、排泄をしたいと思っていても、人前でそれを指摘されると恥ずかしい気持ちになってしまうのではないかと思います。
常に自分だったらどうかを考え、排泄介助においても介護をされる側の方の立場に立って、尊厳を守った介護を行う必要があります。

たとえば、声掛けひとつにも配慮が必要です。なるべくご自身でトイレに行き、排泄が出来る方であっても、トイレにそっと行かれる方も多いのも、羞恥心やプライドが働いているからであると考えられます。それほど、排泄はデリケートに扱う介助です。
信頼関係が特に重要
介護する側とされる側の信頼関係が特に重要になります。
意識すべきなのは、信頼関係が構築されているからこそ、速やかに介助を行うように配慮をすることです。
排泄の失敗はその方のプライドも傷ついてしまうものですので、排泄に誘導する際も、介助している間にも、介助が終わっても配慮が必要です。
特に失禁し、トイレに間に合わなくなってしまうようになった高齢者は、「失禁を人に知られたくない」「オムツをするのはつらい」「自分で処理したい」と感じることが多いです。

そうした高齢者の本音は「介護の拒否」「オムツを外して隠す」「介護者に対する暴言」などの行動となって表われることが度々あります。
体調や身体状況のバロメーターにもなります
介護の仕事の中で特に重要な介助の一つとも言われる「排泄介助」では排泄のお手伝いをするだけではなく、 皮膚や排泄物の状態を確認することも大きな役割の一つです。
その方の体調を把握するためのボディチェックは、高齢者の身体の変化を知るうえでとても重要です。更に、排泄の状態は体調や身体状況のバロメーターにもなります。
排泄の間隔やタイミングはそれぞれ違いますが、定時の排便確認は重要です。中には排便をしたこと自体を口にしたくない方もおられ、気が付けば数日確認が取れないこともあります。
その場合は、食欲が落ちていないか、体調の変化はないかなどを確認し、必要であれば医師や看護師などにお腹の張りや、胃腸の状態を確認してもらいます。
高齢者の場合は内臓機能の低下もあり病気に直結してしまう場合もあります。

その他、陰部や臀部などが清潔に保たれずにいると、健康に悪影響を及ぼすこともあります。
排泄介助を行う際の注意点

- 自尊心を傷つけない
排泄介助を行うときは、周りに配慮をし、声のトーンなどに気を付けお声掛けなどを行います。 - 手を出しすぎず、できるだけ本人にお任せし、できない部分だけを支援
他人にはなるべく見られたくないなどの羞恥心も配慮した上で、残存機能をお使いいただき、ご自身の自信とQOLの向上にもつなげます。 - プライバシーに配慮し、排泄が終わるまで待機する
トイレ誘導後、安全にトイレに座っていただいた後は、扉などはなるべく閉め利用者様のプライバシーを配慮し見守ります。 - 排泄後の様子に気を配る
排泄後、排泄の様子を観察します。時々恥ずかしさから排泄物を流してしまう方もおられたり、排泄を失敗してしまったりする方もいらっしゃるため、声掛けなども配慮します。 - 水分を控えさせない工夫
「トイレに行きたくなるから…」と水分を摂りたがらない利用者様もおられます。高齢者になられると喉の渇きを感じにくくなるため、水分を摂らないことで脱水症などを引き起こす可能性があります。失敗が怖いなどのネガティブイメージを持たないよう工夫をして、トイレ誘導の実施を試みます。 - 定期的にトイレまで誘導する
おひとりおひとりの排泄の間隔は異なります。その間隔を把握し、なるべく失敗がないようにトイレ誘導の計画を立てます。失敗がないことで保清が保たれ、利用者様の自信にも繋がります。 - においなどへの配慮
排泄物のにおいは意外と気になるものです。失敗があった場合はご自身もそのにおいに敏感になります。速やかに処理をしたうえで清潔な状態に戻します。また、汚物で汚れてしまった衣類なども早めに汚れを起こし、浸けたり、洗濯などを行ったり、消臭効果のある洗剤等を使用したりします。特に居室にてポータブルトイレなどを使用している場合は、排泄物がある場合には速やかに処理をするよう心がけます。



高齢者の状態 排泄介助の方法
高齢者の状態別の排泄介助方法は、概ね次のように分けられます。
一人で歩ける | トイレ(一部介助)紙パンツ等 ほとんどの方はトイレ介助可能 |
介助があれば歩ける | トイレ(一部介助) |
介助があれば立てる | トイレ(介助) |
介助があれば座れる | トイレ(介助)、ポータブルトイレ |
寝て過ごす時間が長い | トイレ(介助)、ポータブルトイレ |
寝がえりがうてない (夜間) |
ベッド上でオムツ交換 テープ式紙おむつ |
下肢の拘縮や麻痺が強い(夜間) | ベッド上でオムツ交換 |
上記の通り、「座る」力が残っている限り、トイレの便座に座って自分で排泄することが可能です。
高齢者に対するケアは、自立から一部介助へ、一部介助から全介助へとケアの内容は繊細に変化していきます。ケアの目標として、少しでも自立へ近づく方向に支援を心掛けております。

安全な歩行をするため注意する点
ベッドで寝たままの状態でオムツ交換をしていても、車イスに移乗ができれば、トイレへ行き排泄ができます。

高齢者と介護者が共同し、自立へ向けた排泄に挑戦していく前向きな姿勢と努力が高齢者の尊厳を守るうえでとても重要になります。常に利用者様の状況を把握した上で適正な介護の実施を行っております。
心理的な感情に配慮した介助の心掛け
高齢者の排泄介助では、「羞恥心」に配慮・意識することがとても重要です。羞恥心は自分が恥ずかしいと感じる状況や行為に対して生じる心理的な感情です。
これは、自尊心や他者からの評価に関連しており、自己の行動や外見、失敗が社会的規範や期待から外れていると感じるときに現れます。

羞恥心は人間関係や社会生活において重要な役割を果たし、行動の適切さを保つための一種の内面的なコントロール機能ともいえます。
必要な範囲で適切な介助を提供
私ども日本アメニティライフ協会の施設では、将来自分が介護される側になったときや身近な人が介護を受ける側になった時の事をイメージして解除するように心がけております。排泄に関する支援では、利用者自身が「自力で済ませたい」という気持ちを大切にしています。
排泄は食事と同様に日々の大切な習慣であり、恥ずかしい思いをさせたり、急かしたりすることはありません。
利用者の残存能力をしっかりと見極め、本当に必要な範囲で適切な介助を提供しています。
この記事は介護福祉士に監修されています

介護福祉士
青木 いづみ
母親の認知症をきっかけに、サービス業から介護の道へ転身。サービス業で培ったコミュニケーション力と、介護職員や施設長としての知識や経験を活かし、入居相談員として家族が抱える悩みに寄り添っています。介護現場の視点、利用者目線、専門知識を基にした丁寧な相談を行っています。