「食の楽しみ」~料理の仕上がりを左右する砂糖~

「食の楽しみ」~塩で料理は変わる~

 私達にとって、塩と並んでなくてはならない調味料が「砂糖」で、和洋中すべての料理に関わる基本調味料でもあります。砂糖=甘味というイメージが強いのですが、実は料理の中では多様な役割を担っています。ですから砂糖を上手く利用すると、料理がグンと美味しくなります。また同じ料理でも砂糖の種類を変えることで、料理の仕上がり感が変わります。さらに砂糖の代用として用いることができる調味料もあります。たかが砂糖、されど砂糖ということで、意外に奥深い砂糖の世界のお話をしていきます。

砂糖の分類

  砂糖は多種多様でそれぞれ特徴があります。原料の違い、精製度の違い、風味があるかないか、加熱料理向きか非加熱料理向きかどうかという物差しで分けると特徴がわかりやすくなります。

原料による分類

 砂糖の原料による分類の仕方です。

★ サトウキビ由来の砂糖
熱帯・亜熱帯地域が主な産地で、国内では沖縄県や鹿児島県の諸島部、世界的にはブラジルが最大生産国。特徴としてコク・ミネラル感が強い、香りが残るタイプが多い。
★てん菜(ビート)由来の砂糖
寒冷地での栽培が適しているので、国内の主な産地は北海道、世界的には欧州や北米の寒冷地帯に集中している。グラニュー糖や上白糖の多くはビート由来の砂糖。
クセが少ない、すっきりとした甘さが特徴。

柚子の砂糖漬け

精製度の違いによる分類

 どこまで蜜分を取り除いたかという精製度の違いで分けることもできます。精製度が高いものは癖が少なく扱いやすい、精製度が低いものは風味があり色、ミネラルが残る傾向があります。

精製度がとても高い

★ グラニュー糖
最も精製度が高い砂糖、クセや香りがない。
製菓・飲料・シロップに向く。
★ ザラメ類
粒の大きい砂糖の総称で、粒が大きく色がついていて精製度が低い。
★ 氷砂糖
通常よりも濃い糖液の不純物を取り除いて、時間をかけて結晶化させたもの。
雑味がなくすっきりとした甘さで甘味の立ち上がり方が穏やかなので少しずつ甘くなる。果実酒などに用いる。

精製度が高く加工している

★ 上白糖
グラニュー糖に転化糖を噴霧したもので、シットリしていてコクもある。甘味が強く感じる。純度が高い結晶が集まると光で白く見える。上白糖は漂白されているという話は誤解(フェイク情報)。
★ 三温糖
白砂糖を作った後の糖液を再加熱したもの。加熱によるカラメル香がある。色が茶色っぽくコクがある。

精製度が中~低程度

★ キビ砂糖
精製途中の段階のもの 密分が残っていてミネラル感とコクがある。
★ 黒糖
ほぼ未精製の砂糖、サトウキビの搾り汁を煮詰めたもので、ミネラルが豊富で、味も香りも個性的。

特殊製法

★ 和三盆
香川県や徳島県江戸時代から続く伝統製法で作られたもの。竹糖というその地域独特のサトウキビから作られる。
高純度だが、少し独特な風味がある。高級な和菓子などに用いられる。

黒糖、三温糖、上白糖、グラニュー糖

風味の違いによる分類

ニュートラルな(クセがない)砂糖

  • グラニュー糖
  • 上白糖
  • 中ザラメ
  • ザラメ

風味を持つ砂糖

  • 黒糖
  • きび砂糖
  • 三温糖
  • 和三盆

加熱向きの砂糖・非加熱料理向きの砂糖

加熱向きの砂糖

 加熱調理で、コク、照り、香ばしさがある料理に仕上げたい時には、コクや風味が強い砂糖、結晶が加熱することによってキャラメル化しやすいものが適しています。例えば、煮物や魚の煮つけ、佃煮など濃いめでしっかりとした風味の料理に適するのは、三温糖や中ザラメ糖、黒糖です。また、きび砂糖やてんさい糖はそれほど強い甘味はありませんが、素朴でまろやかな風味を出したい煮物や焼き菓子(クッキーなど)に向きます。

