【お役立ち情報】食事量・水分量のチェック

食事量・水分量のチェック

食事や水分の摂取は人間が生きていく上でのエネルギー源でもあり、命の源です。

食欲等が旺盛であれば問題はあまりないのですが、食欲量や水分量が低下する原因の陰に体調不良や病気が隠れている場合があり、食欲や水分摂取の量は、健康のバロメーターとしての指標の一つとなります。

日本アメニティライフ協会では、一日の食事量および水分量のチェックを行い、介護記録等に記録を残しております。

食事であれば、毎食の食事量を、水分摂取量は一日のトータルを一目でわかるように介護記録に使用している記録用紙にも工夫をしております。

では、高齢者の方の食事量や水分量の目安でどのくらい摂取すればよいのでしょうか?

高齢者の食事量の目安

私ども日本アメニティライフ協会の施設では一日三食の摂取カロリーは約1500キロカロリー前後を目安にご提供しております。

美味しく、そして健康を維持し、しっかりと摂取出来るよう、常食、刻み食、ミキサー食など、利用者様にあった食形態をご用意しております。また、安全にお食事いただける工夫をしております。

食事量を一度に多く摂取出来ない方や、体重の減少が著しく見られ栄養の吸収状態が思わしくない方には、栄養補助として※高カロリー栄養補助食品(高カロリーゼリーやペースト)や病院から処方された※高カロリー経管栄養食品などで補填します。

※高カロリー栄養補助食品とは、栄養状態の改善が必要な場合や、エネルギー摂取量が不足している場合に利用される食品を指します。これらは、通常の食事で不足しがちなカロリーや栄養素を効率的に補うために設計されています。
※高カロリー経管栄養食品とは経管栄養法(チューブを用いて栄養を体内に直接届ける方法)で利用される、カロリー密度が高く、バランスの取れた栄養を効率的に補給できる食品です。

高齢者の一日に必要な水分摂取量の目安

高齢者の一日の水分摂取量の目安の計算式がありますので、これが参考指標となります。

◆体重50キログラムの方の場合の一日の水分目安量

体重 1kg当り30mlで計算をします。

50kg×30ml=1500 ⇨ 水分目安量は1500ml となります。

計算では1500mlと出ましたが、これは身体から見た目でわかる排出量であり目に見えない「皮膚・呼吸からの蒸発分」があるため、計算上+この蒸発分を加えると、約2ℓ+αが目安として推奨されています。

高齢者の方は暑さや喉の渇きを感じ辛くなるため2ℓのペットボトルを一日で飲み切る事を考えると、1日に必要な水分量がとても多いと感じる方もいるかもしれません。

ですが、水分量の目安と実際の飲水量は異なります。
その違いは食事から得られる水分が入っているかどうかです。食事にも水分量が含まれており、約1ℓの水分量が一日分の食事から摂取されるといわれております。

高齢者の方がなかなか水分摂取しにくい理由

  • 高齢になると、筋力が低下して体液を多く蓄える筋肉の量が減り、体内の水分量が少なくなります。また、代謝機能も低下するため体内に蓄えられる水分の量が減ります。
  • 高齢になると喉の渇きを感じにくくなり、自分から水分を摂ることが少なくなる傾向があります。
  • トイレが近くなるのを心配して自ら水分を控えたり、水を飲んだときにむせるのが怖くて飲まなくなったりすることもあります。
  • 利尿作用のある薬を服用している場合は、尿によって水分が失われやすくなっています。

水分摂取が不足した結果、一番怖いのは、「脱水症」と「熱中症」です。いずれも、症状が悪化すると、命にも関わります。熱中症は夏の時期に特に注目され、脱水症は、様々な病気の原因となります。

脱水症は腎臓の機能の低下にも影響するため、不要な老廃物を体外に出すために、若い頃より多くの尿量が必要となり、体に多くの水分が必要になります。

そのため、水分不足にならないために、工夫をする必要があります。

水分不足を予防する工夫と注意点

■水分不足を予防する工夫

  1. 適正なカップを使用する
  2. 飲む量や回数を工夫する
  3. 苦手な味は、味を変えて飲む
  4. おやつやデザートなどで工夫
  5. とろみ剤を使い飲み込みやすくする