非加熱の料理や冷たい料理向きの砂糖

 ドレッシング、酢の物、冷たいデザート、飲み物などでは、砂糖は純粋に甘味と口当たりを与える役目を果たします。液体に溶けることで味をやわらげ、酸味や苦味の角をとり、全体をまろやかにします。冷たい料理に適する砂糖は、冷水にも早く溶け、すっきりとした甘みで料理や飲料の味を邪魔しない、色がついていない砂糖が向いています。例えば、グラニュー糖、上白糖、和三盆のほか、グラニュー糖を加工して顆粒状にしたフロストシュガーなどがあります。

柑橘ゼリー

 砂糖にはそれぞれ特徴がありますので、どの砂糖が良いかどうかと単純に判断するのではなく、どのような用途で使うのか、どのような仕上がりにしたいのかということで選ぶと、素材を引き立ててくれたり、料理の完成度が上がります。

砂糖は入れるタイミングで働きが変わる

 砂糖は甘味をつけるだけでなく、料理の様々な場面で異なる働きをする調味料です。水分を保つ、色をつける、照りを出す、味をまとめるなど役割は多岐にわたります。砂糖は甘味をつけるだけでなく、「どのタイミングで使うか」によって砂糖の効果が変わるのです。

調理前の下処理(下ごしらえ)で使う

 主に下ごしらえの段階で使うのは、素材の状態を整えるためです。例えば、肉や魚に少量の砂糖をまぶしておくと、水分が保たれやすくなり、加熱しても固くなりにくくなります。また、果物に砂糖をかけると水分が引き出されてシロップが生まれますが、これは砂糖が水を動かす力を持つためです。マリネ、下味漬けなどで使う砂糖は、甘味をつけるというより、素材の水分や食感を調整する役割を担っています。

加熱前~加熱中に加える

 この段階で砂糖を加えるのは、味を浸透させたり加熱による変化を効果的にするためです。和食の【さしすせそ】の順番では砂糖が最初に入りますね。なぜなら、砂糖は分子が大きく、塩などに比べて素材の内部に入りにくい性質があるからです。さらに砂糖には保水性があるので、食品の内部に入り込み水分を保持して柔らかく仕上げる役目もします。逆に塩分系の調味料は素材を固くする性質がありますので、先に入れないようにするのです。また、砂糖は煮崩れを防いだり、味に厚みを出したりする効果もあります。

 照り焼き、かば焼き、味噌漬け焼きなどタレを漬けて焼いたり、焼き団子のように甘いタレを絡めるものは、加熱が進むと砂糖の効果で、カラメル化やメイラード反応が起こり、焼き色や香ばしさが生まれます。

 砂糖といっても、種類によって溶けやすさやクセのなさ、加熱向きか非加熱向きか、さらに浸透するスピードも異なります。ですから、砂糖を加える役割とそれにあった砂糖を選ぶことがおいしさに繋がるわけです。

 ただ一般家庭や調理現場で多種の砂糖を用意するのは現実的に難しいので、癖のない純度の高めの砂糖と、ちょっと個性のある砂糖の二種を用意するのをお勧めします。二種を使い分けたり、混ぜて使うと料理の仕上がり感を変えやすくなります。

一石二鳥・三鳥の調味料

 これまで説明してきたように、砂糖は調理において様々な役割をしてくれますが、その役割は一つだけではなく、同時に複数の働きをすることがほとんどです。

 例えば、照り焼きなどの肉や魚の下処理(下味)の砂糖は、保水性を高めてジューシーにする、タンパク質に作用して身が固くなりにくくする、下味が入りやすくするなど、主に食感を整える役割を複数しています。