1、飲み物のカップなどの適正を確認する必要があります。

重すぎるものを使用しないようにしましょう。特にご病気で手に力が入らない方などは、軽めのものや持ちやすく、口に運びやすいものを選びましょう。場合によっては、ストローなどを活用することで水分摂取量が増える可能性もあります。

2、一度に飲む量を減らし、飲む回数を増やすようにします。

お茶などの苦みが苦手な方などは、ご本人の嗜好に合わせ、味に変えるなどするのも一つです。例えば、牛乳に少量の砂糖を入れてみる、乳酸菌飲料やジュースなどをご提供するなども工夫の一つです。

3、おやつやデザートなどで水分を補えるものを取り入れる。

例えば、ゼリーやフルーツポンチ、アイスクリームなど水分を多く含むおやつを取り入れるなど工夫します。

4、 ※嚥下状態が悪くむせ込みのある方には、※とろみ剤を使い、水分にとろみを付け、飲み込みやすくします。また、ゼリー飲料を利用したり、水分をゼラチンで固めて固形にして食べたりできるように提供することもあります。

固める際にゼラチンを使うのは、ゼラチンの特性にあります。ゼラチンは体に入り、熱が加わると水分に戻る特性があります。寒天は、溶けにくく、のどに詰まらせてしまう可能性がある為、水分を固める時には、ゼラチンを使う方が適しています。

※嚥下とは、口から摂取した食べ物や飲み物を、喉を通じて食道に送り、胃へと運ぶ一連の動作を指します。

※とろみ剤とは、液体食品や飲料に混ぜて粘性を高めるための食品添加物です。嚥下障害がある方が飲食物を誤嚥せずに安全に飲み込めるようサポートするために使用されます。とろみをつけることで、液体が気管に流れ込みにくくなり、誤嚥性肺炎を予防します。

■水分不足を予防する注意点

  1. スポーツドリンク、緑茶、コーヒー、紅茶の飲みすぎ注意
  2. 経口補水液などを取り入れる
  3. 胃や腎臓に負担をかけないよう、常温もしくは人肌の温かさで飲む
  4. 水分制限のある方は、医師の指示のもと、決められた水分量を摂取する

1、熱中症の予防などでスポーツドリンクなどを取り入れている施設もあるかと思いますが、スポーツドリンクには、想像以上に糖分と塩分が含まれていますので、飲みすぎに注意する必要があります。代替として、経口補水液などを取り入れるとよいとも言われております。

2、緑茶、コーヒー、紅茶などはカフェインが多く含まれる飲み物も飲みすぎに注意が必要です。

もちろん、緑茶やコーヒーにポリフェノールが含まれ健康になる成分も多く含まれますが、カフェインは、利尿効果があり、摂取した以上の水分が排泄により体外に出てしまうため、水分不足を助長してしまう可能性があります。

3、そのため、飲みすぎには注意し、カフェインの少ない飲み物を取り入れる工夫も必要です。麦茶はノンカフェインですし、お茶でも番茶、玄米茶は緑茶成分が少ないため低カフェインです。特に寝る前などには工夫をするとよいです。

4、飲み物の温度の理想は、常温もしくは人肌の温かさです。特に氷を入れた冷たい飲み物は血行が悪くなったり、胃や腎臓に負担をかけたりすることがあります。気分転換などに冷たい飲み物を飲むことはよいと思いますが、温度も冷たすぎず、熱すぎずを心がけるのがポイントです。

また、疾患により水分制限などがある利用者様もかかりつけ医など医師の指示のもと、決められた水分量を摂取していただき、記録に残しています。

※日本アメニティライフ協会の施設では24時間対応の在宅療養支援診療所と提携をしております。

※経口補水液(Oral Rehydration Solution, ORS)とは、体内の水分や電解質(ナトリウム、カリウムなど)のバランスを補正するための飲料です。

この記事は介護福祉士に監修されています

母親の認知症をきっかけに、サービス業から介護の道へ転身。サービス業で培ったコミュニケーション力と、介護職員や施設長としての知識や経験を活かし、入居相談員として家族が抱える悩みに寄り添っています。介護現場の視点、利用者目線、専門知識を基にした丁寧な相談を行っています。

介護福祉士
青木 いづみ