 肉じゃがなどの煮物に砂糖を加えると、煮崩れを防ぐ、保水性を保つ、味を浸み込ませやすくする、照りの土台を作る、保存性をわずかに高めるなど複数の効果があります。

 酢豚や南蛮漬けなど酢を使った料理は、砂糖を加えることで、酸味を和らげ、味の角をとり、とろみを安定させるなど全体の味をまとめるバランス調整役をします。

 卵焼きやカスタードプリンなどの卵料理は、砂糖を加えると凝固が緩やかになるのでなめらかになったり、水分を保持するのでしっとりと仕上がるなど、甘さだけでなく食感の改善にも役立っているのです。

 たったひとつの調味料でいろいろな働きをしてくれる砂糖は、一石二鳥以上の調味料で基本調味料としてなくてはならない存在なのです。

洋梨の梅酒コンポート

砂糖の代替甘味料

 砂糖の代わりの甘味料として様々なものが入手できます。ここでは代表的なものを取り上げます。それぞれ原料や甘さの質、特徴が異なりますので用途に合わせて使うと便利です。

はちみつ

 砂糖より甘味が強く、コクと香りがある。保湿性も高くしっとりと仕上がる。また焼き色がつきやすい。

*注意点:加熱で風味が飛びやすく、入れすぎると焦げやすい、一歳未満の乳児は使用不可。(ボツリヌス菌の可能性)

メープルシロップ

 独特のやさしい香りと風味。液体なので溶けやすい。ミネラル分を含む。

*注意点:水分が多いので料理がゆるくなりやすい、加熱で香りが弱くなる、色が淡いので焼き色はつきにくい。

オリゴ糖

 砂糖より甘さが穏やかで腸内細菌の栄養源になりやすい。液体タイプが多い。

*注意点:甘味が弱いため量を入れがち。加熱料理では存在感が出にくい。体質によっては摂りすぎるとお腹がゆるくなる。

低カロリー甘味料(人工・天然由来)

 低カロリー甘味料にはアスパルテーム、スクラロース、ステビア等がある。少量で強い甘味があり、カロリーがほぼないか非常に低い。血糖値の影響が小さい。

*注意点:砂糖のようなコク・照り・保水性は出ない。種類によっては加熱に不向き。後味に独特な苦味や清涼感がでることがある。

 糖質ゼロの清涼飲料水や酎ハイやビールなどは、砂糖、果糖、ブドウ糖などの糖質を含まないので「糖質ゼロ」と表示している。実際に甘さを出すために糖質に含まれない人口甘味料を主に使用している。飲みやすさから摂取量が増えることがあるので注意が必要。

砂糖は料理を整え、心を和らげる力がある

 砂糖は甘味を加えるだけでなく、食材の持ち味を引き出し、質感を整え、香りや色合いに深みを与えることで、料理全体の印象を穏やかにまとめたり、支える働きを持っています。
砂糖はたった一つでいろいろな役割ができるすごい調味料なのです。

 私達が甘味を感じると、脳内でごほうび系と呼ばれる回路が活性化して、「嬉しい」「ほっとする」と感じて、やさしさや満足感をもたらしてくれます。甘味は食べる人の心をやわらかく、ほどいてくれるものなのです。だからこそ、その性質を理解し、目的に応じて上手に使い分けたり効果的に使うことが、日々の食をより楽しく豊かにしてくれるのではないでしょうか。

この記事の執筆者

有限会社コートヤード
代表取締役
新田美砂子

農産物プロデューサー・フードデザイナー
MBA(経営管理修士)、NPO法人野菜と文化のフォーラム理事

「今ある資源を活かす」「もったいないをなくす」「健康的に食べる」をモットーにして、様々な形で農と食を繋いでいる。商品・メニュー開発、地域食材・農産物のマーケティング、地域活性化などを多数手がけてきた。
日本野菜ソムリエ協会講師、城西国際大学では食の知識と体験学習を織り交ぜた「環境と食文化」の講義を5年間担当。近年は様々な現場に携わってきた経験を活かし、食や農に対する「なぜ?」をわかりやすくフラットに伝えている。